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凸凹道中記  作者: AIAMAAI
3/9

廊下での会話

 教室から出てきた昊星は、柊のことなど関知するすることもなく、スタスタと歩いて行った。

 置いてきぼりにされた柊は、慌てたように教室から飛び出してきて、昊星を追った。

「おい!待てよ!」

 昊星は、それでも歩みを緩めようともせずに、廊下を前進していった。

「冷たい奴だな」

 柊は、そうぼやきながら追っかけて、昊星の横に並んだ。

「お前さ、何とも感じねえのか?」

「何を?」

「何をって、貼紙だよッ。背中に張られた貼紙ッ」

 柊が、貼紙を差し出した。

「背中にこんな物が貼られてたのか」

 昊星が、それを受け取って言った。

「気付かなかったのか?」

「うん。学生達が笑っているのは気付いていたが。いつものことだと思って」

「お前の鈍さにも困ったもんだが、笑う学生はいても、それを教える学生が一人もいないってのも困ったもんだな」

 柊が、嘆かわしそうに首を横に振りながら言った。

 昊星は、へのへのもへじの似顔絵を他人事のように眺めていた。

「絵心のない奴が描くと、そうなるんだよな。描くならもっと上手く描けってんだ」

と、柊が憤慨したように言うと

「それはそれで嫌なもんだぜ。僕だとすぐにわかるからな」

と、昊星はニガ笑いした。

「お前知ってるのか?誰がこんな悪さをしたのか」

「うん」

「知ってて相手には何も言わずか」

「ただの悪戯に目くじらたてることないさ」

「俺だったら」

と、シャドーボクシングをするようにパンチを繰りだして

「アッパー!」

と、下から突き上げるようにパンチを打つ。

「天才数学者のお前には無理だろうがな。俺のように相手を負かすなんて芸当は。でもよ、やる時はやった方がいいぜ。これから先もずっと、舐められっぱなしになるからよ」

「今に始まったことじゃないから」

「今にって……。度々こんな事を?」

「君が中学生の時、僕は高校生だった」

「ええッ!?」

と、驚愕する柊。

「いわゆる、飛び級さ」

「じゃ、なにか。俺が高校生の時は」

「大学生」

「俺が大学生の時は」

「大学院生で、君が大学を卒業する頃には、教授になってた」

 口をあんぶりと開けたまま茫然と昊星を見つめている、柊。

「僕の周りは常に年上ばかりだった。そのせいで、いろいろとな」

「意地悪されたってわけだ」

「うん。……怒りをぶつけても、相手にはされず。下手をすれば、よってたかって、倍返し」

「酷いもんだな」

「だから、感じないというよりは、感じないようにしたんだ。その方が楽だったからな」

「ま、わからないわけでもないがな」

「君も?」

「似たようなもんさ」

「そうか……」

「お前さ、友達いんのか?」

「……」

 口籠って何も答えない昊星であった。

「俺がなってやるぜ」

「君が?」

「不満なのか?」

「考えとく」

「ってなお前!」

 昊星は、部屋の扉を開けて、中に入った。

 扉には、『教授室・源氏昊星』と書かれたプレートが貼られてあった。

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