第二話「ヌアゴアの謎」
男はそのまま大きく飛び掛かりヌアゴアの大きな頭めがけてパイプをぶつけようと試みた。しかし気が付くとそこにヌアゴアはいなかった。
「どこいっちまったんだい?」
男は化け物に尋ねた。
「あれは実体ではないということでしょうな。奴らは我々の数段高い知識と化学力を持っているのです。」
「さっきの隕石もあいつかい?」
「おそらく」
男は震えた。まるで魔法だ。なんでもありである。
「ところで・・・・・・」
化け物は男の恐怖をなだめるように話しかけた。
「あなた、お名前は?」
「俺は『颯来」ってんだ」
「ソラ・・・・・・。まるで天空にとどろくような大いなる名前ですな。」
「ありがとよ、ところであんたは?」
「私は石と申します。」
「イシか、覚えておく」
「ところでソラ様。あなたはなぜこんなところにいらしたのですか」
「よく覚えていないんだ。気が付いたらここにいた。分かることは無くしたハーモニカを探すってことだけ」
「なるほど」
「ちなみにイシよ、あんたは?」
「私はヌアゴアを滅ぼすために各地を旅しております。とはいっても何も出来ていない状態ですが」
イシはそういうとその自慢の大柄な肉体を剥き出しにした。
「奴らを倒す為に鍛え上げたこの肉体、いまだ活躍の機会を与えられません。」
「あんなの無理だよ。なにもしないのが一番さ」
「奴らは自分達のことしか考えておりません。我々の仲間はみな奴らのペットです。家畜として今も厳しい目を受けながら過ごしているのです。」
「あきれた奴らだ。生かしておけん。」
ソラの心が悶々と煮えたぎった。
「イシよ、お前の思い。私も一緒に遂げさせてはくれないだろうか。」
「ありがとうございます。ソラ様。」
そういうと二人はぐちゃぐちゃになった地蔵の足場を元に戻し、隕石に巻き込まれ死んでしまった猫達を埋葬した。そして生き残った猫達の為に自分のポッケに何故か入っていたにぼしをすべて地蔵の前にお供えした。
「もしかして、猫共はこうやってお供え物にありつくためにこの地蔵の近くに集まっていたのかもしれませんな」
イシはひらめいたように言った。ソラはそこでしばらく考えると、一言提案した。
「もしかしてこの地蔵に未だにお供えしてるヤツがいるかもしれない。そう思わないか?」
「確かに。そうですな」
「そいつのことを調べてみないか? もしかしたらそいつを狙ってヌアゴアはこの地蔵に隕石を落としたのかも」
「成程。ではあの辺りで見張ってますか」
二人は地蔵のそばにある木々に身を潜めた。見張りは替わり替わりで行われた。一定の時間ごとに交代を繰り替えしながら木々のそばで実などを食べながら二人は過ごした。
見張りを初めて10時間が過ぎた時だった。
「おい、きたぞ!」
ソラはいそいそと近くで横になっていたイシを起こした。イシは眠たそうにソラの顔を眺めていた。
そこにはなんと以前とは形相のことなるヌアゴアの姿があった。
「さっきとは別のやつだな」
「・・・・・・よく分かりますな」
ヌアゴアは顔は大きく膨れ上がり、その肥大化した頭を細い両腕で懸命に支えていた。そのまま地蔵のお皿におそるおそる手をかざすと、猫のカリカリがボロボロと手のひらから湧き水のように零れ落ちていった。
その姿を見て、なぜかソラは興奮した。よく分からないが異常に全身が高揚していくのが分かった。熱でもあるのだろうか。とにかくこれからどうするか、二人は話し合った。