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異界で子育て道中  作者: ハンティングキャット
3/59

とりあえず4000字以下になるように作っていきます

 ほぅ……

同情めいた視線が一気に冷たい眼つきへ変わるのにそう時間が掛からなかった。

大方想像つくがこういう手口は…ぶちのめし灸しねえとつけあがるからな‥‥

ぼきぼきっと自然に組んだ拳の骨を鳴らし、脚で軽く立ち泳ぐよう青年へと近づいていく。


「その根拠となぜおまえが手を出す?」

「‥‥昔子供のころに大日本帝国の勇ましい風の名をもつ戦船に助けられましてね」

「その名は?」

「もうはっきりとは覚えておりませんが‥‥嵐か神風のどちらかだったかと……、おじちゃんに、ええあの時の兵隊さんに勇ましい風の名の船にと」

 その言葉を聞きそうかと…しんみり呟いた菅野は静かに苦虫をかみつぶした顔をする青年へ顔を向ける。



「確認だが、存在を燃料になったやつは?」

「想像通り輪廻の輪から外れ消滅しますね、善行悪行積んでも関係なく」

「というとこいつは何百回も同じ手口をしてきたわけって~やつだな?罪悪感の欠片も感じてねえ空気がぴんぴんする」


ご想像のとおりと仮面の男が頷いた刹那――菅野の拳が青年の頬を打抜いた!!


チョッピングライト気味に振り下ろされた拳はその彫刻のように美しい美青年の頬にめり込むにつれ‥‥菅野の顔は鬼のように怒りに満ち溢れた表情へ変貌していた。


「っぐはぁ‥‥!」

「てめぇ~佐々木や敷島、俺の死んでいった部下たちを使いやがったな!!もし俺が死んだらあいつらと、靖国で会う約束をよくもゴミ以下に扱いやがったな!!」


 あいつらの中には来世で夫婦にと先立たれた女と約束し散っていった奴もいるんだぞと憤怒に燃えた菅野の拳は冷静にかつ的確な角度と力の入れ具合で青年──異界の神の顔をぶんなぐり続けた。


神も仏も知らねえ、あいつら、俺の仲間を侮辱したやつは神ってやつも


「菅野さん、そこまで」


 ガシっと腕を掴まれ止められた菅野は怒りに満ち溢れた眼つきで仮面の男を邪魔すんなと威圧込めて睨む。

そのまま振りほどこうとしたが‥‥万力でも挟まれたかのようにぴくりとも動かせず、菅野の眼に戸惑いの色が浮き上がった。


人間ではない‥‥


本当に化けものに捕まれているかのような異常な力に少し冷静さを取り戻した菅野は大きく舌打ちしながら異界の神から離れると、力を弱めたのだろう。

仮面の男の掴んだ手を振り払うようぶっきらぼうに腕を振るうとすんなり離れていった。


「な…なぜキサマはその外道をしんじ‥る‥‥?そのおとこは」

「ああん?こいつが嘘をついてるわけねぇ、声量から察すと本当のことは言ってる様だし、何より俺の勘がそう言っている!!隠して~はいるが微かに日本人の匂いがあいつから察知できたしな、てめえこそなめた口きくんじゃねえぞこの野郎っ!!」


その言葉に大きく動揺したのだろうか‥‥?

彼から受けた拳がくっきり残る頬の鈍痛を忘れ唖然とした顔で見つめていく異界の創造神を余所にちらりと、此方を見てくる視線を菅野は感じていった。


 なんて人だ‥‥想像以上に勘が働くというよりも第六感が異常に高いのか‥‥ヒントなしでよくもまあ‥‥

波はあるが、第六感が弱い時は秀でた身体能力で補う形…でしょうかな?


そんな風に自分を観察している仮面の男の視線を横目に感じながら無視し、うつぶせに倒れたままこっちを見てくる男の胸へ手を潜り込ませ、そのまま白いローブのような上半身の衣服事胸ぐらをつかみあげる菅野


少ない力で持ち上げるコツを踏まえているらしく片手で大の男を持ち上げ、苦悶と屈辱に苛まれる眼へ向け己の憤怒の眼を合せる


「俺の仲間の未来を奪ったツケ…キッチリ、払ってもらうぞ下種野郎」


神をも畏れぬ所業に異界の創造神はぼこぼこになり歪んでしまった顔を治すことを忘れ、その表情をさらに歪めた。


 地位や名、創造と能力──創造神とこの人間(菅野)と比べればはるかに己が高いのは明白、火を見るよりもはっきりと判る、人間種如きがこの私に敵うなどありえない!

なのにこの男は‥‥対等所かどちらが上かなどまるで眼中になく、ただただ私の偉大なる計画と行為を憤り怒り狂った感情をぶつけてくる。


なんだこの人間は、咎人…私なぞ羽虫未満に扱えるほどの。尋常でないおぞましさの塊である仮面の男とは全く異質‥‥


ふと気づくとこの人間以外に映る風景が遮られ、いつしかこの男が視界から離せなくなってしまった。


私が作った世界の数多くの種族が時折この私に向かい憎悪の念を向かって飛ばしてくるが、塵芥程度。極々稀に私の前に現れこの人間と同じように怒りをぶつけてくるがゴミと判断し容易く処理してきた。つまらない種族よと、少しは楽しめるかと僅かに期待はしてきたが悉く話にならんかった。


 だがどうだ‥‥この私があの仮面の男以外に怯えている、この純粋な怒りがこの私を、神である存在を圧しているというのか??ちっぽけな人間の分際で‥‥


ありえんっと強く否定した動揺交じりの眼を菅野が逃すはずがなく異界の神のでこに頭突きかましメンチ切った顔を近づけさせる。


「二度とすんな‥‥! したらぶっ殺す、魂魄何千何万変わろうが消滅しようが俺が許さねぇ‥‥」


 たったそれだけ……

単なる恫喝に近い警告なのに他を圧倒する強い意思が溢れ満ちた言霊に気圧されたのだろう。

完全に血の気が失せ心が折れた神は完全には気が消え「わかりました」と震えた唇で難とか言葉にし全身から力が抜け落ちていった。


その言葉に二言はないなと強く意思を込めた睨みをきかせそっと離すと、異界の創造神はまるで燃え尽きた老人のようにその場にうな垂れていった。


「判ればよし、二度とすんなよ! っとそういえば俺はどうなんだ?このまま閻魔様に裁かれるのか、のっぺらぼう?」

「あー残念ですがここはあの世とこの世の境目どころか次元と次元の狭間的な場所なんです」


「つまり?」

「輪廻の輪から外れてるのでほぼ無理ですね‥‥それこそ地球側境目にあなたを連れ、そこでもう一度死んで頂かないと組み込めません」


 全く余計な事をとでも言いたげな雰囲気を出す仮面の男がうな垂れた哀れな青年へ向けると深くため息をついた。


(溜息が聞こえるがそういえばあれ、どこに空気穴あるんだ?まるで横に倒した卵みたいな形状で完全に継ぎ目がないし)


「すみませんが菅野さん。あなたはこいつの世界で暫く生活をしていただけるととてもありがたいのです‥‥私はこの下種がしでかした魂の復元に努めますので」

 さらっととんでもないことを言いのけた彼に相当驚いたのだろう、目をまん丸くする菅野と絶句し思考を真っ白にする。


「バッ、ばかな?!消滅し私の世界に溶け込み残留思念以下になった奴を…治す、だと‥‥ありえん、そんなの神の所業でも不可能なのd」

「可能だぞ?昔に比べだいぶ力が殺がれたとはいえ、まだ可能な業だし……時間は数百倍かかるがな」


今度こそ言葉を失い激しく混乱しているのか‥‥石化したように動かなくなった異界の創造神。


コイツの動揺具合からしても相当むちゃくちゃな異業が可能性ってわけかそれも比較的簡単に。

なんなんだこの仮面の男‥‥まあ、仲間が元の状態で靖国へ帰れるのなら問題はない、な。


そんな風に菅野が考えている合間、仮面の男がそっと‥‥菅野たちにも見えるよう手を伸ばし、何やら術式のようなものを中空に描き始め作業に取り掛かっていく。


片手間感覚で中空に描き固定された浮遊紋章に指をワキワキ動かしているだけの変態な動きなのに───異界の創造神には判るのかみるみる青ざめ、しまいには灰色交じりの血色顔で唇を震わせ怯え始めていく。


「ッ‥‥‥パンドラの犬(ビースト)は伊達ではなかったか」

「それはお前らが勝手につけた通り名だろ?神様ってえ奴が」


 苦笑交じりに振り返り、自ら動く気も失せた神に投げかけつつ菅野へ顔を向ける仮面の男。

腕を組み仁王立ちしたまま真直ぐ──畏怖が微塵もない態度で見届ける菅野に微かに笑ったような気がした。


「百万や五百万どころじゃないな、燃料にした数が‥‥相当な数ですべて復元するのに10何年はかかりますなこれは」

「お、おぅ…もうちっと速くなんねえのか??いつまでもここにいるのも飽きちまうぞ、俺は‥‥」

「無茶謂わんといてくらあさい、塵と化した榛名山を1から復元させるようなもんですよ、一つの魂を復元させんの?」

「なんか、おまえ動揺すると口調変わんだな‥‥変な奴だが、悪くねぇ」

さようですかとぶっきらぼうに答えつつ作業にしていない空いた手の平を上へ開かせる仮面の男。


1から錬成でもしているのか──何もない手の平から湧き上がるよう‥‥卵が湧き昇りされていく。


「デカッ?!なんだその卵、図鑑で見た事あるダチョウって奴以上のでかさじゃないか?!!」

「菅野さんが向うで生活する際にきっと役立ちますよ♪ 後は言語系統と魔力の認識化ぐらいしか今はできませんね、こいつにだいぶソース割かれておりますので」

すみませんと真摯に謝る姿に戸惑ったのか、「お、おぅ」ととりあえず返答してしまった菅野。


そんな菅野の目の前で忽然と男の手の平から卵が消失。

テレポートでもしたのか、目の前に差し迫るようその卵が唐突に出現し、咄嗟に両手で抱える様にキャッチした菅野は予想以上の重さに腰を深く落とし難とかキャッチ。


「っぶね、われたらどうすんだおい!」

「すみません、時間がないので省きます、私はこの下種を監視しながら復元作業に入ります、余り応答が出来ませんが、むこうで何かありましたなら念じてください」

ではまた会えることを楽しみにしておりますと深々とお辞儀する仮面の男に文句に一つ言い掛けた菅野へ──強烈な閃光が襲った。


まるで彼ではなく空間そのものが菅野という遺物を拒絶するかのよう、咄嗟に閉じた瞼をも透過する熾烈な閃光に包まれ、菅野は卵を抱いたまま意識を手放してしまった。

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