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 その日の昼休憩。私にとっては嬉しいサプライズがあった。なんと兄様が私の教室まで迎えに来てくれたのだ! 兄様に誘われて、Noなんてありえない。二人でランチを囲みながら、私は笑顔を隠し切れないでいた。



 「兄様と一緒に昼食だなんて、夢みたいです」



 「大げさだなぁ。昨日も一緒に食べたでしょ」



 「学校と家は違うんですー」



 そう、違うのだ。家で食事を取るのはいつものことだけど、学園で兄様と食事をするのは本当にレアだ。姉様とご一緒することはそれなりにあるけれど、学年の違う兄様とご一緒できることは滅多にない。

 だから、本当に、本当に、嬉しいのだ。



 「予鈴が鳴るまで一緒にいていいんですよね?」



 「もちろん。いっぱい話を聞かせてほしいな」



 「はい!」



 昨日も一緒にいたけれど、兄様と話したいことなんていくらでもでてくる。今日の朝の話をすれば兄様は苦笑していたけれど、特に何も言わなかったので、問題はなかったんだろう。

 しばらく私が主に話して、兄様は楽しそうに聞いてくれていたんだけど。私の話が一段落したときに、兄様がふと真剣な表情をした。



 「あのね、アリア。僕からお願いがあるんだ」



 「お願いですか?」



 兄様から私にお願いなんて珍しい。反射的に背筋が伸びた。

 そんな私に、兄様は苦笑しながら、



 「難しいことじゃないんだ。またしばらく、生徒会の手伝いをしてほしくて」



 「お手伝い? 兄様の?」



 思わぬことに、目を丸くしてしまう。

 文化祭が終わったとはいえ、まだ生徒会室には後処理が残っている。だがそれはお金に関わることが多いはずで、私が手伝えることはないだろう。むしろ、迷惑になる自信がある。

 それがわからない兄様ではない。だからこそ心から不思議に思って尋ね返せば、兄様はやっぱり困ったように笑った。



 「文化祭は終わったけど、今度は武術祭があるからね。その手伝いをしてもらえないかと思って」



 「え、でも、武術祭は・・・」



 文化祭は全員参加の一大イベントだけど、武術祭はその名の通り武術のお祭りだ。基本的に令嬢は参加しないし、子息たちの中にも体を動かすのが苦手な人もいる。なのであくまで参加は任意の、見学者のほうが多いイベントだった。

 なので、準備は文化祭ほど忙しいとは思えない。もちろん、生徒会が主催なので仕事はあるけれど、文化祭のときと比べたら半分以下ではないのか、と思うくらいに、生徒会としてはただのイベントの一つのはずだった。



 「うん。でも、僕とマリナーは、今年は建国祭の準備を手伝うことになって、生徒会にあまり顔を出せなくなりそうなんだよね」



 「え。それはおめでとうございます?」



 建国祭の準備、ということは、父様の手伝いをするのだろう。それはつまり、国の政治の見習いを始めるということだ。まだ学生の兄様がやることではない。それだけ腕を買われているのだろうけれど、ただ父様に巻き込まれてるだけの可能性も捨てきれない。

 なので疑問系で祝福すれば、兄様も苦笑を浮かべるだけだ。・・・うん。これは後者だな。お疲れ様です。



 「オーウェンは元々自分の領のこともあるからね。僕たちが不在の間、ミーシャだけに任せるわけにはいかなくて」



 ・・・・・・うん? 兄様と殿下は建国祭の準備に忙しくて、オーウェン様は自分の領地のことでお忙しい。となると、生徒会室に残るのは姉様とパーシェル様の二人だけ・・・?



 「やります!!」



 それはダメだ! とってもだめだ!! どこで何のフラグが発生するか、わからなさすぎる!! 絶対二人きりになんてさせられない!!!


 一気にやる気を見せた私を、どう思ったんだろう。姉様の手伝いをする、という動機だから、決しておかしい流れではないはずだ。

 現に、兄様はほっと息を吐いている。わかります。兄様がいらっしゃない間、私が姉様をお守りしますとも! ええ!!



 「じゃあ、今日の放課後からお願いできる? 今日は僕もいるから」



 「はい!」



 こうして私の生徒会通いは、またしばらく続くことが決定したのだった。








あけましておめでとうございます。

本年もぼちぼち更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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