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古の大占い師 7

「おばあちゃん、お待たせしました」

「座りんしゃい」

 メルメルが席に座った。トンフィーは少し後ろを今にも逃げ出しそうな顔をして立っている。

「さて……。それではさっそく占ってしんぜよう……ふむ……なるほど……ふむふむ………………」

「……………………………………」

 ホラッタばあさんは目を瞑り、かなり長いこと瞑想している。メルメルは黙って待ちながら、ゆらゆら揺れるろうそくの明かりに何だか眠くなってきてしまっていた。

「………ぐ~」

「おばあちゃん?」

 メルメルが覗きこむと、ホラッタばあさんはハッとして目を開いた。

「…………うむ。見えたぞよ!」

(……絶対寝てたわ)

 メルメルは再び疑いの眼差しを向けた。しかし、ホラッタばあさんはそれにはまったく気付かず、再び目を瞑った。今度はゆっくりと体が横に揺れている。

「見える……見えるぞ……おぬしの未来が……」

 まるで、何かにとり憑かれた様な声だ。その姿がとても不気味で、トンフィーは青くなってドア付近まで後退りしていた。後ろ手でドアノブを探る。

「……七色に輝いておる……これは……そうか……おぬしは……おぬしは……」

 突然、カッと目を開いたホラッタばあさんは立ち上がり、天井に向かって両手を掲げた。


「七色の勇者なのじゃーーー!」


 メルメルもトンフィーもビックリして、思わずその場で固まってしまった。


「…………へ?」


 トンフィーが間抜けな声を出す。次の瞬間、ホラッタばあさんはドサッと椅子に座り、テーブルに突っ伏してしまった。

「お、おばあちゃん大丈夫?」

「うーん……少し疲れたわい……」

 メルメルが振り返り、トンフィーと目が合う。トンフィーは目をまん丸にしてメルメルを見ている。

「で、七色の勇者……? メルメルが……」

 メルメルは慌ててホラッタばあさんの肩を揺する。

「ね、ねえおばあちゃん、七色の勇者って……。あの古の大予言の? 闇を撃ち滅ぼす?」

「……そうじゃ」

「す、凄い!」トンフィーは耳を真っ赤にして叫んだ。「メルメルが……メルメルが予言の勇者! 凄い凄い!」

 トンフィーはすっかり興奮して、「凄い凄い」と連発しているが、メルメルには今一ピンと来なかった。

(予言の勇者? ワタシが?)

 ホラッタばあさんは相変わらずぐったり突っ伏している。

「ね、おばあちゃん大丈夫?」

「……はぁ。ちと力を使い過ぎたわい……フレンリーを呼んでくれ……」

「ぼ、僕呼んでくるよ!」

 カの鳴くような声を出すホラッタばあさんに、トンフィーは慌てて部屋を飛び出した。

「やっと……やっと現れおった……待ち望んだ伝説の勇者が……」

「…………」

「お婆さま~大丈夫~?」緊張感のない声を出しながら、フレンリーがやってきた。ホラッタばあさんの肩に手をかける。「あらあら~。お婆さまったら~張り切り過ぎよ~」

 フレンリーがドアに向けて指を振ると、「わっ!」と遠くからグッターハイムの悲鳴が聞こえて、ドアの向こうから布団がフワフワ飛んできた。フレンリーが再び指を振ると、布団はホラッタばあさんを包み込んでフワフワと浮かび上がった。

「おい! 布団が逃げたぞ……。――お? ばあさんどうしたんだ?」

 グッターハイムが慌てて部屋に駆け込んで来た。す巻きのホラッタばあさんを見て目を丸くしている。メルメルはフレンリーの袖を引いた。

「ね、フレンリー。おばあちゃん大丈夫?」

「大丈夫よ~。少し休んだら良くなるわ~。一度に~占いをし過ぎただけよ~」

 そのまま、フワフワと飛んでいくホラッタばあさんについて部屋を出て行ってしまった。

「……よぼよぼだからな。ま、大丈夫だろ。……くわ~! いきなり布団が逃げてくからびびったぜ」

 グッターハイムは大欠伸をしながら戻って行った。どうやら、寝ていたら掛けていた布団が飛んで行ってしまって驚いたらしい。部屋にはメルメルとトンフィーだけが残った。トンフィーはキラキラした目でメルメルを見つめる。

「メルメル……さっきの占い……」

「……うーん。明日の朝、おばあちゃんが元気になったらもう一度聞いてみましょう。何だか信じられないもの……。ワタシが……」

「予言の勇者なんて?」

 トンフィーが言って、メルメルは首を横に振った。

「あのおばあちゃんの言う事だし」

「でも、フレンリーが今日は当たりの日だって……」

「二人ともどうしたの? ご飯出来たよ」

 ニレが部屋を覗きこんで、二人とも小さく飛び上がった。

「あ、はい! 今行くわ!」

 ニレが戻って行くのを確認して、メルメルは小声でトンフィーにささやく。

「とにかく、もう一度確認するまでみんなに話しちゃダメよ……。笑われるのが落ちだもの!」

 トンフィーは首を傾げて考えていたが、やがて、こっくりと頷いた。

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