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宇宙は辛いよ  作者: 樺白
2/20

契約書は要確認


宇宙は一つの丸い球体であると予想されている。そして宇宙は一つではない、とも予想されている。その理由は、突如なにもない空間から未知の物体が現れるからだ。それに規則性は無くある星に現れたと思ったら、今度は6光年離れた宇宙空間に出てきた。

そしてその物体の中には、ときおり生物が紛れ込む。しかし大半の生物は出てきた場所の環境に順応できずにすぐに死んでしまう。この宇宙の人々はそんな哀れな生物を救う、もしくは研究するために、施術を完成させた。複数の大気、気温、重力、宇宙線に適応できる体にする施術を。私はその施術が出来たずっと後にこの宇宙に飛ばされた。私はそれを今でも幸運だったと思っている。





目が覚める。白い電灯と、汚れた天井が見える。どうやら生き延びたらしい。腕に繋がれたチューブに気をつけながら身を起こして辺りを見回す。窓の外で白い空が広がっている。おそらくここは病院だろう。とりあえず看護師さんが来るまでこの良いベットでもう一休m「ぶえっきしょい!」「うえぇ!」隣から大量の謎の液体が飛んできた。なんだかネバネバしてとても臭い。発射源を見るとウニみたいな生物が身震いをしていた。

「ああ、悪いねあんた!そりゃ毒はないから安心しなよ!」

とケタケタ動きながらそいつは器用にタオルを差し出す。

「お気遣いどうも、タオルありがとうございます。オエッ」

あまりの臭さに一瞬吐きそうになる。もらったタオルで液体を拭いていると、看護証をぶら下げた生物が入ってきた。

「あらミシマさん目が覚め、たん、ですね。調子はいかが?」

看護師は私を見て一瞬強張った後、気の毒そうな目で新しいタオルをくれた。

「お隣からくしゃみをぶちまけたれた点以外は良好です」

タオルを受け取りながら答える。

「それなら良かった。しばらくしたら健診で担当医が来ますの

で、その間にシャワーを浴びますか」

「お願いします」

「ハハハ!そのほうがいいぞ、俺のは匂いがきついからな!念入りに洗っとかないと落ちねぇぜ!ハハブッ」

私はウニ野郎に使ったタオルを投げつけてシャワー室に向かった。




これまでにない程念入りに体を洗い、私は担当医がいる部屋へ向かった。中に入るとポール型の水槽から機械の手足が生えたロボットがいた。その水槽の中には鯉のような魚がいる。

「おっ、来たね。私はロック、君を担当した医者だ。どうぞ座ってくれ」

と彼は機械音声で喋りながら椅子を勧めてきた。「どうも」と私は腰を下ろす。

「君、1週間くらい寝ていたんだよ」

「えっ」

「まああの怪我じゃ納得だけどね。頭蓋骨にヒビが入って、顔面打撲、骨折多数に腹部と腕に裂傷。オマケに腹の傷には菌が入って膿が出来てたよ。治療ポッドが無かったら君のお腹は腐り果ててたかもね」

「うわぁ」

自分でも引くほどの大怪我をしていた。そしてそれを淡々と読み上げるロック先生が怖い。

「まあそんな所だね。体の調子も良いみたいだし、明日には退院しても良いよ」




翌日


退院手続きを終わらせて、私は病院の外に出ようと自動ドアの前に立つ。ドアが開かれた瞬間熱気がもわりと私を包む。外に出ると空には2つの太陽がギラギラと輝いていた。ポケットからデバイスを取り出して気温を確認する。

「62…太陽が二つもあればそうなるか…」

太陽が二つある星があるとは噂には聞いていたけどここまで暑くなるとは思ってなかった。日が当たらない場所を探してウロウロしているとメールが届いた。

『ターキー・チキンはいらないのか?』

タイロンだ。ご丁寧に地図も一緒に送信してきた。適当に返事を返して、コング・ミート(宇宙チェーンのジャンクフード店だ。社長はゴリラにしか見えない)へと足を運んだ。




「よう、退院おめでとさん。セットはもう頼んでおいたぜ」

先に来ていたタイロンが何やらよく分からないものを齧りながらカウンター席に座って(?)いた。私はその隣の席に座る。

「あの、何食べてるんです? それ」

「ああコレか?なんかよ、この星限定商品でよ、フライドワームってやつ、結構美味いんだ。お前も食うか?」

と彼は触手でニュッと私にソレを差し出す。確かに紫色の芋虫みたいなのがカラッと揚げられている。食欲をそそるような外観じゃない。

「いや、いいですよ」

「そんな事言うなって!俺も最初はん?って思ったが案外イケるんだ、これが。いいから食ってみろ」

とグイグイ押し付けてくる。私は仕方なくそれを受け取りまじまじと眺める。一瞬動いた気がしたけど多分気のせいだ。私は一息にそれを食べる。

「どうだ、どうだ?」

と彼は無駄にキラキラした目でこちらを見る。

「確かに美味しい……」が、食感は最悪。

「だろ?もっと食うか?」

「もう大丈夫、チキンが食べられなくなる」

そうか、と彼は次々にワームを口に放り込む。

「ああ、そうだコレ」

小袋をタイロンに渡す。

「ん?なんだコレ」

「病院に送ってくれたお礼です」

「マジか、サンキュ」

彼が小袋を仕舞っている間に、ターキー・チキンセットが来た。コカトリスの肉を揚げたもので肉汁がダバダバ出てくるのできれいに食べるのにコツがいるけど、その味は無類だ。


私はタイロンから先の海賊襲撃の詳しい話を聞いた。どうやらゼターラを襲った海賊はかなり強かったようで、オメガチームから何人か怪我人が出たらしい。その海賊団はまとめて確保、彼らが持っていた財宝その他は全て政府に徴収されて、労働施設送りになった。

「それでな、その徴収した金の一部を支援金に回すんだとよ。ギルドに聞いてみたらどうやら俺らも対応らしい」

「それなら良かった。まあ大した額じゃないんでしょうけど」

「流石に今回の損は取り返せねえな。あ、そうだレンタル屋から領収書来てるぞ」

タイロンは紙を寄越した。ゼターラで使っていたレンタル宇宙船のものだろう。

「ありがと。結構雑に使ったから整備費沢山取られないといいけど…って?!」

「どうした?」

「治療ポッド使用量二万クレジット(相場は1クレジットで2円位)ってどう言う事よ!」

「ウワー」

タイロンは他人事のようにジュースを飲む。

「レンタル料が相場よりも低いと思ったら……そんなカラクリが……」

「おっ、他にも空調使用量五千だってよ、こりゃやられたなぁ」

「コレ払うの?全部?」

隣を見るとタイロンの姿は無く、彼は会計を済ませて店の外へ出ていた。

「ちょ、ちょっと待って下さいタイロン!」

と慌てて席を立つとタイロンは駆け出した。

店の外に出た頃には彼は人混みに紛れて姿を消していた。

「ハクジョウモンガァ!!」

と思わず日本語で悪態をつく。周囲の奴らは奇妙なものを見るように私を見ていた。





『手続きが完了しました。またのご利用よろしくおねがいします』

私はATMを離れ、銀行の外に出る。あてもなくフラフラしていたら公園を見かけた。中に入ってベンチに腰掛けて一息つく。向こうで子どもたちが遊んでいる。が、この気温の中あんなに動いているのに全く汗を掻いていない。現地民凄い。私は財布を取り出して中身を確認し、タオルで顔を拭いた。

「ハァ……」

中には500クレジットしか入っていない。

「これじゃあこの星を出られないどころか宿も取れないよ……」

いっそ野宿をするにもこの星は空気が薄くて温度差が激しく、夜は氷点下になるらしい。流石にそれはキツイ。

「働くか…」

確かギルドはそう遠くにはないはず。頬をぴしゃりと叩いて自分に活を入れる。こんなとことで挫けている暇はない。私はベンチから立ち上がり、ギルドへ向かう。

「まずは宿!飯はそれから!」






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