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今後事情があって不定期にあげます
ゴブリンメイジ視点:
一体何が起きたのだろう。
何時ものように横暴な人間が私達を殺しに来たのでこの村でかなり強い上司達、凡そ300人が迎撃に赴き抵抗した。
年々人間の数、と言うよりは質が高いのがくるようになって私達この森に住むゴブリンの数は減るようになってしまった。
僕の亡き父、…いえ私の亡き父は特に変わり者のゴブリンで女を犯すな男は殺すな、害を振る舞うなら殺せと仲間のゴブリンに掟を押し付け守らせていた。
父はゴブリンの中でも最も強く仲間からも絶大な信頼を持っていたので真っ向から逆らえるものが誰一人おらず、犯した物は宣言通り死で償う熾烈な制裁を加えた。
そのお陰か、マサラ森と人間達が呼んでいるこの森のゴブリンは自分から人を襲う事はない異常な存在と認識され……
数年の間は人とエルフ族に攻められることはなかった。
そう、森で見かけてもすぐ逃げるだけで不干渉を決め込んたんだなって、仲間内で認識してしまったのが失敗だった……奴等、
奴等は密かに戦力と情報を集める為、わざと手を出さなかっただけだった──此方の油断する時間を稼ぎたかっただけだったんだ……!
奴等、彼奴らの内の女の人のエルフが侮蔑の声で矢を放ってきたのを耳にしたから間違いないんだ。
ようやく殺せる、この、汚物共めっ…!
何十本も矢を防いだ時に複数の、エルフと人族が口々に溢していたのを今も思い出してしまう──僕たちの集落はやってない!
1週間前、僕のお父さんが死んだと聞かされ一気に身体を壊し簡単に病で死んだ母様が、二人がいたならこんな状況にならなかったのに……
もうこの森のゴブリンは私達6人だけなのだろう・・・
私達を散々殺し回り捕縛された騎士がこぼした話なら本当なんだろう。
そしてその騎士を捕縛し窮地を救ってくれたのは茶色い人??だった…。
変な装備で猿みたいな身のこなし。父様が昔ばなしで語ってくれた噂のマッドゴーレムかマーダードールという上位モンスターのはぐれかと真摯に思えた。
私くらいの子供が易々二人も入りそうなデッカイ卵を背負い一人でうろついている辺りどう見ても訳ありな人……?
本当に人族かな?
兎に角状況把握しないと!
僕より上の子はもう、いない!
一族の命運をまさか生まれて4年の僕が請け負うなんて重すぎる、だけど他の子はまだ3年も生きてないんだ。
任せられる訳がない!! 自惚れじゃなく経験や知識が、低く見ている僕より更に少なすぎるんだ!!
魔人で言うならば、幼稚園児に指揮権渡すより小学上級生に渡した方がまだいいくらいなレベルだけど、やるしかないんだ!!
相手に悟られないよう慎重に事を運ばないと言葉を選んで話したのだが……
どうやら此方の意図を察しているのか力んだちからを抜いてくれるような落ち着いたトーンで話してくれ、気さくな態度で接してくれた。
本当に人族なのかな……、まさか聖人っていう誰彼構わず救いの手を差し伸べるとか言うおとぎ話の人じゃないよね?
先ずは最も知りたい話を聞けた。
後は名前とか所属先とか2番目に重要な部分を訊こうかとした矢先──悲鳴が上がった!?
見れば僕らを襲ったゲスが密林に溶け込む用な毛皮をした大狼に襲われていた。
あの人にふんじばられ身動き取れず猿轡されているからくぐもった絶叫しか聞こえなかったから気づくのが遅れてしまった。
3メートルの巨体、瞳孔が黄緑で眼球が黒ずんだ碧色。
なにか、引っ掻けるような形状をした鋭利な4本爪
僕は魔法を扱えるから感じ取れるから解る……
魔力総量700
魔法防御589
上級モンスターに足を踏み入れる程の魔力スタミナを持ち高い魔力防御を誇る存在。
このマサラ森には1つしかない。
そんな高魔力保持する種族はこの森の頂点っ!!
「グリーンウルフ、そんな・・・森の奥にしかいない高位モンスターがなんで、なんでこんな森の出入口付近に!!」
終った……
例え僕ら、僕と同じゴブリンメイジが1万いたとしても1匹すらほふれない。
もうどうでもいいか
種の存続として限界に達しているこの状況
生き残りの牝のゴブリンは二人だけな上、まだ一年も生きておらず体が弱く淘汰されるのを待つだけ。
その事を自覚していた彼女らはこんな状況で生き残ってしまった事に悲観し、そこに絶対強者が顕れたことで軽く絶望し生きる気力を折られたのか、逃げる所か動こうとすらしなかった。
僕も覚悟を決め、せめて男らしくあがき戦って死のうと顔を上げた時──
目の前に飛び込んで来たのは僕達を助けてくれた男の人だった。
背中の卵は既に置いてきたのか、まるで飛んでいる燕の如く。
素早く地を蹴り、襲いかかるグリーンウルフの顔面へと中空をかっ飛びんでいく姿が目に焼き付いてしまった。
グリーンウルフは自分の周囲に不可視の風玉を展開させ牙や爪に纏わせ真空の刃を放つ風魔法を得意とする上位モンスター
ダメだ、無策で挑んでるとしか思えない突撃に止めようか一瞬迷ったが直ぐに杞憂に終った!?
正面から飛びかかるグリーンウルフの下を掻い潜るかのようしゃがみ込む男の人。
皮帽子だろうか、鋭い斬撃が刻まれ、4爪にぱっくり割れた帽子から黒い髪がちらほら見え、振りかざしたグリーンウルフの爪が男の人すぐ後ろに深々と大地を抉った。
見えないはずなのに、なんであの人わかったんだ?!
と、驚く間もなく全身事突き上げるような拳を振り上げ──グリーンウルフの顎を打ち砕いた!!?
宙空で1回転しながら後方に飛ぶグリーンウルフ
致命傷なのか、反動を殺し切れず辛うじて着地するもたたら踏み大きくバランスを崩している。
と、いつの間にか間合いを詰めた男の人が側面から体事回すように拳を繰り出す!
こめかみ辺りに巌めいた拳がめり込み目玉が飛び出るのを最後にグリーンウルフの顔面は繰り出す拳に押し出されるよう、地面へめり込んでいったのがスローモーションで見えた。
ピーンとまるで針金を刺し込まれ骨が固定化されたかのようにグリーンウルフの前後に投げ出された格好の脚が伸び──すぐにだらりと垂れ下がっていった。
速っ!?え、うそ、た・・お・・・した!?
目の前の現実に受け入れる事が出来ず茫然自失に見ている僕達。
ハッと僕が先に気づき何時の間にか視界からいなくなった男の人を探す為辺りを血眼になって探したが直ぐに見つかった。
残りのグリーンウルフに対峙するよう仁王立ちし構える後ろ姿に亡くなったリーダー、父の背が重なって見えいつしか生き残りの牝のゴブリン達もその背をくぎ付けられたように見つめていた。
まるで森の端から見たことあった山脈みたいに大きく、あらゆる禍を抑え防ぐようなどっしりとした構え、言葉に出来ない気高くそびえ立つ力強さに無意識に僕達は涙が溢れ落ちていた。
何秒・・・何分・・見つめていたのだろう
複数のグリーンウルフの鋭い眼付きが和らぎふと、愉しげな眼になったように見えた矢先、呻き悶える得物(騎士)だけを口に各々加え森の奥へと次々と疾風の如く駆け抜けに去っていった。
まるで久方ぶりに出会った強敵と戯れる事が確約された子供みたいにはしゃいだ眼付き
面白い玩具が来たか。マタコンドナ
ゾッ・・と背中が凍結したように寒気が襲いそう言っているようにしか思えない眼付きで僕ら事見る数匹のグリーンウルフ。
アイツらはまた来ることを予感した僕らはまた消沈した面持ちでその場で頭を垂れ黙りを決め込んだ。
「っと卵は無事か、まあ、まずまずな状況で済んだと思うべきか」
ブスッとした面持ちで得物が獲られたような不満げな表情だったが僕らに顔を合わせると直ぐに苦笑した顔付きに戻り話しかけてくれた。
「ここがもう安全じゃない事は解った。とりあえず、だ。どっかに安全そうな場所はあるか?そこで話し合いしないとまーた余計なもんがきそうだ」
「えっと・・・ここから南に、少し森の奥へ向かいますが」
「おい、リーダーやめろよあそこは」
「そんな事言ってる場合じゃないわ!もぅ誰かがいなくなるのはたくさん!!」
「そ、そう、そうだ…よ。あそこは何かあったときの隠れ家でしょ」
「まあまあ落ち着け、俺もこいつ以外この異界だと天涯孤独なんだ。だれかれ喋る気はねえし、何より孤児をほっぽり出して出ていくのも寝覚めが悪い」
「…解りました。すみません、私達はこれから貴方にばかり頼ってしまいます」
「おう♪俺の気紛れが終わるまでだからそんな気にする程のことじゃあないぞ♪」
にかっと笑みを浮かべ僕と同じ目線になるようにしゃがんで話しかけてくれた男の人。
なんだかスゴく子供っぽいけど心がホッと落ち着けていく太陽のような笑顔の人だな‥‥
その後僕達は廃村とかした村に戻り必要な物だけを集め運ぶことにした。
その際、実が充分に実るとその重みに穂が垂れる雑草に男の人が狂喜乱舞し、腰に差している綺麗な剣みたいので一心不乱に刈り取っていく姿に僕達はドン引きするとは思いもよらなかった。
あんなの、余り美味しくなくそこら辺に年がら年中生えている在り来たりな雑草‥‥コペルなのに‥‥??
なんであの人、米だ白米だーって叫んでいるんだろう?