002
「おっかいもの~おっかいもの~」
「すまないな、妹が君を連れて行きたいときかないもんでな。つい引っ張られてしまった」
「いえ、僕は構いませんよ」
僕は麻子さんと浩二さんに連れられて、池袋に来ていた。
どうやら目的は、麻子さんの買い物らしい。浩二さんはその付き添いといったところだろうか。
「そういえば浩二さん、家に帰ったんですか?」
「ん?何でだ?」
「いや、麻子さんと一緒にいるから、もしかしたら帰ったのかな?と思って」
「ああ……いや、家にはまだ帰ってないよ」
「じゃあ……」
「……実はな、必要な荷物を家に取りに帰ったら麻子に見つかってしまってな……成り行きで連れて来られてしまったんだ」
すると浩二さんは突然小声になり、僕にしか聞こえない声で話し始める。
「ああ……なるほど」
僕もそれに釣られて、思わず小声になってしまう。
「何二人でコソコソ話してるの?怪しいな」
「別になんでもないよ。それよりどこで買い物するんだよ」
「えっとね……あっ、ここがいい!」
麻子さんが指差したのは、洋服の専門店だった。人気があるのだろうか、人の入りも多い。
「人多いな……悪い、俺は外で待ってるよ」
「ええ……じゃあ喜多川さん行こっ!」
「……僕が?」
「そうだな。刹那君行ってきてくれ」
「はあ……」
「……後から埋め合せするからさ。頼むな」
「了解しました……」
浩二さんが頭を下げてきたので、僕は渋りながらも了解する。
女の子との買い物は、余り慣れていないので困るのだが……。
「決まり決まりっ!さあいこー!!」
麻子さんは僕の手を、半ば強引に引っ張って雑踏の渦巻く店の中へと進んでいく。
店の中には女性物の洋服が所狭しと並んでおり、客層はほとんどが女性で占められている。なんというか、あまり居心地は良くない。
「これもいいな……あっでもこれも温かそうでいいな……喜多川さんはどれが良いと思う?」
「そうだな……何が良いんだろ」
尋ねられても、正直あまり答えられない。僕の服に関してのセンスは最悪だ。妹の未来からもお墨付きを貰うほどに。
そんな僕が女性物の服を選ぶなど、論外である。
「そういえば喜多川さんっていつもスーツ着てるよね?何でなの?」
麻子さんは僕の姿を見て首を傾げる。
痛い所を突いてきたな。
「ああ……いや、何というか……仕事の為というか……てか今も仕事中というか……」
正直なところ、スーツ以外の服を持っていないというのが現状である。いきなりタイムスリップをしてここに来たのだから、仕方ない。
まさか数日滞在する事になるとは思ってもいなかったが。
「ううん……何だか深い事情がありそうだね。そうだ!後から喜多川さんの服も選びに行こ!それがいいよ!!」
「えっ!?いや……」
「決まりですね!よ~し、そうと決まったら早くわたしの服を選んで行きましょう!」
「う、うん……」
つれられるがまま、僕は麻子さんに手を引っ張られながら右往左往する。この時僕は、操り人形の気持ちが若干ながら分かったような気がした。