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第5話 やるべきか、やらざるべきか

遅くなりました、3日目です。

喜んでいただけてますかね?

「なるほど魔王が復活したかどうかはっきりしない、その目的も分からない、か」


「いえ、魔王が復活したのは確かです……証拠はありませんが」


 俺が呆れて言うと、フェイリア王女が喰い気味に答えた。


「王女はの、真実を知る力をお持ちなのじゃ。夢で魔王の復活をお知りになられた。それを受け儂が言い伝えに従い召喚の儀を行った、という訳じゃ」


 見かけは幼女の魔術師クレハが説明する。

 なるほど、そういう不思議な力を持った人は他の世界にもいた。


「もし魔王を倒す為に力をお貸しいただけるなら、わたくしがファルジス王国の王女として十分な褒賞と地位をお約束いたします。それでは理由にはなりませんか?」


 王女はまっすぐに俺の目を見つめ、そう言った。

 その表情からは強い思いが伝わってくる。

 でも残念だが富も地位も名誉も、そんなものには飽き飽きしてるんだよ。


「そう言われても俺はただのしがない冒険者だ。そんな力も自信もない。しばらく考えさせてもらいたい。少し一人きりにしてくれないか。ほんの僅かな時間でいい」


 とりあえず今後の方針を考えるために頼むと、それはすぐに認められた。


「では部屋をご用意します。自由に歩き回ることは許可できませんがいいですか?」


「ああ、かまわない」


「申し訳ありません。ではヒロト様を隣のお部屋にご案内して」


 


 兵士の一人に案内されて隣接した部屋に入る。

 窓もなく、こじんまりしているが居心地は悪くない。

 俺を入れるためあらかじめ用意された部屋だろう。


「お出になりたい場合はお声掛けください。外におりますので」


 兵士はそう言って部屋を出て行った。

 ガチャリと鍵をかける音がする。

 これは体のいい監禁だな、別に構わないけど。


 部屋の中に怪しい仕掛けがないかチェックして、腰掛ける。

 まずはアイテムボックスの中を確認する。

 そう、チートの定番、便利なやつだ。

 生き物は入れられないが相当な量が入るし、時間の経過の影響も受けない。


 よしよし、ちゃんと元通り中身は入ってるな。

 雷神の剣や水鏡の盾、勇者の鎧に兜といった伝説級の武器や防具一式。

 さらに今まで集めたマジックアイテムの数々。

 例えば「偽りの仮面」――これは顔に着けると見た人間の意識に直接働きかけ、イメージを操ることが出来るという魔道具だ。

 王様をやっていた時には、お忍びで出かけるのによく使ったもんだ。

 他には食料品や生活用品、中には苦労して見つけた玄米も入っている。

 俺はやっぱり米が無いとしんどいんだよなあ。

 最後に金貨と宝石類もたっぷり。

 この世界の物価は知らないが、これだけあれば金で苦労することはないはずだ。


 実はこのマジックボックスの中身は2度目に世界を救った後、ひょっとすると3度目もあるかもしれないと念のために入れておいたものだ。

 いわば防災グッズみたいなものだね。

 役立たないに越したことはなかったが、いざこうなってみると有り難い。

 これさえあればどこででもやっていけるだろう。


 次に部屋の外で何が話し合われているのかを確認する。

 これもチートの能力で「遠話」と言い、離れたところにいる相手と会話したり音を聴いたり出来る能力だ。

 使用半径は約500メートルとそれほど広くないが、こういう時は役に立つ。

 おまけに魔力をほとんど使わないからバレる心配もない。

 どれどれ――。




「あの男が役に立つとは思えませぬ。王女様が頭をお下げになることはありません」


 女騎士の声だ。


「ナタリス、わたくしたちにはヒロト様のお力が必要なのです」


 これは王女様だな。


「しかしあの男、あるいはあくまで力を貸す気はないと言うやもしれませぬ。その時はどうなさいますのじゃ」


「どうしても、という事であれば……仕方がありません。ですが、何とか引き受けて頂くように誠心誠意お願いしてみるつもりです」


「王女様、その前にまずはあの男の力を試させては頂けませんか」


「どうするつもりです?」


「不意を衝いて斬りつけてみます。もちろん寸止めしますが。それなりに能力のある男であれば、何らかの形で反応するはず。それを見れば力が計れるでしょう」


「そんな、試すなど失礼ですし危険です。おやめなさいナタリス」


「いえ、やらせてください。あの男に力がなければ頼る必要はないのですから」


 ――頑固だな、あの絶壁女騎士。

 

 王女を助けてやりたい気もないではないが、やっぱり俺には無理だな。

 もう恐れられるのも、依存されるのもたくさんだ。

 一人の人間として、平々凡々と生きていきたい。

 

 普通の男として、普通よりちょっとだけ可愛い女の子と普通に恋愛して、結婚して、ささやかだけど幸せな家庭を築く。

 仕事は……そうだな、とりあえず独身の間は冒険者でもいいが、あまりやりすぎると目立っちゃうし戦いはもう飽きたから結婚してからは落ち着きたい。

 そうだ、治癒魔法が使えるんだから医者になろうか。

 田舎の村で田んぼを作って米でも育てながら、医者として人々の治療をする。

 もちろんお金は頂くけど、少額でいい。

 金には困ってないからね。

 あまり重病をバンバン治してしまうと目立っちゃうだろう。

 だから病気の重い人は断った上で夜中にこっそり内緒で治しに行ったりして。

 きっと神様の奇跡だとか言って喜ぶだろう。

 うん、人の役にも立つし、いいじゃないか。

 結局人間って平凡なのが一番の幸せなんだよな。

 勇者とか王様とかやってみてそれがよく分かった。


 そのためにはまず俺にはたいした力はないと思わせることだ。

 絶壁のナタリスが斬りつけてくるみたいだから、それに反応しないこと。

 それで誘いはきっぱり断って、城から出してもらう。

 方針を決定して、俺は扉の外に立っている兵士に声をかけた。

今日はこの1話だけ。

明日も投稿する予定です。

ブクマ欲しいな……

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