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図書館

 本棚が倒れる。そこから溢れた本が、木の床に積み重なっていた。


 構内な図書室は今、巨大なドミノ大会になっている。


 コアは私の後ろで、本当本棚を交わし長ら、魔理沙を追っていた。


 私の前で、魔理沙がホウキを乗り回す。ハイスピードで、本棚の隙間をぬって行った。時間差で本棚が倒れる。


 これではきりがないと、私は一気に上昇する。図書館の天井までやってきた。


 この施設は二階立てなそうだ。


 一回の貯蔵室の上、中央は行き来のため吹き抜けになっていて、周りを周回する二階の本棚。


 魔理沙は、入り口の近くで本棚を倒していた。


 私はそこで懐中時計を除く。


「あと、4分。少し時間を使いすぎたかしら……体力も回復したし、またやりましょうか」


 私は懐中時計を閉じた。それと同時に時間を止める。


 急に図書館は静かになった。倒れようとしていた本棚は、元からそこに固定されていたかのようにピタリと止まる。


 宙には羽ばたいているように静止している本。角が分厚く、木床に叩きつけられても簡単に傷つかないだろうが、木床は大きく傷をつけられるだろう。


 時間を止めた中、私は魔理沙の元に近づいた。


 ふわふわと宙を舞いながら、彼女のホウキの後ろに乗る。そっとナイフを取り出して、彼女の首元に当てた。


 そして、時間停止を解除する。


「へっへ〜んだ! 追いついてみろい!!」


「あら、誰に言ってるのかしら?」


「ひゃああ!? 時間止めるのずっこいぞ!?」


「止まりなさい!!」


 しかし、魔理沙は止まらない。それどころか、後ろを振り返って私の手をつかんだ。


 私自身、知り合いの首元を掻っ切るつもりは一切ない。そこを突かれたのだ。


 魔理沙は器用に後ろ向きでホウキを操作する。本棚の隙間を縦横無尽に飛び始めた。


 コアが私の視界に入ってくる。


「お待ちください! それ以上暴れるのはやめ!」


「危なああ!!」


「ぎゃあああ!!」


 コアが魔理沙のホウキに吹き飛ばされた。顔面でホウキの先端を盛大に受け止めた。鼻をさすりながら立ち直す。


 私は魔理沙との取っ組み合いを始める。


「あんたなんのつもりよ……!」


「祝ってんだろ、誕生日」


「花火なら外でやってちょうだい」


「固いこと言うなよ、やっちゃいけないことだから楽しいんだぜ」


「片付けるの誰だと思ってんのよ!!」


「お前」


「やめなさい!」


 図書館内に埃が舞い始めた。それも、濃い霧のようになって、室内を覆い始める。本棚が崩れて、室内の柱に寄りかかった。騒ぎが大きくなるたびに、屋敷が悲鳴を上げているようだ。


 このままじゃ崩れる。そう思った。


 いや、本来ならありえない。魔法で補強されているこの空間は、多少の災害なら難なく乗り越えられるだろう。


 だが、その逆もまた然り。この図書室には強力な魔法を残した本がたくさん貯蔵されている。この騒ぎで、もしもうっかり作動してしまったら? それほどこの自体は緊急である。


 私は力を込めて魔理沙の腕をひねった。


「あたたたたた!」


「いい加減にしなさい、やりすぎでしょ!?」


「大丈夫のぜ、本借りたら帰るって言ってんだろ?」


「返さないから貸さないってってんでしょ」


「それはパチュリーの口から聞きたかったのぜ」


「あ、そういえば……」


 パチュリー様はてっきり魔理沙を食い止めに行ったのかと思っていた。だが、ここまで自分の図書館で騒がれても、一向に駆けつける様子がない。それは不自然だ。


 と、いうことは。別の何かに気を取られている? いいや、自分の住処のような場所をこんなにされて、それ以上に大切なこととは?


 考えてみれば、パチュリー様がそんなことをなさるはずがない。


 その時、私の頭の中に一つの考えがよぎった。


「まさか、協力者……」


「さ〜て、どうだろうな?」


「うっさいわね、早く止まりなさい!!」


 図書館の中が騒音にまれてから7分ほど。お女王様の朝食まではあと少しだ。


 あと30秒で決着をつける。


 私は魔理沙の手を急に話した。


「うわ!」


 魔理沙のバランスが崩れたのを見ると、もう一度手を組み直し、彼女の背後に回る。そっと首筋にナイフを当てて、さらに腕で彼女の首を軽く締めた。


「ちょっと、まって……ギブギブギブ!!」


「なら早く止まんなさい!!」


「だからはなしてええええ!!」


 ホウキのバランスが崩れた。急に重力に従って床に真っ逆さまだ。


 図書館の構造は二階建てだが、別に二階建て住宅ではない。どちらかというと、巨大な体育館のような特大二階建てだ。この高さから落ちればただじゃんすまない。


 だけど、私は飛べる。


 とは言っても、さすがに魔理沙を抱えながら、猛スピードを出せるほど高性能なホウキを一緒に持って宙に浮くのは少しきついだろう。


 結論から言うと、魔理沙を捨てるしかない。


 しかし。そうなれば、協力者の情報を聞き出す前に逃げ出されてしまうかもしれない。また捕まえるのも骨が折れそうだ。


 さて、どうしたものか……







「きゃ!!」

「ごめんなさいね! 紅魔館の可愛い魔女さん!!」







 どこかで聞きなれない声と、聞きなれた声が聞こえた。


 魔理沙の首を絞めながら、辺りを見回す。ドミノだおしの図書の中で、一箇所だけおかしなところがあった。


 なぜか倒れていない本棚のスペース。図書館を正方形とするなら、ちょうど南西の方角。そこだけ全く被害を受けていない。


 さらに、なぜか白い煙幕が立ち込めているのだ。


 だとするなら、先ほどの悲鳴は……


 私は、魔理沙の背中を蹴っ飛ばした。


「ぎゃああああああ!!」


 魔理沙は壁に激突したかもしれないけどその程度では死なないので放っておくこととした。


 すかさず、体を宙で立て直す。南西へ、被害のないスペースを目指す。


 途中、コアが本棚を立て直す姿を目撃した。必死に本棚を押し上げる姿は涙目で、少し可哀想な気もしたが、うっかり微笑みもこぼれた。


 あわてて、前を向きなおす。


 床にはパチュリー様の影が。白い煙幕の下から、紫の服の彼女が見えた。


 全体的にふわっとした身なり、紫の生地はおそらくシルクで、白い線で縦のボーダーになっている。見た目は、文科系の女の子だ。私が、メイドとして使える前、確か文学部の人間がこのような顔つきだった。


 しゅた、っとパリュリー様の隣に飛び降りる。


「大丈夫ですか? パチュリー様!」


「だ、大丈夫よ。ちょっと煙が目にしみただけ」


「追いかけます、パチュリー様は図書館の修復をお願いいたします」


「わかったわ。あと、あの男の子はちょっと特殊よ。気をつけなさい」


 ちょっと特殊? めっちゃ特殊なあなたが言うのですか?


 い……いいや。それは今関係ない。本を盗まれたのだ。


 追いかけなければ。









「作戦通りなら、これで難なく抜けれるはずなんだけど……そろそろ僕の作戦も始めるかな」

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