早朝
また、うるさい鐘がなる。
外は暗く、空も暗転。黒く灰色の分厚い雲が、紅魔館の空を覆っていた。
私は、その紅魔館の薄暗い一室で目が醒めるのだ。まだ、うるさい鐘の轟音はなっている。まるで、男性のいびきのようでもあった。
部屋は薄暗いが、ここの名はあくまでも紅魔館。絨毯は、毒々しいほど真っ赤だ。暗い中でようやく目に優しい紺色が混ざったようだった。
「朝……かしら、早いわね」
暗い私の寝室は、ほとんど場所が同じ色をしているかのようだった。窓から差し込む光が唯一、絨毯の赤を照らし出す。
私は、薄暗い中、昨日の朝見た時には真っ白だったシーツに手をついた。ベッドから上半身を起こし、寝巻きのまま窓の外を眺める。
銀髪が、頬の横にかかったのがわかった。
「今日の予定は……まずは朝ごはん」
きらめくような光が、塵のようにその場を舞っている気がした。
ベッドから立ち上がる、窓の前を通って火を遮った。左下に、私の影が通ったと思う。壁際の姿見は私の姿を映し出した。
「メニューは、ベーコンエッグ、ウインナー、チョップドサラダ、ベーグル……」
そこには、私の姿が。白い水玉の薄い水色をした寝巻きを着ていた。頭には円錐型の帽子パジャマが、これもまた水色で水玉だった。
私は、自分の胸元をきゅっと掴んでボタンを外した。上から下に速やかにパジャマを解いて、足元にはたりと落とす。白い下着があらわになる、自分で言うのもなんだが慎ましい隆起が二つ鏡に現れた。
銀の短い髪の毛。女の子なら、もっと長く伸ばしていてもいいのだろうけど、私は仕事柄長く伸ばすと邪魔になるのだ。ただでさえ、銀色というひときわ目立つ色なのだから、少しは短くまとめないと。
「あとは……そうね、60年代の赤ワイン。今日は誕生日なのだから、朝から記念のボトルを開けるのもいいかもしれないわね……」
その頃になると、雲の隙間を縫ったような太陽光が、窓から差し込み始めた。部屋は一層明るくなり、毒々しい絨毯が真っ赤に染まっていった。
鳥の鳴き声がチュンチュンと聞こえる。朝なのだと実感した。
「待っていてください、お嬢様。ただいま最高の朝ごはんの支度を始めます」
「魔理沙さん、ちょっとスピード出しすぎじゃないですか? こ、怖いんですが」
「あ〜? お前、男のくせにビビリなんだな。なっさけねぇ」
「ちょっと、いや、しっかりつかまっていいですか?」
「……え、あ、ああ! どうぞどうぞ! しっかりがっちりやってくれだぜ!!」
「では、お言葉に甘えて……」
「うぅ……」
「苦しくないですか?」
「あ、ああ、気にすんなよ!!」