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 殿下もオーウェン様も「初等部」としか言っていなかったけれど、兄様は「初等部の生徒会」にいるのだろう。文化祭の打ち合わせなのだから、それ以外に行く思いつく場所もない。

 数年前まで通っていた校舎を歩きながら目的地にたどり着くと、今度はなんの緊張もなく扉をノックした。



 「どなたでしょう?」



 室内から質問が返ってくる。これは予想の範囲内なので、私は素直に名を名乗った。



 「アリア・ミューラーと申します。こちらに兄のアーダルベルトはおりますか?」



 「「アリアお姉様!?」」



 私を姉様と呼ぶ声がしたと思ったら、ドタバタと中から扉が開かれる。そこから顔をのぞかせたそっくりな二人を見て、私は自然に笑っていた。



 「お久しぶりです、レンナー殿下、リンラ姫様。兄様はこちらにいますか?」



 「はい、いらっしゃってます!」



 「お姉様、どうぞ中へ!」



 この二人はマリナー殿下の弟妹、つまりはこの国の第二王子と、第一王女だ。二卵性の双子だけど、その姿はとてもよく似ていらっしゃった。

 兄様が学園に入学してから、私が入学するまでの一年間。私はこの方たちの遊び相手として、王城に呼ばれることが多かった。元々、兄様と一緒に王城に行くことはよくあったので、その縁が続いたのだろう。「姉様」と呼ばれるのは恐れ多いけれど、それだけ慕われているのだと思えば止めさせることもできなかった。


 私の手を一人ずつ引きながら、中へと通される。室内には言葉通り兄様がいて、私を見て目を丸くしていた。



 「アリア? どうしたんだい?」



 「殿下から兄様に言伝を預かってきました。追加の確認事項とのことです」



 「それはありがとう。でもどうしてアリアが?」



 心から不思議そうな兄様に、私は恐る恐る本当のことを告げる。



 「最近、兄様たちが忙しそうなので、お手伝いできればと思って・・・ご迷惑でしたか?」



 「ううん。そんなことないよ。ありがとう」



 兄様に手紙を渡して、お礼を言われればミッションコンプリートだ。久しぶりに兄様と言葉を交わせただけで、私はもう大満足。兄様も怒っていないようだし、来てよかった。



 「お姉様、ご用事は終わりですか?」



 「私たちと遊んでいただけますか?」



 兄様と私の会話が一段楽したのを見計らって、殿下たちが私の服をくいくいと引っ張る。う、可愛い。弟妹がいない私にとって、自分を「姉様」と慕ってくれる彼らは本当に可愛い存在だ。懐かれているのは、純粋に嬉しかった。

 とはいえ、今は彼らも生徒会の仕事中のはず。遊ぼうというお誘いには素直に頷けなくて、なんと答えようか迷っていると、



 「こーら。先輩たちは遊びにきたわけじゃないだろう。無理言うんじゃない」



 「でも・・・」



 同じ生徒会の子だろうか。二人と視線を合わせて咎める様子に、仲のいい子なんだろう、と微笑ましくなる。でも、二人は不服そうに顔を見合わせていて、私は苦笑するしかできなかった。

 だが、それも一瞬の間のこと。レンナー殿下がぽんと手を打って、私を見上げた。



 「そうだ、お姉様。舞踏会では、僕とも踊ってください。それなら、今遊んでもらうのは諦めます」



 「え、ずるい! お姉様、私とも踊ってください!」



 「えーっと・・・」



 慕われているとはいえ、相手はこの国の第二王子。気軽に頷いていいのかどうかがわからない。

 助けを求めるように兄様を見れば、兄様も苦笑している。



 「いいんじゃない? 流石に女性二人で躍らせるわけにはいかないので、姫様は僕と踊りましょう。どうかそれでご勘弁を」



 「・・・・・・仕方ありませんわ」



 ・・・・・・え、兄様と踊るの? え? え?



 「アリアも。そんな顔しなくても、一緒に踊ろうね」



 「! はい!!」



 どんな顔をしていたんだろう。わからないけど、兄様と踊れるならなんでもいい。やったー! ありがとう、姫様!!

 思わぬ収穫を得て、私は最高潮に機嫌がよかった。にこにこと上機嫌にソファに座って兄様の用事が終わるのを待ち、生徒会室ではなくそのまま家に帰る。兄様と! 一緒に! 帰宅!!

 今日は久しぶりに幸せな一日だった!!







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