プロローグ
*あらすじには古代エジプトと表記しましたが、古代エジプト風のオリジナル世界だと思って読んでいただけると有難いです。話の都合上エジプト文化に沿っていない部分も多々あると思うので。
また、この作品は五年ほど前に書き上げたものですので、文章の拙い部分は目をつぶっていただきたいです。
暗い、暗い部屋。
日の光の届かない私の部屋。
私は太陽の光を浴びたかった。
けれど部屋から出られるのは、月の輝く夜だけ。
セトや『暁』色の瞳を持つ義兄は、その月を見てとても美しいと言うけれど。
私はそうは思わない。
あの輝きは真実の光ではないもの。
それは、私が一番よく知っている。
私がついそれをもらすと、もう一人の義兄が複雑な顔をした。 そして、決まって彼は私の頭を撫でてこう言うの。
「いつかきっと――お前の望みは俺が叶えてやる。だから、お前は悲しむな」
私が一番望むのは、月が真実の光を宿すこと。
私は義兄のその言葉を疑ったわけではないけれど。
この思いのやり場に困って、毎夜毎夜歌を口ずさむ。
『月』は『太陽』の光を受けて輝くもの。
だから――
だから――
昼の空に輝く太陽にこの歌が届くことを願って、私は今日も歌う。
どうか――
どうか――
私にその輝きを
届けに来て