生きよ、明日の飯のため
更新遅め
惑星ゼターラ
特にこれといった特徴はないけどとても平和な星。あまり文化が発展していない分植物が多く生息して、水と空気はそれなりに綺麗。多くの人がセカンドライフにここに移住して、土をいじったり自然を堪能してる。
そんな星へ宇宙海賊が攻めてきた。かなり手練の海賊みたいでこの星に配置されていた警備隊はあっという間に全滅。奴らは家を焼き、女子供を攫って、歯向かう者は皆殺にした。
暴虐の限りを尽くす奴らの頭上から一筋の光が落ちてきた。ズドン、とそれは大地を揺らして降り立つ。もうもうと上がる土煙の中から出てきたのは、私達ーーーーーーが、尊敬している特殊部隊オメガだ。
今、戦いの火蓋が切られたけれどもその詳細は知らない。そこに居なかったからね。場面は変わって港の7番停泊所。その中で海賊に馬乗りされてサンドバックになっている人間が、私、三島一希だ。
「ハア?これで全部ゥ?シラ切ってんじゃねぇぞテメェ!」
4本腕の海賊が怒鳴る。
「本当です!本当ですって!」
私の必死の主張も虚しく硬い拳が顔面に飛んできた。
「も”う”っ、オエッ、物を売って引き払うところだったんれすよ!」
「うるせえ!」
頭の中で鈍い音と歯が折れる音が響く。
「どうしても口を割らねえならコイツで!」
と4本腕はホルスターからパルスガンを抜いて、銃口を私の口に突っ込む。私はソイツの腕を掴んでどかそうともがいたがビクともしない。万事休すか、そう思った瞬間、4本腕の頭が文字通り吹っ飛んだ。破片と血とその他体液が顔の傷にかかって痛い。海賊の死体をどかして身を起こすと、こちらに向かってくるタコ型生物が見えた。
「おーい、大丈夫か?」
と呆けた声で語りかける。
「おかげさまで最悪れすよ!何が散歩程度のお使いだ大惨事じゃないれふか!」
「わーひっでぇ顔!そんなカッカすんなよ。海賊が来るなんて予測できるわけ無いだろ?」
「というか今までどこ行ってたんですタイロン!」
「悪ぃ悪ぃ野暮用でちょっとな、後でエール奢ってやるよ」
「ターキー・チキンセットもね!」
宇宙船のハッチを開いて乗り込もうとすると、遠くから足音が聞こえた。どんどんと近づいてくる。
「うわ。こっち来てる!数は3!」
「マジかよ?!あー、えーっと、俺が発進準備すっからお前は足止めしてくれ!」
「分かった!」
私は近くのレーザーライフルと手榴弾を持って停泊所の外に飛び出す。まだ姿は見えないが、着実に近づいてきている。銃の安全装置を外し構え、祈る。
「お願いだからショボいの来てよ…」
刹那、通路から3つの影が飛び出した。
「嘘…」
照明の光に照らされたそれはフルアーマー武装の四足獣だった。
黒く輝く塗装、背中に搭載されたレーザー武装、足元で光る合金製の爪、それらを視認した私は思わず
「格好良ッ!?」
と叫んだ。同時に獣たちが襲いかかる。私はライフルの引き金を引いた。緑色の光弾が奴らに向かっていく。二匹には避けられたが、一匹には当たった。被弾した勢いで後ろに吹っ飛ぶ。
「まずは1匹!」
獣が大口を開けて飛びかかって来る。すかさずライフルの銃床で殴り飛ばした。が、体制を整える前にもう一匹の体当たりをまともに食らってしまった。骨が軋む感じがする。倒れた私に獣が覆いかぶさり、噛み付いてきた。私は獣の首を押さえてもがく。ガチガチと鼻先で歯が鳴る。爪が深く食い込んでくる。
「クッソ犬がぁ」
片手で手榴弾を取り出す。
「これでも、食ってろ!」
手榴弾を獣の口にねじ込んで、腹を蹴る。さっき殴り飛ばした奴がもう一度飛びかかってきた。そばにあるライフルを掴み、引き金を引く。
「わあああああああぁぁぁぁ!」
弾切れを起こしたと同時に爆発が起きる。私は吹っ飛んで受け身も取れずに地面に打ち付けられた。熱い、痛い、耳鳴りがひどい。多分骨が折れた。右足が動かない。
『おい、出れるぞ!早く来い!』
と声がする。
「足が動かない、こっち来て運んでもらえます?」
『無理だな、手が離せない。なんとかして来てくれ』
「んな無茶な」
『じゃあ置いてくぞ!』
「ああもう!」
私は船まで這いずりなんとか乗り込んだ。ハッチが閉じ、私は扱いが雑だと猛抗議しながらタイロンに治療ポッドに放り込まれた。意識が落ちる前に外の風景が見えた。特殊部隊オメガが海賊たちを一網打尽にしている。
私も彼らの様なスーパーパワーがあればこんなにもボコボコにされないだろう。しかしそんな事を考えてもパワー手に入らないし傷は治らない。ついでに今回の損害もチャラにならない。今は傷を治すのとターキー・チキンセットのサイドメニューの事を考えればそれでいい。そんな事を考えながら私は眠りに落ちた。