午後6時、その不安は
13です。2025、初投稿です。
午後6時
「どこ行くんだよ……あいつら!」
慶彦は走っていた。
家の鍵も閉めず、制服を着たまま、ただただ一心不乱に走っていた。
今まで感じたことのないほどの不安感、焦燥。腹の奥が痛くなるほどズキズキと痛み、考えるより先に、体がこの事態に対して危険信号を示していた。
なんなんだよ! なんで俺は今、こんな必死になって走ってんだよ!
分からない。何も分からない。こんなに焦る理由も、自分に無理を強いてまで深淵達を追う理由も。何も分からない。何も。ここまでする理由が、何も見当たらない。
「くそっ……」
慶彦は自分自身に対して文句を言いたくなった。だが、ずっと走っているせいで息が上がり、文句など言える余裕がない。言えたのは、一言にも満たないたった2文字の単語だけだった。
「………!」
光った。山の中部、ちょうど真ん中辺りで、柱のように空へと続く真っ白な輝きが一瞬、慶彦の目に映った。
そして、これまた一瞬で元の光景に戻る。いつも通りの景色だ。何の変哲もない、立派にそびえ立つ大きな山。
今の状態を見れば、きっとあれは幻覚だったに違いない、そう普通の人なら思うだろう。そのくらい、あり得ないような現象だ。
だが、慶彦はそれを幻覚とは到底思えなかった。彼の日常は一般的にいう普通とは異なる、特殊な日常。空飛ぶ少女がそばにいるし、ガラスを割って家に入る、非常識なガキもいる。そんな彼にとって、この光景は幻覚だと見て見ぬふり出来るものではなかったのだ。それもひとえに、非日常な毎日を送っているからこその感性でもある。
謎の光。この現象を見て、慶彦は確信した。あの2人が確実に関わっていると。興味本位であの2人は山に行ったわけではない。
2人にとって、しなければならないこと。それを成す為にいったのだ。きっと。
だが、そう解釈するにしても、1つ大きな疑問が残る。それは、先程見えた光。あの光は闇の象徴的な深淵と暗黒、彼女らから発せられるにしては少々、いや相当明るすぎると慶彦は感じたのだ。闇の反対は光。光といえば、白。もしくは黄色。そして先程の光の色は白。真っ白なはっきりとした純白だ。
彼女達の力で、あんな白色をした技を慶彦は見たことがない。
………まさかっ…!
一つの可能性が脳裏をよぎる。それは、暗黒が初めて慶彦の前に現れた日。その日、慶彦はこんな言葉を聞いた。
『光の者達に取られないよう、守らなくちゃいけない』
その言葉の意味。そしてさっきの光。山の存在。深淵から話されたたった少しの真実。それらを結び付けると……。
「……ッ」
慶彦は無意識の内に走る速度を上げる。
もしかすると、深淵の歩んでいる道は慶彦の想像よりもずっと、過酷なものなのかもしれない。
「大人しく、ここを去れ」
彼女は、そう口にした。
眩しいほどの純白をした鎧を纏い、片手には自身の身長ほどの長さがある槍を持った、1人の少女。
「あなたが出てって。ここは、私達の場所なの」
深淵は睨み、少女を見据える。何十年ぶりだろうか、この少女と剣を交えるのは。
「愚かな者は皆、口を揃えて同じ事しか言わないな」
「私の仲間を、バカにしないでっ!」
バッと手を振る。すると、その手付近に闇のオーラがまとわりつき、徐々に剣を形作っていく。そして完成した、一刀の剣。禍々しいオーラが剣から溢れ、やがて空中に溶ける。完全に実体化したのだ。
漆黒の深淵。純白の少女。まさに正反対といえる存在の2人が今、己の信念を掲げてぶつかり合おうとしていた。
―――暗黒は、人間が嫌いだった。
マスターである深淵の相方としてそばにつき、山を守る使命を受けてから、ずっと人間が嫌いだった。どんなに愛想良くされても、優遇された対応を受けても、大切にされたとしても、暗黒は人間が嫌いだった。
理由は簡単で、たった一つ……
『マスターを裏切るから』
たったこれだけだった。
話が短いって言わないで! 年末までに間に合わせようとしたけど、寝込んでで無理だったの! だから短いの! 次回は頑張る!
読んでくれてありがとう! また次回っ!




