表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凸凹道中記  作者: AIAMAAI
4/9

教授室

 教授室に入るなり、昊星はデスクの椅子に尻を載せて浅く腰掛けて、サンダルを脱いで、靴下を履き、スニーカーに履き替えた。

 柊は窓辺に行って、空気の入れ替えをしようと、閉め切った窓を開けた。途端に、熱風が一気に吹き込んできて、一瞬、顔を潜めたが開放したままにしておいた。

「午後の授業は?」

「なし」

 持ち手付きのインサートカップホルダーにカップを入れて、それにコーヒーメーカーのサーバーからコーヒーを注ぎ入れながら、柊が訊いた。

「スケジュールは?」

「別に何も」

 昊星が、パソコンを操作しながら答えた。

 柊は、二つのカップに砂糖とミルクを入れて、掻き混ぜた。一つを昊星のデスクに置いて、一つを持ったまま応接用のソファに座った。

 ホッとコーヒーに熱風、柊の額に汗が滲んできた。アイスの方が良かったかなと思ったが、これもありなんと言い聞かせて我慢してコーヒーを飲んだ。

 一方の昊星は、コーヒーを口にしようとはしていなかった。

「飲まないのか?俺が折角入れてやったのに」

 文句言いたげに柊が言うと、

「冷やせば、アイスコーヒーになる」

 昊星が、シャアシャアと言った。

 いきなり、ノックも無しにドアが開いた。

「何だお前らッ。ノックも無しにいきなりッ」

 柊が、声を荒げて怒鳴るように言うと

「ノックしなきゃならないような」

「不味いことでも?」

と言って、芥川と内海と鳥井と勢登が、からかうように笑いながら、これまた挨拶も無しに厚かましく無遠慮に入室してきた。

「舐めてんのか!」

柊が憤慨し、いきり立った。

「謝罪に来たのか?」

「謝罪?」

柊が聞き返すと、昊星が貼紙を掲げて見せた。

「お前らだったのか!」

「ただの悪戯ですよ」

「ただの悪戯だと!」

「はい、ただの悪戯です」

「ただの悪戯で済む問題か!」

と芥川の胸倉を掴んで、柊がまたも叫ぶように怒鳴った。

「ところで、あんた、誰?」

芥川が、何も気にする様子もなく逆に質問してきた。

「俺か?……俺はな。聞いて驚くな」

と、芥川の顔に顔を寄せて

「湾岸署の刑事だ」

「……」

四人は驚く風もなく黙り込んだ。と思いきや、

「刑事と言うよりは遊び人」

「遊び人と言うよりは詐欺師」

「逮捕すると言うよりはされる方」

とからかうように言って、芥川と内海と鳥井と勢登が、腹を抱えてゲラゲラと柊をあざけるように笑った。

「お前ら!!」

 柊が、またも怒鳴り捲ったが、四人は気にもかけずに柊をからかっていた。

 すると、突然、昊星が、徐にスーッと椅子から立ち上がって

「君、そこのカップホルダーを僕の顔の辺りの高さに投げてくれないか」

「え?」

昊星が言って、柊が振り返った。

「カップホルダーを僕の方に」

「投げて、何をするんだ?」

「いいから、早く」

「ああ」

 指示されるがままに柊は、コーヒーメーカーの置かれたテーブルに駆け寄って、インサートカップホルダーを手に取り

「いくぞ!」

と叫んで、昊星の顔の辺りにカップホルダーを放り投げた。

 昊星が足を高く挙げて、飛んできたカップホルダーを蹴った。

 インサートカップホルダーは弧を描くように飛んでいって、芥川の額を直撃した。

「次」

と言われて、柊がカップホルダーを投げ、昊星がそれを足で蹴った。

 ホルダーは、内海の額に当たった。

「次、次」

昊星が言い、柊がカップホルダーを投げ、昊星が足で蹴った。

カップホルダーは、鳥井と勢登の額を直撃した。

 そして、間髪入れずに、昊星が後回し蹴りをして、その足を棒立ちになっている四人の目前で寸止めにした。

 その瞬間、持っていたカップホルダーが、柊の手から離れて床に落ち、コロコロと転がっていった。

「午後の授業は?」

と昊星が尋ねると、四人は、茫然としたまま首を横に振った。

「気をつけて、帰るんだぞ」

と昊星が言うと、芥川と内海と鳥井と勢登は首を縦に振って、這う這うの体で教授室から逃げ出していった。

「お前、すげぇな。やるもんだな」

「これで、当分は、悪戯はしないだろう」

と言いながら、昊星は、床に転がった五個のカップホルダーを拾い集めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ