私だけの最愛
新田葉月ちゃん企画【君に捧ぐ愛の檻企画】参加作品です。
私たち兄妹はもともと、私を含む男3人、女5人の8人兄妹であったが今は妹1人の4人兄妹しかいない。
寿命や病気というわけで死んだのではなかった。そもそも我々ハイエルフ族は光と生命の精霊神ノヴァの加護により寿命というものが存在せず、病気に対しての抵抗力もかなり高い。
ではリザ以外の妹たちが居ない理由はと聞かれればそれは――――殺されてしまったのだ、実の父親に。生け贄として。
リザも対象ではあったらしいが偶然にも他の妹達が眠って居るときに私の部屋を訪れていたためかろうじて難を逃れたのだ。
ハイエルフ族は他の種族に比べて異様に出生率が低い。その理由は未だに判明していないが寿命が無く成人後は不老不死という辺りが関係しているのかもしれない。それはともかく、私たちハイエルフ族には近親婚に関するタブーは存在しない。種族を絶やさぬ為には遥か昔からなりふり構って居られなかったのだろうし、ノヴァ神の加護により他の種族、特に人間族などが近親婚した場合に稀に生まれる奇形児はハイエルフ族には無縁だった事も理由の一つになるのだろう。
つまり何が言いたいのかと言えば私は妹のリザを愛している。他の妹達が亡くなった次の日以降、サーレント兄さまと慕ってくれる最愛のリザを心底愛しているいるのだ。
シスコンなどではなく、一人の女性として愛しているのだ。命を狙われ怯えたあの晩から私は彼女を守り、慰め、そして笑顔を取り戻した。
私が彼女を愛しているのと同じように彼女にも私を愛してほしい。そして恐らく彼女は私を愛してくれている。それが兄として愛しているのかそれとも一人の男性として愛しているのかは分からない。
分からないが彼女は今のところ私だけを見てくれている。だから私は帝国を解体するときに彼女を失わない為のあらゆる手段を考えた。
彼女が私の想いに気が付いているのかどうかは依然として分からない。だけれどもだからと言って手をこまねいて彼女に他の男を接触させるわけにはいかないのだ。彼女の側にいる男は私だけで充分なのだから。
だから私はなかなか私の想いに気付いてくれない鈍感な彼女の為に、私の思惑が気付かれないような広大な檻――つまりエルフ族以外が足を踏み入れられない、迷いの大森林――を用意して、彼女にシェルファの女王となるようお願いをした。彼女は私の思惑には気付く様子もなく笑顔で引き受けてくれた。
これだけでは安心出来ないから迷いの大森林にある光と生命の精霊神ノヴァの大神殿に宮殿を隣接させ、彼女に大神殿長も兼任させた上で大神殿と宮殿を内宮として身内以外の男子禁制とし、彼女に私以外の男性が近づき難いようにして檻を完成させた。
私は恐らく病んでいるのだろう。第三者から見れば恋愛の機会を奪われた彼女を可哀想だというのだろうが、彼女が私以外の男と楽しげに話している光景は想像すらしたくない。私だけをどちらかが大地に還り眠りにつくまで見つめてほしいのだ。私が彼女だけを見つめているように。
そしてもし彼女が私以外の男の匂いを漂わせた時――私は正気を保っていられるのだろうか。
…………いや、違うな。私はあの日すでに捨てていたはずだ。最愛を手に入れる為なら何でもすると。
そう――――私だけの最愛を手に入れる為に必要ならば世界でさえも敵に回そう。お前が目にした男を皆殺しにしてでも手に入れてやる。
だから、リザ。
私だけの妹、私の最愛。
私だけを見ていて欲しい。私だけを愛して欲しい。
私だけがお前を愛するにふさわしいのだから。