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ミミとシバ 1

 ずっと前からミミは、シバよりも自分の方がお兄さんだと思っている。だってシバよりも牙がちょっとだけ長いし、足もちょっとだけ速い。

 それとおんなじくらい前からシバは、ミミよりも自分の方がお兄さんだと思っている。だってミミよりもちょっとだけ大きいし、ちょっとだけ力もある。

 それでも二匹はとても仲がよくて、ミミの自慢の大きな耳が汚れていればシバはペ~ロペロリと舐めてあげるし、シバの目がいつもよりたくさんしばしばしていたら、ミミは心配顔で眺めている。


 ある晴れた日曜日、平和な田舎町の片隅。のんびりやのワーチャが続けて欠伸を十回もするのを横目で見ながら、二匹はいつものように仲良く連れ立って歩いていた。

 シバは、大好きなプラムじいさんが作ってくれるササミとレバーをくたくたに煮たのをモヤモヤと考えながら歩いていた。と、いつの間にかミミとの距離が開いてしまって、慌ててミミの長くて細い尻尾の影をふみふみっとする。そうして、プラムじいさんの家までた~っぷりとつけた自分達のとっておきのオシッコの匂いを頼りに(でも、最近は隣街から流れてきた黒と白の大きなのが三日置きにやってきてオシッコをひっかけるから、ミミは少しイライラっとしてしまうんだ)もやもやふみふみ、もやもやふみふみと繰り返していた。

 あと残り三十五歩で、プラムじいさんが二匹の為に作った、大きなドアの中にある小さなドアをくぐり抜ける所まで来ると、まるで二匹が来たことが分かっているかのように大きなドアの方が開いて、(だから、本当は小さなドアなんかいらないんだ)プラムじいさんがニッコニコ顔で現れた。

 そしてやっぱりいつものように、手には二匹の大好きなササミとレバーのくたくたに煮たのを持っていて、今さっき作ったみたいなホカホカ湯気をフーフーしている。

 シバは我慢ならなくなって、「ニャーニャー! ニャーニャ!」と鳴き叫ぶ。

 すると突然、プラムじいさんのすぐ後ろ、腰の辺りからにょきっと顔を出して、

「どうして来たのが分かったの?」と、メルメルが現れた。

 ミミがスキップしそうなほど軽く楽しそうに動かしていた足を急にピタッと止めたから、すぐ後ろで、もうスキップしていたシバはミミのお尻に鼻を、「ニャフン!」とぶつけてしまった。

 メルメルは真っ直ぐに揃えた前髪の下から、クリクリの目でプラムじいさんを見上げた。

「ね、どうして? 魔法みたいね」

「いやぁ、この子達はね、いつだって必ずこの時間にやって来るんじゃよ」

  プラムじいさんはホカホカのおいしいのを下に置いて、ミミとシバの二番目に気持ちの良い、耳の下のところを交代にコチョコチョしている。

「だからねメルメル、ワシは魔法なんか使わなくっても、毎日作りたてのご飯をこの子達に食べさせてあげる事が出来るんじゃよ」

 メルメルは、目玉を右にやったり左にやったりして考えた。

「じゃあ、魔法を使うのは二匹の方ね。毎日同じ時間に来ることが出来るなんて! それとも、時計を見る事が出来るのかしら?」

「どうじゃろうな~? フフフ……」

 プラムじいさんは、一生懸命に首を捻って考えているメルメルを、ニッコニコ顔で眺めている。

 メルメルがじっと二匹を見つめ続けているからシバはなんとなくソワソワしてしまい、口からポロッとレバーをこぼしてしまった。ミミは素早くその転がったレバーを食べてしまった。

「あ! ダメよ! ちゃんと半分こにしなくっちゃ」

 メルメルは、ミミのお皿からレバーを一つ摘まんでシバのお皿に入れる。そうしているうちに、またシバは口からポロッとささみをぼして、ミミはそれを食べてしまって、またメルメルは慌ててミミのお皿からシバのお皿にささみを移して――と繰り返しているうちに、二匹のお皿はすっかり空になってしまった。

「さて、ワシらも朝ご飯にしようかの。メルメル、お手伝い出来るかな?」

「もっちろん!」ふと気付いて、メルメルは横目で二匹のお皿を見つめた。「もしかして私達のご飯もササミとレバーのくたくた煮なのかしら?」

 実はメルメルはあまりレバーが好きではない。少し不安そうな顔をしていると、プラムじいさんはそれを見て楽しそうに笑った。

「二匹のご飯は、メルメルには少し薄味かもしれんからな。プラムじいさん特製の、キノコとポクポク卵のクリームシチューと、焼きたてのくるみバターパンにしようかと思うけれども、どうじゃな?」

「大、大、大さんせーい!」

 メルメルが余りに大きな声を出したので、シバは小さく飛び上がり、慌てて小さなドアから家の中に入って行ってしまった。

「じゃあメルメル、ミミとシバのお皿を持ってきておくれ」

「はーい」

 プラムじいさんが大きなドアを開けて家の中に入ろうとすると、ミミは右の足にすり寄ったり、足と足の間を器用にすり抜けたりしながら、一緒に中まで付いて来る。おじいさんがミミを踏まないように、下ろしかけた足を引っ込めたり横にずらして下ろしたりするのを見て、メルメルはお腹を抱え笑ってしまった。

「おじいちゃんたら、まるで踊っているみたいよ!」

「こいつはいっつもこうなんじゃ! こらこら、危ないじゃないかミミ!」

 初投稿作品です。誤字脱字、書き方のおかしなところがありましたら、是非ご指摘して下さい。よろしくお願いします。

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