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ミラークルクルマン 6

 ウンピョウの鋭い爪で背中をえぐられ、よろめくカンガルーもどき。その喉元目掛けて、先に下へ降り立った方のウンピョウが牙をむいた。

「ギェギェギェ!」

 カンガルーもどきは太くて長い尻尾をブンブンと振り回すが、ウンピョウは素早く飛び退いて避けている。喉元に食らいついたままのウンピョウを振り落とそうと、カンガルーもどきは空高くジャンプした。

 パッと飛ぶ直前で素早く離れたウンピョウ。二匹は共にカンガルーもどきの着地と同時に飛び交って、再び喉元と背中に噛みついた。

「ギェー!」

 メルメルと、木の陰からコッソリ顔を出したトンフィーが、勝利を確信して拳を振り上げる。

そしてまさに後一息と言うところで、

 

 ピカー!


 ミミとシバが光り輝いて、思わずメルメルは眩しくて目を瞑った。

「…………」再び目を開けて、メルメルはビックリしてがっかりした。

「ミミ……シバ……。どうしてよ……」

 メルメルの見つめる先には、何故か元の茶トラの猫に戻ってしまったミミとシバが、相変わらず必死でカンガルーもどきにかぶりついていた。

「あれれれ?」トンフィーは慌てて時計を取り出した。「やっぱりまだ三十分経ってないや……」

 カンガルーもどきは勢いよく尻尾を振って、その反動で体をグルッと回した。食らいついていたミミとシバがあっさりとすっ飛んで行った。

「み、ミミ! シバ!」

 ミミはクルリと回って華麗に着地し、シバはクルリクルリと回り過ぎて、少し地面をそのまま転がって着地した。メルメルはホッと一息ついた。

 ――一体何故まともに変身出来ないのか?

(ボルディーの時は上手くいったのに!)

「メルメル! ボルディーに変身するんだ!」

 メルメルの考えを読んだかのようにトンフィーが叫んだ。すると再びミミとシバが後ろ足で立ち上がって、

「ニャーニャーニャーニャー!」

「ミラークルクル! ボルディーにな~れ!」


 ピカー!


 またまた眩い光に包まれ、皆一斉に目を瞑る。そして再び目を開けてみると、そこにはちゃあんと二匹のボルディーが立っていた。

「ガウガウ!」

 すぐさまボルディーはカンガルーもどきに飛び交る。メルメルはそれを横目で見ながら、急いでトンフィーに駆け寄った。

「メルメル!」

「トンフィー! どうして上手く変身出来ないのかしら!」

 トンフィーの隠れている木の陰に飛び込みながらメルメルは叫んだ。トンフィーはアケを抱きしめながらカンガルーもどきと二匹のボルディーを見つめている。

「多分――力不足なんだ」

「力不足?」

 メルメルが言うと、トンフィーは大きく頷いた。

「本当のところは分からないけど、でも、そんな気がするんだ」

 メルメルが戦いの様子に目を向けると、二匹はカンガルーもどきに果敢に挑みかかっていた。しかし長い尻尾を打ち振るわれて、なかなか近づけずにいるようだ。

「ほら、ルーノルノーの時はひどかったろ? まともに変身すら出来なかった。ウンピョウは、変身する事は出来たけど五分程度しか保たなかった。ボルディーにはちゃんと変身出来る。強い順に、変身し損ねてる気がしない?」

 メルメルはクリクリの目をあっちこっちにやって考えてみる。言われてみれば、確かにその通りかも知れない。

「まずいな……」トンフィーが時計を見ながら呟いた。「そろそろ三十経ってしまう」

 メルメルはドキッとした。そしてカンガルーもどきと、ミミとシバの戦いに目を向けた瞬間、


 ピカー!


 眩しさに目を瞑る。

 二人は、ゆっくりと目を開いた。そこには、今度こそ時間切れになって猫に戻ってしまったミミとシバがいた……。

 メルメルもトンフィーも青くなって言葉を失う。

 今までのミミとシバの攻撃で、大分ダメージを受けたとはいえ、カンガルーもどきはまだまだ元気だ。子供二人と猫三匹に敵う相手では無い。

「ど、どうしよう……」

 トンフィーは不安そうに呟く。すると、メルメルはそんなトンフィーの手をギュッと握ってきた。ハッとしてそちらを見ると、メルメルはちっとも諦めなど知らないようなキラキラとした目をして前を向いていた。

「ワタシが引きつけるから、トンフィーは静かに隠れていて!」

 言うなり飛び出してまた石ツブテをカンガルーもどきに投げつける。カンガルーもどきはクルリと振り返り、そのヤモリのような顔をメルメルに向けた。

「来なさい!」

 もう一度石ツブテを投げつけ、同時に走り出す。カンガルーもどきはまんまと挑発に乗ってメルメルを追いかけ始めた。

「引きつけるって……。まさか十五分逃げ続けるつもりかな……?」

 トンフィーはアケを抱きしめてしゃがみ込んだ。メルメルを追いかけて援護する、などという事は試すまでもなく不可能だろう。トンフィーはきつく目を瞑った。

 ――祈る以外に自分に出来る事はないのだろうか……。

 遠のいていく足音が聞こえる。

(――メルメル!)

 トンフィーはキュッと口を引き結んで、パッチと目を開いた。

(何か、何か出来るはずだ。――考えなきゃ)

 バサバサバサ!

 ハッとして空を見上げる。またフクロウか何かだろう。しかし今度はトンフィーは怯えなかった。

(そうだ。一か八か……)

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