17 ※マリナー視点
※2018/12/10 誤字を修正しました。
レンナーと踊り終えたアリアが、二人でこちらにやってくる。アルと踊り終えたリンラもだ。二人の弟妹の楽しそうな姿に、見ていただけの私も微笑ましい気持ちになった。
のも束の間。
「「お兄様!!」」
気がつけば、私は弟妹たちに詰め寄られていた。
「ど、どうしたんだい、二人そろってそんな顔をして・・・」
「どうしたもこうしたもありません!」
「他国の王子がお姉様をエスコートされていたのに、お兄様は何も思わないんですか!?」
怒りさえ感じる二人の様子に、私は思わず目を瞬かせた。
「二人は、アリアがエミリオ殿下と一緒にいるのが嫌なのかい?」
「「嫌に決まっています!!」」
・・・これはびっくりだ。まさか即答で肯定されるとは思わず、反応が遅れた。
その間に、二人は息巻きながら言葉をぶつけてくる。
「聞こえてましたか? いろんな方がお二人をお似合いだ、って褒めてらっしゃいました!」
「同じ年ですし、王子と公爵令嬢ですし、身分もぴったりね、って!!」
「普段から仲睦まじい、って言ってらっしゃる方もいました!」
「しまいには、アルお兄様公認だなんて間違った情報まで!」
「「お兄様はこれを聞いてもなんとも思わないんですか!?」」
この迫力はなんなのだろう。気迫とでも呼ぶべきだろうか。ぐっと二人に詰め寄られて、私は両手を上げて降参状態だ。
一応助けを求めて周囲を見てみるけれど、アルは当然のようにアリアとミーシャ嬢と話しているし、オーウェンとパーシェルも我関せずとでもいうかのようにこちらを見ない。うん、助けは期待できない。・・・うん、頑張ろう。
「一応、私もこの後アリアと踊ろうかと思」
「まぁ! それはいいことです!」
「では早速アリアお姉様を呼んできます!」
「え? ちょっと待って二人とも!!」
私の待ったを聞くこともなく、二人はそろってアリアの元へ行き、数言交わすとすぐにアリアをつれてきた。アルの視線が痛い。すごく痛い。なんだったらミーシャ嬢の視線も痛いけど、これ以上気にするのは私の身が持ちそうになかったので、気付かなかったことにした。
「お連れしました!」
「お姉様、お兄様をよろしくお願いします!」
「そこは逆じゃないの!?」
「いいえ、お姉様によろしくお願いします!」
どんと二人に背を押されせる形で、ダンスホールに躍り出る。ちょうど曲が変わって、入れ替わるタイミングだったようだ。明らかに姿勢を崩している私とアリアは、ちょっとした注目を集めてしまった。
「・・・とりあえず、踊りましょうか」
「・・・そうだね」
とはいえ、ここで戻るのは更なる注目を集めるだけ。元々アリアとは踊りたかったし、悲観するような状況ではなかった。
右手を差し出せば、そっと重ねられる小さな手のひら。優しく握れば弱く握り返されるそれは、まるで信頼の証のようだ。姿勢を正して手を引けば、アリアも体を預けてくれる。
目の前で、金色が踊る。まるで歌でも歌うかのように、リズミカルに、自由に跳ねる。その動きを作り出している相手が自分だと思うと、いいも知れぬ感情が胸の中に溢れた。
「レンナー殿下たちとは、何の話をされてたんですか?」
「んー・・・秘密かな」
私の返事にアリアは目を丸くしていたけれど、彼女は賢い。こういえば、王族の事情を深読みして、追求してこないのはわかっている。現に今も、それ以上深くは聞いてこなかった。
それが少しだけ寂しいだなんて。どうしてそんなことを思うんだろうか。
「・・・聞きたいことがあるんだけど、いいかい?」
「なんでしょう?」
「君は、エミリオ殿下をどう思ってる?」
「エミリオ様、ですか?」
きょとんとした様子から、よほど意外な質問だったのがわかる。自分で聞いていてなんだが、私もなんでこんなことを聞いているのかわからない。否、リンラたちに詰め寄られた影響はあるだろう。
それでも、自分が口にした質問に驚いた。驚いて、言い訳を考えている間に、アリアはうーんと少しだけ唸ってから、
「仲良くしてくれるクラスメイト、でしょうか」
「・・・それだけ?」
驚こうほどシンプルな回答に、思わずそんなことを口にしていた。だけど、アリアはきょとんと目を丸くして、
「? それ以外に何か?」
「いや、なんでもない」
仲のいいクラスメイト。言葉通り、本当にそうとしか思っていないのだろう。アリアは全身でそういっている。そう、か。そうか・・・・・・うん。
「・・・じゃあ、私のことはどう思う?」
次いで口にしたのは、自分についての質問だ。興味本位で口にした言葉に、アリアは先ほどよりも長い時間考え込んだ。
「んー・・・・・・兄様のお友達、でしょうか」
「アルの?」
「はい。間違えていますか?」
間違えてはいない。間違えてはいないけど、なんだろう、この感情は。
嬉しいわけではない。悲しいわけでも、辛いわけでもない。もちろん、怒ってもいない。
ただ、アルが僕を「友人」と呼ぶように。彼女にとって真っ先に浮かぶのが「王子」ではなく、「兄の友達」というごくありきたりな評価だったことが。
強く胸に突き刺さった。




