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異界で子育て道中  作者: ハンティングキャット
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 はぁ?!んだぁこここはどこだっ、っ?!


身体を動かそうとした菅野だったが、突然つんのめるように体が回った。

まるで重力がそこに存在しないかの如く、装備無しの生身で空から投げ出されたような感覚に背に寒気が走った菅野は反射的に手を伸ばし両足を広げバランスを取ろうとした。

 が、やはり力場が存在しないのか、それとも別の法則が働いているのか……バランスをとろうと伸ばした動きがそのまま推進力となり前方宙返りや側転みたいな態勢で体が回ってしまう。


抵抗力も反動力もない場所かと即時察した菅野は二転三転と回る身体を水平に保たせようとタイミングを計り、器用に拳を突き足蹴りを繰り出し姿勢制御に勤めていく。


 どこだここ?! 俺は紫電の戦闘機にいたはずだぞ!?

呼吸できるってぇことはここは死後の世界ってやつか、はーまさか本当にあるとはなぁ~


僅か数回の試行錯誤で無重力空間での姿勢制御方法を体得し、自由に無重力空間遊泳を行う彼。

体感時間で4,5分泳ぎながら進み集めた情報を精査する彼の顔は落ち着きを払っており、現状況を把握しながら順序立て把握していく。


 少なくともここは事後の世界に似たような場所

呼吸は可能、五感は無事だが空腹や排泄等の肉体的感覚は今のところない

ある程度法則に乗っ取った制約があるらしく、いくら浮遊し飛ぶような行為が可能であっても堀達が今どうなってるのか把握や姉さんたちに会いに等思考で浮かんだ行為は不可能。


俺以外の生存者?まあ第三者は今のところいない


一体俺はどこに行けばいいのかさっぱりわからんっとイライラし始めた矢先──ぽつんっと周囲が真っ白な空間の中でたった一つ‥‥黒いしみが前方に映った。


 ナニカ飛んできたリ近づいたらヤバいという気がしない、俺に対して悪意や害意的な感じは今のところはしないようだな?


とりあえず現状打破にはあそこに行くしかないなと結論づき、反応しないであろうギリギリのラインまで彼は迷うことなくまっすぐに飛び泳いでいった。


豆粒サイズだった黒いしみは段々と大きく見え、ぼんやりとした輪郭がはっきりし始めた頃、菅野は顔をしかめた。


 身長170程の男性らしき体格が二人、だがなんだ?片方は相手に片手で首を絞められてもがいてるが‥‥?

なんで片方は仮面をつけている?片方は青年のような顔付なのに


天性の勘というべきかそれとも野性的な反射神経なのか‥‥

まるで宇宙空間のようなエリアを手早く進められるようにと、泳ぐような体勢で前進していく菅野。

宙に浮かんだような感覚に苛まれつつもすぐに順応し、のしと呼ばれる古い水泳方法を行いながら距離置詰めていく。


まるで水を得た魚のような緩やかに進むと──

「まるで野生動物のような適応力ですね」と仮面をつけた男が菅野に顔を向け呟いたような声が耳に届いた。


「なんだお前、というよりここはどこだ??俺は343に」

「ああすみません、少し…待っててくれませんか?」

この馬鹿締めますんでと菅野の言葉を遮り、片手で掴んだ男を掴んだまま──地面に叩きつけ組み伏せた仮面の男。


 叩き付けられた青年はくぐもった苦悶の声を漏らし、ぴくぴくと小刻みに痙攣。

見た感じ……体力を使い果たしたのだろう。反撃はおろかろくに喋れなさそうな顔つきで来訪者と思わしき菅野へちらりと目線を向けるだけに留まった。


 その一瞬の表情で菅野は悟った。


此奴の眼‥‥おぞましいものにでもあったかのような、ひどく怯え切った目だ。何度も戦場で見てきた、敵味方問わず生存すらあきらめきったムカツク眼つきだ


そんな青年をまるでボロ雑巾でも扱うような乱雑に──

糞尿を見るような雰囲気を漂う仮面の男に少し寒気が走った。


 なんだ…こいつ、まるで人間をゴミみたいに扱うなんて

胸糞悪いとかっとなり突撃しそうになったが──空いた男の手が菅野の方へ伸び、制止するよう促すしぐさを見せてくる。


「お見苦しいところを見せてしまいすみません。ようやくこの馬鹿が全てを吐き終えましたのでご挨拶が遅れました。」

「そいつが何かやったのか、のっぺら野郎?」

 侮蔑含んだ問いかけを風に流し、菅野がいる方角へ体を向け深々とお辞儀する仮面の男。胡散臭い男だと値踏みし、蔑んだ目を向けるのを気にもせず言葉をつづける。


「私はジン・ジャック。故あってここに参りました」

「はん、偽名か?」「ええ偽名です」

「すんなり認める辺り、面倒な事情ってやつか?いい加減ここがどこか、さっさと吐きやがれ」

「後程説明いたします、菅野様」

 仮面の男が放った言葉にぴくりと眉を顰める菅野。


こいつ‥‥俺に関する情報は言ってないぞ?343って言っても数百機以上ある、ましてや外見じゃあ他のやつとは見分けつかない、何より装備と服にある日の丸でせいぜい日本人ってくらいしか


「菅野様がここにおられるのはこの下種、まあ神様ってやつですね」

「はぁ?おまえ、頭おかしいんじゃ…いやそうなるとこの異様な空間も微妙に説明がつく、な…妖怪ってやつの雰囲気にしちゃなんか清らか?つうのか、何より酸素が充分なのか息苦しくねえ、それに俺は日本語を話しているのに貴様はそれを理解し同じ言語で話している……その組み伏せている男の表情から察するとそいつも理解している辺り」


「ほぅ…噂以上に頭が切れそうな方ですね」

「今の俺が狂ってるだけかもな」

 おどけてみせる菅野に仮面の男は笑っているように見せる。


「んで、のっぺらが俺に何の用があるんだ」

「そう急からずに(苦笑)。ざっくり説明しますとこの下種、別世界の創造神が菅野さんの魂、貴方を燃料(生け贄)に自分の想像した星の文明環境を発展させようとしていたのを阻止した、ところですね」

一旦ここまで。次回予定は来週。

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