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フラれて始まる君との恋  作者: るち
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きっかけ

 週中の平日ということもあり、『desvío』は程よく席が空いていた。店員たちも接客に余裕があるようで、客たちとの会話を楽しんでいる者たちもいる。店内を見回した。カツラはどこにいる?やはり今日も奥だろうか?


「タイガさん。いらっしゃいませ。」


ウィローが親しく声を掛けてきた。


「久しぶりじゃないですか!いつもの席にしますか?」


タイガは自ら動くことにした。


「もし奥が空いているんだったら、奥に行きたいんだけど?」


「奥ですか?空いてますよ。今日はまだ時間も早いですしね。どうぞ。」


 そう言ってウィローがタイガを店の奥に案内する。鼓動が早まる。カウンター内、ただ一人カツラを探す。店の奥側の席は初めてだ。客達も慣れた感じでずいぶんと雰囲気が違う。やはり奥側は程よく席が埋まっていた。


「いらっしゃいませ。」


 いた...。カツラが。いつもの営業スマイルだ。

新しく来た客がタイガであると認識した瞬間。ほんの僅かだが、小さな驚き...。それは一瞬で消え他の客にするのと同じ笑顔をタイガにむけた。


「こんばんは。」


まるで初めてカツラに会ったときのように緊張し、声が震えそうになった。


「こんばんは。珍しい。こちら側に来るなんて。」


「うん。たまには...。」


言いながらカウンター席に腰を下ろした。

カツラの持ち場には客が多かった。彼目当ての客たちなのかもしれない。カツラは自分のものなのに。そんな思いが頭をよぎる。


「飲み物は?」


「えぇと。今日のおススメがあったらそれで。」


「かしこまりました。」


 カツラは相変わらず距離のある笑顔で答え、酒を選び始めた。

なんとかカツラと話をしなければ。カツラが酒を持って来た時に捕まえようと思っていたら、カツラは横にいる店員になにやら支持をし、タイガの二つとなりの客の前に行ってしまった。そしてその客から今通った注文を調理し始めた。カツラがこちらに戻る気配はない。

指示を受けた店員がタイガの酒をグラスに注ぎ持ってきた。店員は酒の説明をし始めたが、今目の前で起きたことがショックで彼の言葉はタイガの耳には入らなかった。


 注文された料理が出され、時間が過ぎていく。客の入りも多くなり、店が騒がしくなってきた。

タイガはカツラに気付かれぬように彼の様子を観察した。特に変わったところはない。いつも通りのカツラだ。接客は満点で、トークと料理で客を満足させていた。


 しかし唯一今までと違うのは、カツラがタイガを特別扱いしなくなったということだ。タイガとカツラの視線が交わることはなかった。特別からただの客に格下げされたのだ。

強い思いで店に来たが、自分をただの客の一人として扱うカツラの対応にその場にいるのがいたたまれなくなり、席を立った。


「ごちそうさま。」


引いた椅子をカウンターに戻そうとしたとき、伝票を手渡された。


「ありがとうございます。」


顔を上げるとカツラだった。おなじみの客に向けるためだけの笑顔。


「ありがとう。」


カツラからすぐ目をそらし、入口側のレジへ向かった。


 自宅までの帰り道。タイガは電車に乗らずにトボトボと歩いていた。以前カツラの家に行くまで歩いて行ったことを思いだす。つい数か月前のことなのに今では状況がすっかり変わってしまった。


 今日は勢いで『desvío』に行ったが、完全な空振りだった。カツラがここまで自分に対して態度を変えたという事実がタイガに重くのしかかっていた。話をしようにも相手があのような態度ではきっかけが掴めない。連絡先さえ知らないのだから。あの様子ではカツラからの連絡は期待できないだろう。


研修の間に何かあったのか?


「ああゆうのは周りが放っておかない。」


タイガの頭にフジキの言葉が蘇る。

嘘だろっ!もう誰かいるのか?

その思考はタイガを絶望させた。

読んでくださりありがとうございます。

続きが気になる、面白かったなど思われましたら、是非是非☆評価、応援よろしくお願いいたします。

楽しんで読んでいただけるようがんばります。

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