表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
牛の首  作者: ルク穴禁
4/4

ラストバトル

ガン! アツシが叫んだとともに俺の背中に痛みが…………牛の首が居たか!? 俺は吹き飛ばされて、横転したランドクルーザーに叩き付けられた。全身がいてえ。


「りんひょうとうしゃかいじんれつざいぜん、しょー!」


意識が遠退く。ねーちゃんの魔法が効いてくれるといいが。あーあ、ランドクルーザーは廃車だな。これは走馬灯か?


「先輩! 先輩!」


アツシ、巻き込んじまって悪いな。俺と違って家庭があるのに。さよなら。バタッ。




ーー俺は気が付くと布団の中だった。ここは天国か? ゴートゥヘブン。いや、ゴートゥヘルか。俺は起き上がる。身体中が痛い。


「先輩! 無事だったんですね!」

「わっ! ビックリした~」


アツシが枕元に座ってた。そして、大きな声で喋った。


「ここは天国か? 地獄か?」

「何ぼけてんですか。ここは、ねーちゃんの自宅ですよ」

「俺、生きてた…………?」

「はい。牛の首につつかれた時にはヒヤヒヤしましたよ」

「自衛官はどうなった?」


アツシは首を横に振る。間に合わなかったか。


「村医者がランドクルーザーの所まで行ったのですが、手遅れでした」

「そうか。残念だったな」


俺はポケットから携帯電話を取り出して時間を確認する。深夜4時半。夜明けまで30分ってとこか。


「これからどうします?」

「夜明けを待って、タクシーで帰ろう」

「そうですね」

「巻き込んじまって悪かったな」

「何言ってるんですか。俺だって1億円の取り分に目が眩んで。マイホームのローンを一気に払えると思って」


俺は辺りを見渡す。木造の古民家だ。


「ねーちゃんは?」

「外で牛の首から俺達を守ってくれてます」


ガシャーン! ガシャーン! 外からデカい物音が聞こえた。俺とアツシは様子を見に行く。すると、ねーちゃんが玄関で倒れてた。


「大丈夫か、ねーちゃん!」

「逃げてーー!」


ねーちゃんが叫んだと同時に牛の首が家の中に入ってきた。


「戦うぞ、アツシ!」

「はい! 逃げ場ないですし、追い詰められたら戦うしか」


アツシが牛の首の横に回り、後ろ足にローキックをお見舞いした。バキッ! 牛の首がバランスを崩した。デカい図体で小回りが利かないか。俺は、倒れた牛の首のどてっ腹に踵落としを振り下ろす。ドスッ!


『ガァァァーー!』


「化け物が。キモいんだよ」


俺は、ねーちゃんの様子を見る。腹からの出血がひどい。女は牛の首に狙われないんじゃなかったのかよ?


「大丈夫か、ねーちゃん」

「痛っ。私も焼きが回ったわね。見ず知らずのよそ者のために命を張るなんて」

「それ以上、喋るな。傷に障る」


『ガァァァーー!』


もう1体居たか。


「アツシ! 任せた! 俺は、ねーちゃんを家の中に運ぶ!」

「殺ります!」


俺は、ねーちゃんをお姫様抱っこして運んで、布団の上にゆっくりと降ろす。


「もう大丈夫だからな」


ねーちゃんの意識がない。俺は、ねーちゃんの脈を診ると何とか生きてた。


「グワッ!」


俺は声を聞き付けて外に戻ると、アツシが腹から血を流して倒れてた。ここまでか……。牛の首が俺に向かって突進してくる。今度こそ死ぬよな。


「しょー!」


バタッ! 牛の首が横倒しになった。ねーちゃんの魔法か!? 俺は辺りを見渡す。すると白衣を着た老婆が立っていた。


「もしかして、村医者?」

「そうじゃよ。元気そうじゃな。お前さんの手当てもワシがしたのじゃ」

「アツシとねーちゃんの手当てを頼む」

「分かった。任せるのじゃ」


村医者はまず、アツシの容態を診る。


「アツシは生きてるか?」

「大丈夫じゃ。気を失っておるだけじゃな。傷は浅いが念のために病院へ連れてった方が良いのう」


『ガァァァーー!』


「いかん。仲間を呼んでおる。お前さんは逃げろ」

「そういう訳にはいかない」

「外が明るくなってきた。日の出まで逃げ切れ」

「アツシを置いておく訳にはいかない」

「どうなっても知らんぞ」


ドスッ! ドスッ! ドスッ! 新たに10体、牛の首が現れた。ここまでか…………。


『『『ガァァァーー!』』』


フアン。牛の首が消えていく!? 夜明けか。


『口惜しい。口惜しい。呪ってやる。呪ってやる。いつかお前を殺してやっ……』


牛の首が完全に消滅した。アツシのローキックで横たわってた奴も。


助かった…………? 俺、助かった?


「俺、助かったーー!」

「お前さん。この男を連れて帰れ。ここはお前さん達が来ていい場所ではない」

「ああ。タクシーを呼んで帰るよ」




ーー2週間後。俺はカフェでコーヒーを飲んでいる。アツシは無事に病院を退院した。今日はその退院祝いの帰りだ。ねーちゃんも生きてるそうだ。自衛隊が関わっている以上、ランドクルーザーは自衛隊が弁償してくれるそうだ。おそらく中古だろうけど。俺は自衛隊による聞き取りに応じ、全てをぶちまけた。半グレの覚醒剤の事も。自衛隊は内々に収めたがってた。


何故か俺のテーブルに二人分の水が入ったグラスが置いてある。1つは俺のだ。もう1つは…………? 俺は店員に確認する。


「店員さん。俺、一人だよ」

「え?」


店員の顔が曇る。何だろう?


「お客様はお二人でお見えになりましたが」

「…………ヒィィィー! 幽霊が憑いてきた!?」

「まさか。白いワンピース姿の女性の方ですよ」

「ますます幽霊じゃんかよー」


もうイヤン!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 白い服のねーちゃんがメッチャ気になる(゜Д゜;) テンポよくてハラハラドキドキで面白くて最高の牛の首伝説でした!! 誰か、B級な出来でもいいから実写にしてくれないかなぁ( ´∀` )
[良い点] ∀・)ノリがいいホラー作品でしたね。アクションホラーといったほうが正確かな。 [気になる点] ∀・)「もうイヤン!」で終わる最後がなんかイイ(笑) [一言] ∀・)牛の首企画を巡ってやって…
[気になる点] ねーちゃんの容態と白いワンピースの女性のことが気になります。 [一言] もうイヤン!といいつつも、続きがありそうな終わりに思えました。 絶望的な状態からの生還、面白かったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ