しゃけなのかな・・・
おかしい。どこにもいなかった。
直線をまっすぐ進んでいれば、出口に直行できたはずだ。なのに、そのどこにも、協力者のような人物はいなかった。
しかも、門には開いた様子すらない……門を跳び越せば出れなくもないけど、外には美鈴がいるはずである。侵入した時に魔理沙の放棄で二人乗りしたとすれば、やはり出口から出て行くのが普通なのだが……
まあいい、そうなれば作戦Bだ。
私は門を開けて外へと出た。
「美鈴? もう起きてるでしょ? 侵入者よ」
「ぐかああああ、ぐかあああああ」
ね、ねてる。
紅魔館の門番、紅美鈴。彼女は、職務中に居眠りをすることで有名だ。ただ、居眠りしながらでも門番ができるという器用な妖怪なのだとか。
そうなれば、ここから侵入されたわけではないのだろうか。
外の青い芝生の上に、おっきくてふかふかの布団を敷いて、美鈴は今もぐっすり眠っていた。
……うん? 布団? ふとん!?
それはやばいですよ、美鈴……仮に、ねながら門番していたとしても、それじゃあ24時間働いていることになってしまうじゃないですか。
私は、彼女を蹴り起こした。具体的に言うと、ふとんの上から足蹴にする。
「起きなさい」
「あ、おはようございます」
蹴られているのに普通の対応すぎる。
美鈴は寝ぼけ眼のまま、半身を起こした。ネックピローつけてやがる。
……気にしてはいられない、もうすぐお嬢様の朝食の時間だ。
「いいかしら美鈴、急いでるから一回しか言わないわよ。紅魔館を封鎖してちょうだい」
「あーーー! 小魚の骨が喉に刺さっちゃったああ!!」
「ええー! 大丈夫かい? そういう時は、水飲むといいんだけど……どう? 取れた?」
「ううん……まだ痛いの」
「仕方ないね、ちょっとお口開けて。お箸で取るから」
「うん……あーーーーー」
「あー、良かった。口の奥の方だったね。すぐわかったよ。でも、こんなにぶっといのよく噛まずに飲み込もうと思ったねよ。僕びっくりしたよ」
「……」
「あれ? フランちゃん? 止まっちゃったの?」
「……」
「時間停止ってすごいね、魔理沙の魔法がなかったら絶対捕まってたよ」
「……」
「でも、これで料理に集中できる。一宿一飯の恩とか言うからね、ムニエル美味しかったし」
「……」
「この骨……シャケのなのかな?」