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牛の首  作者: ルク穴禁
3/4

事故

俺とアツシが自衛官の両脇を抱えて、ねーちゃんが足下を懐中電灯で照らす。ランドクルーザーまで30メートル。近くに牛の首は居ない。何とかなりそうだな。ガシャーン! ドスン! なんだ!? ねーちゃんが音のした方向を照らす。校舎の二階から窓を突き破り、牛の首が校庭に下り立っていた。ヤバい、復活したか!?


「急ぐぞ、皆!」


ランドクルーザーまで20メートル。大ピンチだ。


『ガァァァーー!』


牛の首の雄叫びが聞こえた。怖い。


「仲間を呼んでる。急ご」

「ヤベーな」


ランドクルーザーまで10メートル。ねーちゃんがランドクルーザーを懐中電灯で照らす。右リアフェンダーの辺りがベコベコだ。板金100万コースか。だが、この程度なら動くはず。


『『『ガァァァーー!』』』


ドスッ、ドスッ、ドスッ。足音…………。牛の首に囲まれたか?


ランドクルーザーまで3メートル。


「鍵は開いてる! 自衛官とねーちゃんは後部座席へ! 急げ!」


俺はランドクルーザーの運転席に乗り込む。アツシは助手席へ。自衛官も何とか後部座席に乗り込んだ。しかし、ねーちゃんはまだ外だ。


「何をやってる!? 早く乗れ!」

「待って! もう一度、印を切ってから! はぁーあ…………、りんひょうとうしゃかいじんれつざいぜん、しょー!」


ねーちゃんも後部座席に乗り込んだ。ねーちゃんの魔法が効いてくれるといいが。俺はエンジンをかけて、ギアをバックに入れる。皆、シートベルトをした。


「出すぞ!」


俺はランドクルーザーをバックさせて向きを変える。そして、ギアをドライブに叩き入れて加速させた。


逃げ切った! 牛の首の追撃もランドクルーザーの走行能力には勝てないか。俺は廃校から500メートルほどの民家の空きスペースにランドクルーザーを停めた。


「皆、大丈夫か?」

「ダメ。自衛隊の人の意識がないよ」

「出血多量か。脈は?」

「ちょっと待って」


俺はルームミラーで後方を見てると、ねーちゃんが自衛官の首筋に指を当てて脈を診てる。生きてるといいが。


「脈あるよ。でもかなり弱ってる」


俺はナビを操作する。近くの病院まで…………。


「近くの病院まで60キロだ。それまで持ちそうか?」

「無理ね。私の家に寄って。村医者が居ると思う」

「場所は?」

「ここから先に1キロくらいの所だよ」

「分かった。出すぞ」


俺は再びランドクルーザーを走らせる。


「先輩! 前! 前!」

「なんだ!?」


俺は助手席側のフロントガラスを見ると、黒い手の跡が無数に付いていた。心霊現象かよ。


「呪われたな、アツシ」

「怖い事言わないで下さいよ。南無三」

「で。ねーちゃん、牛の首伝説ってのはなんなんだ?」

「知りたいの?」

「ランドクルーザーの保険適用が出来るか知りたいから。まさかお化けに壊されたなんて保険屋が信じるとも思えんし」

「分かった、教えてあげる。牛の首伝説はその昔、牛の首を遊び半分で刀で跳ねた男がいて、牛は村に呪いをかけた。牛の憎しみは恐ろしく、年に一晩だけ村人に復讐すると言い伝えられてる」

「なるほど。つくづく運がないな」

「どういう意味?」

「昨日や明日に来てたら牛の首に襲われずに済んだのにな。まあ、5億円はなく、空振りだったが」

「そうね。本当に運がないね。この自衛隊の人も」

「一晩だけと言ったな」

「うん」

「今、夜中の10時だ。牛の首は何時に消えるの?」

「日の出とともに」

「夜明けの早い夏なのが不幸中の幸いか。何でねーちゃんは魔法が使えるの?」

「呪いに対する手段だから。村の女は物心が着いた時には皆、使えるよ」

「男は使えないのか?」

「さっきも言ったけど、牛の首伝説の発端が男によるものだから」

「参考になったよ。ありがっ……」


ガシャーン! ガリガリガリ! いてえ。ランドクルーザーが急に横転しやがった!? 何事だ!?


「皆、大丈夫か! 取り敢えず外に脱出してくれ!」

「はい!」

「うん!」


ランドクルーザーは左に倒れて止まってる。シートベルトしてて良かった。俺はフロントガラスを蹴って突き破る。そして、シートベルトを外して外に出た。アツシも続く。


「アツシ! 懐中電灯だ!」

「はい!」


ねーちゃんが脱出に手こずってる。自衛官の体がもたれ掛かり、なかなか出て来れない。


「ねーちゃん、目を閉じろ!」

「うん!」


バリーン! 俺はサンルーフを蹴破った。


「出てこい!」

「待って。自衛隊の人が邪魔で」

「手を出せ! 引っ張る!」


俺は、ねーちゃんの伸ばした手を掴み、思いっきり引っ張る。アツシが懐中電灯で照らしてくれてる。ねーちゃんも何とか外に出た。


「大丈夫か?」

「うん。それより自衛隊の人が」

「取り敢えず、医者を呼んで来よう」

「先輩! 後ろ!」


『ガァァァーー!』

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― 新着の感想 ―
[一言] 牛の首……なんという恐ろしい怪異(゜Д゜;) そして助手席側のフロントガラスの怪異も気になりますの!!
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