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旧モーメント・オブ・トゥルース  作者: 糸間ゆう庵0358
序章 停止した世界と試練の宣告
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序章7 開会式の朝

開会当日。すでに東京に着いてから6日が経過していた。

東京駅周辺や皇居前の広場に何度か行ってみたが、数人の参加者と話すことが出来た.

ただ、秋灯の事情を説明するため神様や試練の運営者を探したが、それらしい人物は見かけなかった.

これでは神様とか超常的な何かが本当にいるのか疑わしくなってくる。


情報の交換を行えた参加者は全部で3人。

目の前から消えた少女と違って全員とすんなり会話をすることができた.


一人目に会話できた人は30代前半くらいのサラリーマン風の男性。

ビジネスバッグにスーツ姿で皇居前に佇んでおり、ネクタイは曲がり若干やつれていた。

どうやら時間が停止するまで試練が行われることを信じていなかったらしい。

食料を渡すと快く情報交換ができた。内容は明音先輩と変わらなかったが、やはり夢に神様が出てきて試練の参加の有無を聞かれたようだ。

正直まだ夢の中にいるようだと苦笑いしながら語っていた。


二人目に話せたのは大学生くらいの女性。

女の人だっため警戒心を解くため明音先輩に声を掛けてもらった。

あまり先輩を矢面に出したくなかったが、ここで関係を築いておけば後々プラスになるかもしれない。

こちらも話の内容はさほど変わらなかったが、停止した世界で心細かったのだろう.2時間くらい会話をし続けいていた。

身の上話から始まり、お風呂に困るだとか、寝るときに周りを警戒するから深く眠れないだとか。明音先輩が真摯に話に付き合っていたことがちょっと意外だった。


三人目はロードバイクに乗った男性。歳は20の半ばあたり。

大きなバックパックにヘルメット、サングラスと万全な準備をしていた。

彼は皇居前の芝生にテントを張ってそこを拠点にしていた。

争いが禁止されているなら大丈夫だろうと言っていたが、なかなか大胆だ。

会話にも積極的で他の参加者には自分から声を掛けているようだった。


彼からの情報もほとんど変わらなかったが一つだけ気になる内容があった。


彼は群馬の前橋あたりから東京まで自転車を漕いできたらしいが、道中の地形が変わっていたらしい。

基本的に主要な道路を使って進んでいたが、途中舗装されていない素肌の地面があった。

アスファルトで覆われた道路に突然現れた地面。そこだけ空間が切れているような違和感があったと言っていた。


面白い話だったが、ロードバイクの男性自身も良くわかっていないみたいでそれ以上話は聞けなかった。

一応消えた少女についても尋ねてみたが、こちらは詳しい情報はわからなかった。



皇居周辺で見かける参加者は日を追うごとに増えていった。

秋灯が一日で人をみた人数は最大で30人程度。

大抵秋灯たちと同じように皇居の周辺をうろうろしてどこかえ消えていく。

試練と聞いて皆警戒しあっているのだろう。考えることは同じなようだ。


この東京には今どれくらいの人が動いているのか。

数百人か、もしくは千人を超えるかもしれない。

想像以上に神の試練の参加者は多いようだった。


【閑話休題】


ようやく時刻が9時を回った。

一応日付が変わった時間から皇居外苑で待機していたけど、特に何も起きることなく朝を迎えた。

明音先輩と交互に仮眠をとって備えていたが、なんだか拍子抜けだ。

お告げをするのなら日付だけじゃなく時刻も教えておいて欲しかった。


芝生の上に敷かれたテントから明音先輩がのそのそ起きてくる。

髪がぼさぼさで目が半開きだ。


「・・・おはよう、、何か変わったことはある?」

「いえ、特に何も起きていません。他の参加者は増えてきましたが」


秋灯たちの周囲には確認できるだけで五十人程参加者が待機している。皆牽制しあっていて一定の間隔を空けていた。

ほとんど一人で行動している者が多いようだが、2、3人でグループを組んでいるものも見受けられる。


秋灯は芝生の上で寝転がり大手門の方向に目を向ける。

皇居の外周は広い。ここでこれだけ人数が集まっているのなら、皇居の中の東御苑や宮殿の方はもっと人が多いかもしれない。


「そろそろ移動しましょ。内苑のほうに移動したら何かわかるかもしれないわ」

「わかりました。思ったより今日は時間がかかりそうですね」


今日を迎えたらすぐに試練の開会が起こると思っていたが、予想が外れた。

秋灯と明音は手早くテントを仕舞いバックパックを背負う。リアカーは目立つので拠点にしていたビルに置いてきた。


ゴーーーーーーーーーーン、ゴーーーーーーーーーーン、ゴーーーーーーーーーーン


ちょうど支度を終えた段階で東御苑、江戸城の跡地方面から鐘の音のような明るい音が鳴る。

教会や結婚式場で聞くような音色に近い。


「始まるみたいね、行きましょうか」

「はい。ようやくですね」


二人は小走りで鐘の音の方へ向かった。

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