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宇宙は辛いよ  作者: 樺白
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相棒の帰還

 


  臭い。とても臭い。薄暗い下水道の中はサウナのように蒸し暑く、分厚い防護服を着て歩くには最も向かない場所だ。

  だからといって防護服を脱ぐとガスと異臭にやられて死ぬから、脱ごうにも脱げない。私は滝のように汗をかきながら、下水道を進む。

  そもそも何でこんなところにいるかというと、下水道清掃ロボットのマッピング依頼を受けたからだ。

  依頼内容はカメラやら音波装置やらがついた特殊メカを担いで道を練り歩くだけの簡単なお仕事。場所が下水道でなければ。

  余りの匂いに何度も朝ご飯を戻しそうになったり、道中で巨大ネズミに追いかけ回されたりしたけどなんとかマッピングを完了させ、地上に戻った。

  すぐさま防護服を脱ぎ捨て、新鮮な空気を肺に詰め込む。装置の確認が終わり、気を利かせてくれたのか、消臭スプレーをもらった。


  なるべく人に合わないように早足で宿に戻る。鍵を受け取ろうと受付へ行くと、獣人のオバちゃんに怪訝な顔をされた。

「お客さん、今までどこに行ってたんだい?」

「ああ、あの、ちょっと仕事で下水道の方に」

「ハァ、まったく。他のお客が寄り付かなくなるから、しっかりシャワーで匂いを落としといてくれよ?」

  と部屋のキーをテーブルの上に置いて、一歩下がる。きっと近寄りたくないんだろう。

「アハハ……すいません……」

  置かれたキーを取って部屋に戻る。ひとしきりシャワーを浴びて、念入りに汚れと匂いを落とした。新しい服に着替えて、体と持ち物全てに消臭スプレーをかけてギルドへ報告に向かった。


「何か匂いませんか?」

  受付のギルド職員が尋ねる

「えっ?」

  まさか洗い残しがあった?冷や汗をかいていると、黒焦げまみれの集団がギルドに入ってきた。

  彼らを見て納得すると同時にほっと安心する。きっと焼却炉か何かのメンテナンス帰りだろう。

「ミシマさん?大丈夫かですか?」

「ああ、はい、すいません」

「依頼の報告を受理しました。後ほどミシマさんの口座に報酬金が振り込まれます。他に何か要件はありますか?」

「えーっと、他に依頼ってありますかね」

  少々お待ち下さい、と彼女はディスプレイを操作し始めた。

「申し訳ございません。現在このギルドに依頼は届いていません」

「そうですか。あ、じゃあ何か私宛に物は届いていませんか?」

「了解しました。今確認してきますので少々お待ち下さい」

  ギルド職員が引っ込む。しばらく待つと、職員は子箱を持ってきた。

  箱を受け取り、封を開けると、中には機械製の柄らしきものが入っていた。

「それは・・・?」

「これはメンテに出してた私の武器ですね。意外と早かったな」

「ああ、なるほど。でしたら訓練室で試しますか?」

「はい、そうします」


「こちらは訓練場へのワープゲート・キーです。返却をお忘れなきようにお願いします」

  ギルド職員から青色のカードキーを受け取り、ゾウ専用フラフープみたいなワープゲートに差し込む。

  ゲートの中心に小さな青い渦ができて、それがどんどん大きくなっていく。枠までみっちりと渦ができて、カードキー差込口の上にあるランプが青になったら、それはもう通ってもいいっていう合図で私はワープゲートをくぐった。

  訓練場は最初は何もない10メートル四方の部屋があるだけだが、入ってすぐのパネルをいじれば部屋の形を変えたり訓練用の人形を出したりと色々できる。

  まず私は機械製の柄を持ち、スイッチを入れる。

  シュイン!と鍔の辺りから黄色い光が伸び、剣の形をかたどる。

  この武器はライトサーベルという。

  刀身は自由に設定可能で鞭のようにしならせることもできる。また、剣部分は物質化されていてかなり丈夫だ。

  剣部分の温度を変えられるから鍋に突っ込んでスープを温め直したり、服の中に仕込んでカイロ代わりにできたりと、戦闘以外でも頼れる相棒だ。

  しばらく人形相手に試し切りをしてみた。メンテする前に見られた、鞭形態から剣形態に変更した直前は剣部分が脆くなるバグは見事に直っていた。

  高いメンテ代を払ったかいがあった、と私はウキウキしながら訓練所を後にした。



  ギルドの外へ出て、街を歩く。街の至るところにロボット達がいて、各々に指令された仕事をこなしている。

  この星で金を稼ぐことは困難だろう。幸いにもこの星を出て行く分の金は貯まっている。

「問題はどの星に行くかだよなー」

  先が思いやられる。近場の星は機械化が進んでいるらしく、ここのギルドと同じような状態らしい。だからといって遠くの星へ行こうとすると費用がかさむ。

「帰ったらネットでギルド掲示板でも覗くか」

  ギルド掲示板とはありとあらゆる星から様々な依頼が集う掲示板だ。

  基本的にはパシリ同然の仕事内容で溢れかえっている(草むしりとか、ムカつく奴をぶっ飛ばしてほしいとか)。でもその中には美味しい仕事も紛れ込んでいるので、毎日掲示板を覗くかハンターは少なくない。

  自動販売機で飲み物を買って帰路につく。とりあえず晩飯を食べてから考えることにしよう。



「ハァ、やっぱ美味しい依頼は無いな」

  タブレットデバイスで掲示板をしばらく見てみたがろくな依頼は転がっていなかった。印象に残ったのは自分の奥さんを寝取ってくれる人を募集している依頼くらいだった。(因みにその依頼には1000人以上が応募している)

「ん?」

  一つの依頼が目に留まる。

「1、2ヶ月の護衛任務で飯と寝床付きで400000クレジットか、悪くないな」

  任務先もここからそう遠くない星だし、かなり良い。けど定員5人でもう100人近くが応募している。幸にも厳選方法はランク順じゃなくて抽選式だった。早速私はその以来に応募した。

  明日の朝には結果が出ているだろう。デバイスの電源と明かりを落としてベッドに入る。結果が気になってなかなか寝付けなかったが、いつの間にか寝てしまった。

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