Chapter.0 プロローグ
とりあえずプロローグ。なろうテンプレというものの一つ、VRMMOものを書いてみようと思い、書き始めました。
この段階では全く何のことやらかとは思いますが、何せまだ本編ではないので。全然これからです。
ですが、なろうテンプレだからといってパクリではありません。ネタのストックだけは多いので、出来るだけ新しい要素を取り入れていきたいと思います。
後、ハーレムになる予定はありません。ハーレム系を期待している人はすいません。
それでは、まだプロローグですが、これからよろしくお願いします。
2025年。減速することなく成長し続けた技術は、次のステップへ踏み出した。
完全なる《仮想世界》の実現。
《仮想世界》、または《VR》というのは随分と前から存在し、色々なところで活用されてきた。視覚、聴覚などの様々な感覚にアクセスしてきた。だが、全感覚を送り込む――つまり、《仮想世界》をさも現実かのように見せることには成功していなかったのだ。
そこで、人類は完全な《仮想世界》を渇望した。これは至極当然のことだっただろう。人類は昔から《仮想世界》に入ることを夢見、それを小説や映画などにしてフィクション作品としてきたのだ。インターネット内のオンライン小説にもそう言った作品は多く、逆にその極端なテンプレート性に飽き飽きさせられる程だった。
そして、研究者達は日々研究を重ね、ついに去年、2030年に完全なる《仮想世界》の実現に成功したのだ。研究者達はその世界を、従来の《仮想世界》と区別する為、《AVR》と名付けた。そしてそれらは日に日に新しい躍進振りを見せ、とにかく沢山の用途に使用されたのだ。
――そして、《AVR》の完成から約一年。ついにゲーム業界に進出した。
ハード名は《ViasB》。通称《ヴァイスB》だ。形状は丸いヘルメットのような形で、重量感のある見た目や色をしている。値段は《VR技術》がかなり普及したこともあってかお求めやすい価格というのになってはいるが、それでも高い。三万円くらいだったはずだ。
それでも人々はそれを待望している。今か今かと発売を楽しみに待っているのだ。何故なら、ゲーマーにとって、《仮想世界》の中に行けるというのは夢のような出来事だからだ。何せ自分の手で剣を取って戦ったり、魔法を放てたりするのだ。それはゲーマーのみならず全人類の夢かも知れない。誰しもが子供の頃にごっこ遊びなどをして、その中でそれっぽい技名を叫んだりしたはずだ。それが疑似的にも現実のものになるというのは嬉しいことこの上ない。
「ふーん……」
そして、明日、2031年6月21日は記念すべき《VRゲーム》――つまり、《仮想世界》の中で従来のオンラインゲームのように協力しながらプレイできるゲーム――の一作目の発売日である。
《ディヴィア》というそこまで有名ではない会社からのソフト。名前は《ブリッジドラゴン ver.バーチャル》。略称は《BDV》である。この会社が唯一大ヒットを果たしたソフトだった。元は携帯ゲーム機のソフトだったはずだが、どうやらオンラインゲーム界に進出したらしい。今はそのゲームの公式サイトを見ていて、目の前のモニターにはそう書かれていた。
ゲームの概要には竜を使役させて戦うRPGと書かれてある。特に珍しくもない、割とシンプルな設定だ。他には敵も竜ということになっているようで、どうやらこの会社は竜好きのようだ。後は何の変哲もないただのいつもの設定染みたストーリー。どんな感じなのかは恐らく考えている通りだろう。飛ばす。
次に操作方法は――。
「……まさかのない」
なかった。
操作方法といっても従来のものとは全く変わってくるだろう。フィクション作品に多かったパネルを出現させてタップするタイプなのか。装備を買うときは現金で払うのか。剣は重くて普通は触れないというが、そこのところはどうなのか。見当もつかないのであえて載せていないのかも知れない。
次にPV。映像でもざっとその作品の概要を知っておこうと思う。イヤホンを両の耳に嵌め、左に辺、右に凸部のある三角ならぬ右三角の再生ボタンを押す。勿論動画は正常に流れ始めるのだが、そこでも特に操作方法などの説明はなく殆ど壮大なCG臭い映像が流れるだけだった。
「何か適当な会社だ。こうする意図はあるのだろうか」
少々疑問は残ったが、操作方法などいずれ解るだろうと思い別のタブに移動する。目に飛び込んできたのは自分の好きなゲームの壁紙、そしてその上に自分のフォローしている人の呟きが重なる。フイッター。その日の出来事を呟いたり、公式や有名人が情報を発信したり、キチガイが燥いだりするところだ。目の前には真面目なフイートもあるが、一つ謎のアラビア文字のフイートが。見たことあるネタフイだしどうせこれもパクフイだろう。
ちなみにフイートとは呟きのこと、ネタフイとは文字通りネタの呟きであり、それを模倣する事をパクフイという。
『明日《BDV》の発売日だけど公式サイトに操作方法とかないんだけど。公式仕事しろ』
文字を打って、それを呟く。今思っていることを率直に文字にしただけの飾り気のない言葉。
すると、一人からリプライが来る。最近よく会話をする子だ。
『だよね。まあ元々マイナーな会社だし適当なのかも知れないけど、でも酷い』
フイートを確認。予想通りのリプライだ。でもここで返信したところで愚痴の堂々巡りだ。お気に入りに登録のボタンを押して一応読んだということを伝えておこう。
時計を見る。時刻は午前一時。テレビ番組風に言うと二十五時だ。そろそろ睡魔が強襲を仕掛けてくる時間だ。意識を狩られる前に逃避しておこう。熊に出くわした時にする死んだ振りのようなものだ。ちなみに死んだ振りは逆効果ので実践は推奨し兼ねる。
『離脱』
呪文のようなその二文字でネット世界から離脱する。シャットダウンボタンを押してシャットダウンされるのを待った後、ノートパソコンの上画面をバタンと閉じた。
「さあ、寝るか」
ぽつり、寂しげにその言葉は部屋から消え去る。ベッドに寝転がり、布団の中には潜らないまま暗い天井を眺めた。
「明日発売か……楽しみだな」
一年前、《AVR》の実現からこつこつ貯めてきた三万円だ。それを費やすというのだからクソゲーであってもらっては困る。どうか神ゲーでありますように。
そのまま、気が付けば眠りに落ちていた。
これが、この地獄のような物語の始まりだった。