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フラれて始まる君との恋  作者: るち
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 あれからタイガは『desvío』でフジキ、カツラと三人で話す機会を得ることができた。最初こそガチガチだったフジキも、二回目にはいつも通りの感じでカツラと接していた。

自分の親しい人をカツラに紹介できて、タイガは満足していた。しかし、恋のせいかカツラへの欲はどんどん出てくる。


 タイガは、今日こそはカツラにここ数日考えている思いを伝えようと決めていた。二人にはもっと一緒にすごす時間が必要だ。タイガはカツラにもっと触れたかった。カツラだってタイガのことが好きなら同じように思っているはずだ。


 深夜。『アイビー』の店で一人カツラを待つ。タイガもすっかりこの店の顔なじみになっていた。


「タイガ!」


カツラが他の客の邪魔にならないように、声を出さずに口の動きだけでタイガに呼びかけ、近づいてきた。


「カツラ…!」


タイガも手を挙げながら、カツラと同じように口を動かし答えた。カツラが『アイビー』に着いた時間は、いつもより早かった。カツラもタイガと過ごす時間を大切に思ってくれている。

彼が席に着き注文を終えたところで、タイガは姿勢を整え深呼吸をした。気持ちの準備ができたところで打ち明ける。


「カツラ…。あのさ。俺たち、もっと一緒に過ごす時間が必要だと思うんだ。俺は、もっとカツラといたい。」


「うん。」


「だからさ、あの…、カツラの家の鍵、もらえないかな?」


「え?」


「俺の家の鍵でもいいんだ。でも、俺よりカツラの家のほうが店から近いだろ?深夜に帰るなら、店からなるべく近いほうがいいと思うし。カツラが帰るまで、俺、家で待てるし。俺が帰るときだって、カツラを起こさずに帰れるし。」


タイガは堰を切ったようにまくし立てた。自分でも必死になりすぎだと思ったが、止められなかった。


「…。」


カツラはタイガを見つめて黙ったままだ。なにか思案しているのか。タイガはこの提案は早すぎたのかと後悔が押し寄せ、絶句していた。


「そうだな、確かに。それ、いいかも。」


「え?いいのか?」


「いいのかって、タイガから言ってきたんじゃないか。悪い。俺、今店が忙しくて、そこまで頭回ってなかった。確かに家で会えるのなら時間を気にしなくてもいい。」


カツラからの好意的な返答にタイガは胸を撫で下ろした。


「じゃ、次会う時までに家の鍵用意しとくから。今日はどうする?場所の確認も兼ねてうちにくる?」


「え!あっ、えーと…、今日はいいよ。ちゃんと鍵ができた時にお邪魔するよ。」


タイガはドギマギしながら答えた。まさかいきなり家に誘われるとは思ていなかった。後から思えばせっかく誘ってもらったのに、なんて惜しいことをと後悔した。

しかし、これがタイガなのだ。奥手で真面目。全てきちんとしたい。大切な相手ならばなおさらだ。


「そう。わかった。」


カツラは特に気にする風でもなくそう答えた。






数日後、約束通りカツラは『desvío』で家の鍵をこっそりとタイガに手渡した。家の地図も一緒に。カツラは、タイガの都合がいいときに来てくれたらいいと言ってくれた。


しかし先日この話をしたときに、タイガはカツラの誘いを断った。そのため、鍵ができたその日には必ずカツラの家に行こうとタイガは決めていた。

カツラに改めて今日家で待つことを伝えると、彼は笑顔で頷いた。




 カツラから受け取った地図を見ると、店から確かに近い。この場所ならすぐに着きそうだ。

タイガは足取り軽くカツラの自宅に向かった。

着いた場所にはレトロモダンなアパートがたっていた。カツラが好みそうな建物だ。目的の号室にたどりつく。



ガチャ。


鍵を開け中に入るとほのかに香の香りがする。カツラは香をたくのかと一瞬思ったが、タイガは違和感に気づいた。室内には既にあかりが灯っている。カツラは今店にいるはずだ。どういうことなのか、どうすべきか、タイガが思考を巡らせていると部屋の奥から女性の声がした。


「カツラ?」

読んでくださりありがとうございます。

続きが気になる、面白かったなど思われましたら、是非是非☆評価、応援よろしくお願いいたします。

楽しんで読んでいただけるようがんばります。

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