第33話 蟻の魔巣①
「これなら『蟻の魔巣』への挑戦でいいんじゃないか?」
郁斗の提案に俺を含めた3人が了承したので、俺たちは『静寂の魔巣』第2エリア『蟻の魔巣』に挑戦することになった。
『どのエリアに挑戦しますか?』
・第1エリア『蜂の魔巣』
・第2エリア『蟻の魔巣』
俺たちが挑戦するのは第2エリア『蟻の魔巣』。
目の前に表示されたウインドウを選択すると景色が一転した。
第2エリアも第1エリア同様に深い森に覆われているので、視界が悪い。
奇襲への警戒は怠れない。
このエリアに出現するモンスターは蟻系モンスター。
序盤は働き蟻が出現する。
一度にそこまで数も出現せず、多くても5体まで。
奥に進めば、軍隊蟻が出現するようになる。
軍隊蟻は働き蟻を大幅に強化したような感じだ。
特に魔法攻撃はできないが、強靱な顎による噛みつき攻撃の破壊力はそれを補って余りある。
その為、軍隊蟻とバトルする時は接近させてはダメ。
万が一にも接近を許してしまった場合は、リーチのある武器で噛みつけないようにするしかない。
まあ、働き蟻と軍隊蟻は両方とも空を飛べないからエルナとカーラには関係ないけど、ブルーとコンは立ち回りが大事になってくる。
カサカサカサ
早速、5体の働き蟻と遭遇した。
強くなったブルーの力を試す相手。
そう思ってたけど、どうやら違ったらしい。
エルナとカーラ、そしてコンによって瞬殺された。
働き蟻1体1体はFランクダンジョンのボスくらいのステータスだからそこまで弱くない筈なんだけどな…。
働き蟻と遭遇と同時にカーラがダークウェーブで5体全てまとめて攻撃する。
エルナはスターフレイムショットという新スキルを使っていた。
しかも、全体攻撃スキルっぽい。
双銃から放たれた光り輝く銃弾が分裂して5体の働き蟻に襲い掛かった。
火属性の攻撃スキルなのだろうか。
かなりのダメージを与えていた。
そして、コンも全体攻撃スキルの鬼火を使っていた。
コンの周りを紫色の炎がグルグルしていたらそれが一斉に働き蟻に向かっていった。
働き蟻の中には回避行動を取ろうとした個体もいたが、追尾性能があるらしく、5体全ての働き蟻が被弾していた。
火属性の攻撃スキルなので、相性は良く、この時点で働き蟻のHPは残り3割ほどだった。
最後はカーラがナイトメアで仕留めた。
残りHP3割を全て削りきった。
とんでもない威力だ。
スキルLv12ってことは威力360。
それにカーラのステータスの高さが相まって凶悪なスキルと化している。
ブルーの出番がなかった。
このメンバーとパーティー組んでダンジョン攻略に挑戦してる訳だし、仕方ないか。
奥に進めば軍隊蟻とのバトルがある。
軍隊蟻相手には今みたいな一方的なバトルにはならないだろうし、ブルーの出番もきっとある筈。
その後も働き蟻相手には余裕の勝利が続いた。
それもあって、いろんなことを試してみた。
エルナはまだ双銃を使い慣れていないので、上空から働き蟻を的にして射撃練習を行った。
その間、カーラはエルナ同様に上空で待機。
コンは影分身を2体出して、その内の1体に陽炎と蜃気楼を使わせて本体は上手く潜伏していた。
陽炎と蜃気楼の発動限界がきたらもう1体の影分身が陽炎と蜃気楼を使う。
その発動限界がきたら本体が使うというローテーションを組んでいた。
一度に出せる影分身の数が2体になったことで、ローテーションすれば、陽炎と蜃気楼を実質的に永続で使えている。
それもあって、働き蟻はコンがどこにいるのか終始わからずといった感じだった。
ブルーに関してはカーラに抱きかかえられている。
空中にいるカーラの腕の中でプルプルしてエルナを応援?してる。
射撃練習中のエルナは全然攻撃が当たっていなかった。
唯一当たっている攻撃はロックオンを使用した時のみで、ロックオンを使用せずに放った通常攻撃は全て外れている。
射撃素人がいきなりそれなりの速さで不規則に動く的に当てるのはやはり、難しいみたいだ。
あれから3時間ほど経過した。
その間、エルナの射撃練習以外にもいろいろと行った。
カーラは新しく取得した霞連槍の使い勝手を確かめていた。
霞連槍は連続攻撃系統のスキルだけど、どこまで連続で攻撃できるかは使い手の能力次第と判明した。
連続攻撃系統のスキルには三種類がある。
一つ目は決まった回数、連続で攻撃するスキル。
これはスキルそのものの効果が発動する攻撃回数が決まっている。
発動回数が二回のスキルは二連撃など。
二つ目は一定の条件下では何回でも無限に攻撃し続けるスキル。
これは新入生代表トーナメント本戦でバトルしたハイオーガが取得していたラッシュガンが該当する。
ラッシュガンの場合、自身の攻撃範囲内に敵がいる場合に限って連続で攻撃し続ける。
もちろん、スキル発動中にしか使えない。
しかし、スキル発動中なら自身の意思とは無関係に攻撃を続けてしまう。
最後、三つ目は霞連槍と同様に連続で攻撃できる回数は使い手の能力次第。
これはシステムが連続攻撃が途切れたと判断したらスキルの発動が終了し、クールタイムに突入する。
カーラの持つ連続攻撃スキルは全てこの三つ目に該当している。
コンは3時間もの間、ずっと影分身も使って陽炎と蜃気楼を発動し続けていた。
現状だと、コンに攻撃を当てるには必中効果の攻撃スキルか全体攻撃スキルしかないと思う。
タッグEトーナメントで敵としてバトルする可能性のあるエルナとカーラは両方のスキルを取得している。
今みたいに味方だと心強いけど、敵だと考えると恐ろしいな。
ブルーはカーラとエルナの腕の中を行き来しながら、新しく取得した鳴神の使い勝手を確認していた。
相当手応えが良かったのか、いつになくカーラとエルナの腕の中でプルプルしていた。
俺たちはその後、更に奥へと進み、軍隊蟻6体と遭遇した。
軍隊蟻と戦う上で注意しないといけないのは、極力近づけないこと。
つまり、距離を取って魔法で攻撃するのがベスト。
地上にはブルーとコン、空中にはエルナとカーラがいる。
軍隊蟻は空中にいるモンスターに攻撃を当てる手段がないので、エルナとカーラは攻撃のみに専念できる。
ブルーとコンは陽炎と蜃気楼のコンボで上手く軍隊蟻を翻弄している。
地上と空中から攻撃の嵐にさらされている軍隊蟻に同情したくなるレベルでひどい光景だ。
特にカーラのダークウェーブでまとめてデバフや状態異常を付与されているからナイトメアの餌食になってしまう。
時間が経てば、ナイトメアのクールタイムが明けて再び、飛んでくる。
くらえばくらうほど、デバフや状態異常がひどくなる闇魔法。
それが上から爆撃機による爆撃のように降ってくるのだからたまったものじゃないだろう。
それに加えて、エルナによる銃撃の嵐。
エルナの射撃の腕が悪く、上手く狙いが定まっていない。
時折、変な所へ飛んで行っている。
このゲームはフレンドリーファイアがないので、エルナはそれに救われている。
ちょくちょく仲間のモンスターに被弾させているのだから。
それでもロックオンやスターフレイムショットを使えば、確実に攻撃が当たるので、全く当たっていない訳ではない。
それに銃撃だけでなく、魔法もある。
魔法による攻撃は銃と違って、今まで通りちゃんと当たっている。
練度の差というやつだろう。
ブルーとコンは地上から魔法を連発している。
炎と雷が入り混じっており、空中からの攻撃も含めるとちょっとした地獄のように見えた。
そして軍隊蟻が最後の1体になった時、カーラが一騎討ちを始めた。
どうやら霞連槍をもっと上手く扱えるようにする為の特訓らしい。
いつの間にブルーたちはそんな話してたんだろう。
まあきっと、働き蟻とのバトル中にエルナとカーラの腕の中でブルーがプルプルしていた時に話していたんだと思う。
あの時はエルナの応援かと思ったけど、この状況的に応援しつつカーラの特訓について話していたのだろう。
コンにそれをいつ話したのかはわからないけど、俺たちが気付かなかっただけで、どこかで話をしていたのだろう。
「すみません。カーラの我が儘に付き合わせてしまって…」
「それを言い出したらさっきはエルナの射撃練習に付き合ってもらったし、お互い様よ」
「そうそう。別に気にすることないだろ。カーラは昨日、大活躍してる訳だし、多少の我が儘くらい許されるさ」
「それにブルーたちはみんな納得した上みたいだしね」
ブルー、コン、エルナとカーラのバトルを見物しながら一生懸命に応援している。
ブルーの場合はプルプルしているだけだから伝わってるかはわかんないけど。
カーラの方は一進一退の攻防をが繰り広げられている。
でも、有利に進めているのはカーラだ。
闇魔法によるデバフ、状態異常付与は大きい。
カーラの攻撃をくらう度に軍隊蟻は動きが鈍くなっている。
それでも一瞬の隙をついてカーラに噛み付いたり、腹部先端部分にある針で刺すなど反撃を怠らない。
しかも針には毒が含まれているようで、カーラのHPが刻一刻と減っている。
もちろん軍隊蟻のHPも減っている。
そしてクールタイムが明けた霞連槍を繰り出し、カーラは軍隊蟻のHPを削りきった。
この時、カーラの残りHPは2割ほどだったが、エルナのプチヒールとキュアヒールですぐに全回復した。
まだまだ課題が残っているが、俺たちは着実に強くなっている。
『静寂の魔巣』を攻略する頃にはきっと『遊楽園』でも通用するだけの力を付けることができる。
時期尚早かもしれないけど、そんな気がする。




