第1話 プロローグ①~最初の召喚
『格ゲースキルでVRMMO世界を無双する』を投稿中の神河乱と申します。
同時並行でもう一つ投稿してみることにしました。
稚拙ですが、喜んでいただけると嬉しいです。
……またか、またなのか。
次第に薄れていく自分の手を見ながら俺はつくづくそう思った。
勘弁してくれよ、これじゃ何度やってもきりがない――。
俺の名は竹村弘人。
年齢は32歳、職業は――勇者だ。
15年前、普通の17歳の高校生だった俺は、ある日突然異世界に飛ばされた。
ファンタジー系異世界召喚、チート能力、勇者の称号。
なんで俺が選ばれたのかは今でも良く分からない。
とにかく普通の高校生だった俺には、勇者としての適性があったんだそうだ。
ファンタジー小説ばかり読み漁り、MMOにどっぷりはまっていた俺は興奮した。
元の世界で両親を事故で亡くしていた俺は施設で育ち天涯孤独。
リアルでは親友と呼べる奴もいない、恋人も当然いなかった。
だから元の世界には未練も無く、新しい世界にすぐ慣れることが出来た。
与えられたチート能力を更に鍛え、勇者と呼ばれるに相応しい実力を身に付けた。
倒すべき相手は魔物たちを使い、その国を支配せんと狙う魔王。
俺は幾多の魔物を倒し、多くの人の命を救った。
魔物の集団暴走に襲われた街を丸々助けたこともある。
途中、初めての恋もした。
俺を呼び出した国の美しく可憐な王女と熱烈な恋に落ちたんだ。
そうして召喚から約8年を経て、ようやく魔王を倒し世界を救うことができた。
……そこがピークだった。
魔王を倒してしばらくは救世主だ、さすが勇者さまだと持てはやされた。
だが平和になり時間が経つと、権力者たちは次第に俺の力を恐れるようになる。
確かに俺がその気になれば国を乗っ取ることも簡単だっただろう。
だが俺にそんな気はなかった。
家庭に飢えていた俺は、愛する姫と幸せに暮らせたらそれで良かったんだ。
だから俺は貴族の地位を返上して王女と共に田舎の小さな家に引っ越した。
畑でも耕しながらのんびり生きようと思ってね。
――でも現実はそう甘くはなかった。
国からは王女のお世話をするという名目で常に監視がついて離れない。
どれだけ俺に野心はない、ほっといてくれと頼んでも受け入れられない。
さらに権力欲の塊のようなゲスな奴らが俺を利用しようと近づいてくる。
俺がいくらそれを断っても、そういう奴らの存在が俺への警戒心を掻きたてる。
さらには外国勢力も近づいてきた。
俺を味方にして軍事的に利用しようというのだ。
魔王を倒すほどの力を持った俺は、なるほど他国から見れば軍事的に脅威だろう。
最初は多額の報酬で誘われ、それでも協力を断ると今度は刺客が送られてきた。
味方にならないなら、いっそ殺してしまえという事らしい。
それも一度や二度じゃない、しょっちゅうだ。
降りかかる火の粉を払う為とはいえ、魔物じゃない人を斬るのは辛い。
と言って素直に殺されてやる気にもなれないし。
そんな殺伐とした日々の中で、王女との仲も次第に険悪になって行った。
最初は俺がいればいい、どんな苦労も耐えて見せると言ってくれていた王女。
だがそこはやはり究極のお嬢様育ちだ。
これは口に合わない、力仕事は無理だ、もっと自由に出歩きたい。
徐々にわがままが目立つようになってきた。
そこへ父親である国王の結婚反対という手のひら返し。
俺を婿に取ると国を乗っ取られて王子に王位を譲れなくなると思ったらしい。
そんな状況の中で刺客が次々に襲ってきたもんだからもうダメだ。
いつ誰に襲われるか分からない、緊張を緩める暇もない。
王女はこんな生活には耐えられないと言い、荷物をまとめて城に帰ってしまった。
それが魔王を倒してわずか1年も経たない頃の話なんだから、もう笑うしかない。
――俺はそうして異世界で独りぼっちになった。
今日はもう1話投稿します。
興味のある方、ブクマなどよろしくお願いします。
下にリンクを貼ってますので、『格ゲースキルでVRMMO世界を無双する』の方も読んでいただけると嬉しいです。