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 その後、近くを歩き回って発見した幾つかの水脈に目印の杭を立て、帰城した。

「首尾は如何かな、アリーヤ姫?」

 部屋へ戻ったアリーヤに来客だとアーハナが招き入れた人物は、開口一番にそう聞いてきた。

 声は女帝イルだが容貌が違った。真紅の髪が短い金髪になっている。

「えっ! へ、陛下!?」

「アハハハ……やはり驚かれるか」

 崩れるようにひれ伏したアリーヤに対し、楽しげに発した女帝は短い髪を撫でつけた。

「あれはかつらだ。帝国では女性は結婚に際し髪を剃って夫に捧げ、再び伸びるまでは鬘を着ける風習がある。私は玉座と婚姻したことになっているからな」

「ぞ、存じ上げませんでした……非礼をお許しください」

「うむ。許そう」

 言って、なめらかな動作でアリーヤの手を取りあげる。

「小オアシスへ行ったそうだね、話を聞かせて欲しい」

 興味と不安と真剣さの入り交じった金の瞳にドキドキしながらアリーヤは全てを話した。オアシスが涸れる原因、復活は出来ないこと、歴代王女の能力ーー女帝は静かに耳を傾ける。

「そうか。異国の地で体を削ってまで尽力してくれたのだな。すまないことをした」

 歴代の王女たちが短命だっただろう、という推測の域を出ない話にも女帝は哀悼の意を示した。

「陛下の責ではございません。どうか、お気に病まぬよう」

 気づけなかったこともあっただろう。まして国を背負って嫁いだ王女の矜持もあれば、民や皇帝の望みを叶えることを使命としたのかもしれない。

 良かれと思ってやったことだ。誰かを責める、責任の在処を問うことが適切なのではない。大事なのは、これから。

「今後、水脈を掘り当てますれば涸れる心配も減りましょう。目星はつけてありますので、人夫の手配をお願いできればと存じます」

「うむ、手配しようーーだが、断じて無理をしてはならぬぞ。私は歴史同様にあなたを失うことは避けたいのだから」

 真っ直ぐな瞳に胸が高鳴った。

「ありがたきお言葉、嬉しく思います」

 例え形式上であったとしても、祖国さえ惜しまなかった自分を失いたくないと口にする彼女に失望してほしくない。されたくない、とアリーヤは思う。

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