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始まりの国Ⅰ

 緑一面の永遠に続く草原。

 そこに涼しく、心地よい風が草たちを揺らしている。

 それはまるで喜んで踊っているようにも見えた。


 そんな中を青年が1人。少女が1人歩いていた。


 「やっと門が見えてきた。今回の国までは長かったね」

 「ん。疲れた」


 日の光を浴びて輝く白髪を靡かせている。この者は青年の1人、ヒロ。

 体系はバランスよく全身に筋肉がついており、整った身体。顔はイケメンと普通の中間といったところ。どっちかと聞かれれば、イケメンよりだ。服装はモスグリーンの長ズボンに、青のコートを羽織っている。


 少女はミリ。

 ヒロと同じ白髪の持ち主。ミリの場合は長髪で、輝きが一層華やかになる。服装は真っ白のワンピースに、青のコートを羽織っている。雪のように白い肌に、深い蒼色の眼。ぷっくり潤っている唇に、整っている眉。少女だというのに、大人っぽさがあり美しくもあり、綺麗だ。


 2人は草を掻き分けながら、目的地である国の目の前まで歩き進んだ。

 国境に沿ってそびえ立つ壁は石レンガで出来ており、門は金属製。長い棒を持った退屈そうに座ってる男性門番、ヒロは声を掛ける。


 「すみません。入国の者なんですけど」

 「…………ああ! 旅人さんですか!? そうですよね! 旅人さんですよね!? あぁ何ヶ月ぶりだろう!

滞在期間は何日ですか? お名前は?」


 門番が急に喜び、早口でヒロに詰め寄ってくる。だが、同様する事は無い。旅をしていれば偶に起きることなので、彼は慣れていた。


 「滞在期間は3日間。名前はヒロとミリで」

 「了解しました。では良い時間をお過ごしください」


 重たく響く金属音と同時に扉が開く。そこで待っていたのは建物でもなく。人でもなく。動物でもなく。植物でもなく。

 拍手だった。


 『パチパチパチパチパチパチ!』

 「旅人さんだ! 旅人さんだぞ! 皆盛大にお迎えだ!」

 「旅人さん! 雑貨屋寄って行かない? 今なら安くするよ!」

 「今宿を探してない? 国内でも評価高いよ? どう? 今なら安くするよ!」


 拍手の次は国民が自分たちの店への鬼のような勧誘が待っていた。雑貨屋、宿、衣服、食べ物、食べ物、食べ物、宿、と大体が露店の食べ物紹介だった。


 「どうする? 先に特産品でも食べておく?」

 「ダメ。宿が先」

 「分かった」


 「すみません。先程宿の事を聞いた人は誰ですか? その人の所に泊まりたいんですけど」

 「はいはーい! 私だよ! 2名様で良いんだよね! 早速案内するよ!」


 出てきたのはヒロと同い年ぐらいの女性。後ろに一つ結びで、胸が大きい。威勢も良く、明るい性格で宿の看板娘だ。ヒロは独身で彼女は居ないが、特に異性には興味が無い。これは前職の影響でもあるが、単にまだ好きな人が出来たことがないだけなのかもしれない。


 「お母さんー! 珍しい旅人さんを連れてきたよ!」

 「ん? 変人でも連れてきたかね」

 「違うよー! 旅人さんだよ! この国初めての旅人さんだよ!」

 「まあ! これはこれは旅人さん! 何泊します? サービスするよ!」


 2泊する事を伝え、書類にサインをした。

 早速部屋でゆっくりするところだが、どうにもそういう訳にはいかなかった。


 「すみません。この国初めての旅人さんとはどういう意味ですか? 門番の反応からして数ヶ月前には来た様に感じましたけど」


 その言葉を待っていました! と言ってそうな嬉しい表情で居る2人。

 

 「それでは、私達の国の話しをしましょう」


 数年前。

 国は豊かでした。王は国民に耳を傾けしっかりと意見を聞いた。その結果、国民1人1人食料や住居に困る事が無かった。まさしく真の平和とも言えた。

 だが、これも過去の話。その年に王は病気で亡くなった。

 王の座を引き継いだ息子は、政治などさっぱり理解出来ない人でした。その為、自分の欲を満たす為に権力と名の絶対なる力を振りかざし、国民からの不満の声は次第に大きくなっていきました。


 そして、ある日。苛立ちに痺れを切らした国民の1人が王に歯向かいました。

 その国民の行動に対して、王は激しく激怒しました。

 兵士に捕らえさせ、拘束し、王直々に裁きの鉄鎚を下しました。首から上は重力に沿って落ちた。数箇所の刺し傷からは生暖かい赤黒い液体が流れ出した。

 この事を内密に揉み消そうとしようとした王だが、その情報は1人の国民に漏れてしまった。情報は瞬く間に国土全体に広まり、伝わりました。勇敢なる同族の1人が亡くなった事を知って、とある作戦を考えました。


 『国王抹殺作戦』

 国民全員で賛成で作戦は実行準備に取り掛かりました。

 1人の民は包丁で。

 1人の民は鍬で。

 1人の民は斧で。

 1人の民は猟銃で。


 国民(子供以外)は皆武器を構え、作戦は準備段階から、実行段階へ進んでいく。

 意見を全く聞くことがない王は、その事を知るはずも無い。永遠に。

 その日の夜。作戦は実行された。

 

 漆黒の空に金色に輝く月が丁度満月の日だった。気温が低く、空気が澄んで見渡しは良かった。兵士も、王も眠りについているので、この時間帯の警備は手薄。殺すには最高の環境だ。


 まず先行部隊が城に入り、兵士を始末する。王はよっぽどの音が無い限り起きない事は既に調べられていた。次に総動員で王の寝床までゆっくり近づいていき、体付きが良い男性が起す。


 「き、貴様ら! 何をするつもりだ!? 私は王だぞ!? 早くここから出て行け!」

 「出て行くのは貴方ですよ。それでは、この国から消えてもらいましょうか」

 「や、やめろぉぉぉぉぉぉ!…………………」


 男は斧を首目がけて一振りした。そう同族の殺し方と同じように。

 王は死んだ。

 だが、それだけでは怒りは収まることが無かった。


 次の日の朝。

 王は体のなのか、ただの肉の塊なのか区別出来ないほどの姿になっていた。



 「勇敢な国民ですね」

 「そうだろう? 私もあの野郎に一刺ししたのさ。あれでは治まらなかったけど、皆がやっている所を見てたら静まったよ」

 「残酷…」

 「ミリは聞かなかった方が良かったかもね」


 コクッと首を縦に振る。

 女将は自分から話しを切り上げ、ヒロに102号室の鍵を渡す。宿は1階が受付、食事所。2階、3階が部屋となっている。

 部屋は2人では申し分ない程の広さで、ベッドは清潔感あり、ふかふかだ。

 2人は荷物を置いた後に、シャワーを浴びる事にした。汗や汚れが付いている状態で街中を歩き回りたくないからだ。ヒロはロリコンではないので、一緒に居て問題ない。


 「結構汚れ凄いな。何度か魔法で落としていたけど、じっくりシャワーを使ったほうが効果あるな。ミリしっかり眼閉じておけよ。泡が眼の中に入ったら大変だからな」

 「ん」


 頭と体を隅々まで洗い流した後、ヒロは急いで洗う。前の職業で急ぐことには慣れていたので、テキパキと終わらせる。お互い水滴を布で拭き取った後、清潔な服に着替える。先程まで着ていた服は、水が張った桶に石鹸と一緒に浸けて置く。


 「さて、お楽しみの観光と行きますか!」

 「楽しみ!」

最後まで読んでくださって有難うございます!

このお話は短編を連載していく感じで投稿していきますので、よろしくお願いします!

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