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 舞踏会は、とても楽しいまま終わった。エミリオ様と話していたら時間はあっという間に過ぎていって、気がつけば舞踏会の閉会の時間。

 殿下の最後の挨拶をエミリオ様と聞いた後、その場で別れて兄様と一緒に帰宅した。エミリオ様が送ると言ってくださったけど、兄様が笑顔で断っていた。今日は姉様もこちらに泊まるから不要だと。姉様のお泊りという響きに、私のテンションがマックスまで上がったのは言うまでもない。

 あ、補足だが、姉様は私の部屋にお泊りだ。いくら婚約者とはいえ、婚前に兄様の部屋に泊まるなんてことはもちろんしない。名目上も、「アリアの家に泊まる」が正解で、決して「アーダルベルトの家に泊まる」わけではない。私の姉様好きは学園どころか貴族の間でも有名で、貴族にしては珍しく、将来の義理の姉妹という関係ながらも仲のよい私たちのお泊りを疑うものはいなかった。


 舞踏会の次の日は、学校はお休み。今まで忙しかったのが嘘みたいに兄様と姉様とのんびり過ごして、私はとても幸せだった。



 そして登校日。



 「アリア様、あれはどういうことでして!?」



 「本命はどなたですの!?」



 私は今、クラスメイトの皆に囲まれています。



 「え? え?」



 いつも因縁をつけてくる人たちではない。今まで仲良くしてくれていたクラスメイトたちだ。が、その迫力が見たことのないもので、私は何がどうなっているのかわからない。

 そんな私に、彼女たちはなおも言葉をかけ続ける。



 「誤魔化しても無駄でしてよ!」



 「やっぱりエミリオ殿下が本命かしら!? 一番多く踊っておられましたものね!」



 「はっ!? もしかして、あの日踊った方々はあくまでカモフラージュ!? 本命は他にいらっしゃるの!?」



 踊った、という単語で、やっと事態を察する。つまりはなんだ。みんな色恋の話だと思って、色めき立っているわけか。

 理由がわかれば、苦笑するしかない。答えはもちろん決まっている。



 「そういう話ではありません。エミリオ様は、兄様と姉様を二人にさせてあげようと誘ってくださっただけですし、殿下たちは兄様に勧められたので踊っただけです」



 うん、何も間違えていない。エミリオ様にエスコートされたのはまさしくそれが理由だし、殿下たちと踊るきっかけも兄様だ。正確にはレンラー殿下とリンナ姫様に頼まれたからだけど、その流れで兄様にも頼まれたのだから間違えてないはずだ。

 私の返事に、クラスメイトたちはぽかんと目を丸くしている。え、何その反応。うん?



 「本当にそれだけですの? あれだけの殿方に囲まれて?」



 「? 他に理由が必要ですか?」



 「だって生徒会の皆様よ? 殿下とも一緒に踊っていたでしょう?」



 「そんなことより、ラストダンスを兄様と踊れたので大満足です」



 「あらあら。アリア様はまだお兄様にべったりなのね」



 「もちろんです。兄様大好きですから」



 このやり取りは彼女たちにどう映ったのだろう。生暖かい目で見られてるような気がしないでもないが、その理由が私にはわからない。



 「ですってよ、エミリオ様」



 いつからそこにいたのだろう。自席に座って授業の準備をしているエミリオ様に令嬢の一人が話しかければ、彼はにこりと笑って、



 「どうもこうもないでしょう。授業、始まりますよ」



 ・・・なんだろう。笑顔が怖い気がする。でもそれを確認する前に、予鈴が鳴ってその場は解散となってしまった。

 あとでちゃんと話したほうがいいのかな? あれ、でも何を話せばいいんだろう? うーん・・・

 悩んでいる間に先生がやってきて、ホームルームが始まった。ちらりと横目で確認したエミリオ様は、さきほどの笑顔が嘘のようにいつも通りで・・・

 ・・・うん、これは蒸し返さないほうがいい気がしてきた。なんていえばいいのかもわからないし。触らぬ神に祟りなし。授業に集中しよう。

 時々エミリオ様の様子を伺いながら、それでも先生の話に集中する。なんだかもやっとした感情はあったけれど、私は気にしないことにした。







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