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サイレンススズカの復活!

一応これで完結です。短く長い間でしたがありがとうございました!

アグネスデジタルによって出られなくなったクロフネの騎手、田根豊は今度の天皇賞秋、サイレンススズカに騎乗することになった。(田根豊はこの年海外に騎乗拠点を置いていた為にクロフネ等、一部の馬しか乗れない。去年の二冠馬エアシャカールすらもこの年は田根豊ではなく海老名大吉が騎乗していた。)


そんなサイレンススズカに騎乗する田根豊はある事を宣言した。

「今回はハナに立ってスローペースで逃げ切りを狙う」

…何を言っているのかわからない。それが最初に全員が思ったことだ。スローペースでの逃げ切りは誰もが警戒する。それをわざわざ言うのはただの馬鹿である。97年の日本ダービーを逃げ切ったサニーブライアン陣営ですら「例えサイレンススズカが逃げようとしても関係なしに逃げる」と宣言していたくらいである。

しかしサイレンススズカは今、老いぼれたとは言え、かつては自慢のスピードとそれを持続させるスタミナを生かし、超がつくほどハイペースで逃げ切る…といったレーススタイルの持ち主だった。サイレンススズカが二回目に出走した天皇賞秋も田根豊は「超ハイペースで逃げるのか?」と聞かれたときに「普通のペースで逃げますよ。もっともサイレンススズカにとってですが。」と宣言しており余裕の態度を見せていた。


今回はその逆…つまり「サイレンススズカにとってのスローペース(1000m通過タイム58秒台)で逃げ切りを狙う。」と言っているのでは?と思ってしまうのは当然のことだった。


故に今度の天皇賞に出走するサイレンススズカと同じ逃げ馬、サイレントハンター陣営が注目された。その理由の一つとしてはサイレントハンターはサイレンススズカのようなハイペースについていくことは無理だがサイレントハンターとの差を見ればスローペースかハイペースかわかる。サイレントハンターとの差が小さければサイレンススズカは本当にスローペースで走っていることになり、現役最強馬テイエムオペラオーのマークを諦めて早仕掛け、いや下手したらサイレンススズカよりも前で走ることになる。

相手はかつて史上最強馬とも呼び声が高かったサイレンススズカだ。今でこそエアスマップに負けてしまうような馬だがそれでも本当にスローペースで走ってしまわれたら幻の三冠馬と言われたアグネスタキオンや去年の有馬記念時のオペラオーですらも捉えることは難しくなる。


そして時が流れ…菊花賞は夏の上がり馬マンハッタンカフェ(クロフネ、ダンツフレーム、ジャングルポケット等を前哨戦で破ったエアエミネムは3着)が勝利し、天皇賞秋当日。直線の馬場は荒れまくっており、大外以外は走り辛い状態だった。

そんな中、サイレンススズカは8番人気と評価は微妙だった。その理由は前走オールカマーで3着という微妙な順位であるのと数年振りの出走だったからだ。サイレンススズカが復活したという声もあればもう終わったという声もあり、かなり微妙な人気だった。それでも8番人気に食い込めたのはサイレンススズカがこのレースに出られたことに対する応援馬券のおかげである。


【さあ、21世紀最初の秋の古馬中距離GⅠ天皇賞秋。スタート!】

サイレンススズカの三度目の正直、天皇賞秋がスタートした。

一度目は後にフライト・タキオン兄弟の相棒になる川内を背にしたがエアグルーヴやバブルガムフェローの一騎打ちの影に隠れてしまい6着。

二度目はサイレンススズカの為のレースとまで言われ、誰もがサイレンススズカが勝つと思っていた。しかしサイレンススズカは骨折し、その期待を裏切ってしまった。

今度はそうはいかない。サイレンススズカはイレ込みもせずこれ以上ないスタートを切った。


そんな最中、一人の騎手がサイレンススズカを見ていた。錦隆一。テイエムオペラオーの主戦騎手及び騎乗騎手である。

テイエムオペラオーに騎乗している錦はまだまだ新人とも言え、ダービーや菊花賞のようにオペラオーを足を引っ張ることも多くあった。

錦ではなく岡辺や田根豊などのトップジョッキーが乗っていれば無敗で旧4歳五冠(皐月賞、東京優駿、菊花賞に加え、JC、有馬記念を加えたGⅠレース)を勝ち、その上今年になってからも無敗記録の伸ばし続けただろうとも言われている。


しかしオペラオーとて馬である。ガソリンが血の代わりに流れているような馬でもなければ、ハンガリーの英雄でもない。この年のオペラオーに衰えが見えていた。


それでもオペラオーが今年の春の天皇賞を勝てたのは錦が導いていたからだ。確かに他の騎手であれば無敗で三冠馬になるという偉業を達成させられたかもしれない。しかしこの年のオペラオーを導びても錦と同じ結果になっていただろう。それだけ錦が成長していたのだ。


そんな錦がマークしたのはサイレンススズカだった。サイレンススズカはかつての栄光に縋る馬…のようにも見えなくもなかった。しかし同じSS産駒のサイレントハンターやステイゴールドはGⅠこそ勝っていないが重賞を勝ち、GⅠの舞台でも長く活躍し続けていた。サイレンススズカもその例に漏れないのでは? と考えていた。


しかしオペラオーは去年、8戦8勝、年間無敗のグランドスラムを達成した馬であり現役最強馬でもある為に逆に周りからマークされてしまう。その上サイレンススズカの脚質は大逃げでありオペラオーは逃げ・先行よりも差し・追い込みよりの脚質である。故にサイレンススズカをマークしようにも出来なかった。


そんな中、(アグネス)デジタルは最後方でオペラオーをマークしていたがメイショウトドウ等の他の馬のように徹底的にマークしていたわけでない。サイレンススズカの様子を見ながらオペラオーをマークしていたのだ。

もしサイレンススズカが本当にスローペースで逃げていたとしたならオペラオーに瞬発力で勝負するしかない。しかしオペラオーの瞬発力は半端なものではない。皐月賞と有馬記念。どちらも中山競馬場ではあるがオペラオーはその舞台で不利なはずの追い込み(事実、後の三冠馬ディープインパクトも追い込み馬だった為に中山を苦手としていた)で差し切って勝利している。

そんな馬に馬鹿正直に瞬発力勝負を仕掛けても勝てる訳がない。


ではどうするか? 答えは単純に馬鹿正直に勝負しなければいい。デジタルの調教師である臼井氏が騎手に向けた言葉は「君は客の方に向かって走ればいい」というものだった。


【直線に入ってサイレンススズカが未だ先頭だ!】

湧き上がる大歓声を浴び、サイレンススズカは一息つく。すると全頭がサイレンススズカを襲うかの如く流れ込んできた。

【メイショウトドウ、ステイゴールドが二番手にやってきた。しかし後ろから物凄い勢いで世紀末覇王が来たーっ!!】

観客は栗毛の世紀末覇王を見て大歓声を浴びさせた。

【だかしかし! サイレンススズカも粘る粘る! 3馬身のリードを守れるか!?】

しかしオペラオーはサイレンススズカに何故か届かない。あと少しというところで伸びが足らない。普段であればオペラオーはサイレンススズカを差し切っていた。しかしこの時ばかりは違かった。何故ならいつもの天皇賞秋は良馬場であり瞬発力を発揮するが、今回のこのレースは重馬場だ。それ故に瞬発力は落ちてしまう。それを言ったらサイレンススズカも同じだがサイレンススズカは一息どころか二息も付いていたのだ。


少し話は変わるが横澤典義という騎手がいる。その人物は追い込みは苦手(下手したら中堅ジョッキークラス)であったものの逃げ・先行に関しては世界でも敵うものはそうはいない。その横澤に田根豊が教わったのは何も直線でヨーイドンの競馬が全てではない。ということだ。

特にそれを実感させられたのは98年の菊花賞。2番人気のセイウンスカイに騎乗した横澤は最初1000mの通過タイム1分を切りそうな勢いで超ハイペースで大逃げし、その後悠々と逃げて2000mの通過タイムが2分3秒という超スローペースに引き下げた。それに気づかない田根豊達ジョッキーはハイペースであることを警戒してセイウンスカイにまんまと逃げ切られた。つまりレースを支配してしまえば実力が多少劣っていても勝てるのだ。


それを教わった田根豊は今回のレースに活かし、サイレンススズカに一息も二息もつかせることが出来た。


しかしそんな田根豊に絶望の馬がやってきた。


【大外からアグネスデジタルもやってきたーっ!!】

外国産馬アグネスデジタルだ。デジタルは敢えて大外に回ることで荒れている馬場を避けていた。その結果瞬発力も冴え、テイエムオペラオーすらも抜き去ってしまった。


「行けーっ!! スズカ! 後少しだ!!」

それは田根豊が発したのか、あるいはサイレンススズカの調教師である橋元氏なのか、または観客の誰かなのか…誰かわからない。しかしその言葉がサイレンススズカ達に力をくれた。

【サイレンススズカ逃げ切った!二着にはアグネスデジタル、三着にテイエムオペラオー、四着争いは微妙です…】


結果はサイレンススズカの逃げ切り。3年ぶりに出走した天皇賞秋の舞台で見事優勝した。

サイレンススズカが逃げ切ったことによってインターネットではアグネスデジタルは天皇賞秋に出走させたことに対する賛否両論の議論が交わされることになり、テイエムオペラオーは衰えが来ていたと囁かれるようになった。


その後サイレンススズカは香港国際レースに招待されるが屈腱炎により辞退して種牡馬入りするとすぐさま結果を出して2009年にはリーディングサイアーとなり、ディープインパクトやキングカメハメハ等とリーディング争いを繰り広げることになる。

追記


解説

ガソリンが血の代わりに流れている馬

元ネタ みどりのマキバオー

神の馬ことラムタラがモデルの競走馬ラスボスに対してとある登場人物が吐いたセリフ。要するに反則なまでに強い馬を指す。ちなみにニコニコ大百科では米国史上最強馬セクレタリアトのことを指している。


ハンガリーの英雄

キンチェム(1874-1887)のこと

54戦54勝と無敗馬としては世界最多勝利数を挙げた伝説の名馬。ちなみに古馬になる前に27戦もしており5歳で引退した三冠馬オルフェーヴルが21戦、タフネスが売りのタケシバオーが29戦、それを超えるタフネスさを持つスピードシンボリですら引退時点で41戦しかしていないことを考えるとかなり多く、ハードなローテーションであることが伺える。しかもそれを全て勝ってしまうあたり怪物染みているといえる。

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