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セツナドライブ  作者: レッドキサラギ
第五話 動き出す過去
12/20

002

「おっかいもの~おっかいもの~」


「すまないな、妹が君を連れて行きたいときかないもんでな。つい引っ張られてしまった」


「いえ、僕は構いませんよ」


 僕は麻子さんと浩二さんに連れられて、池袋に来ていた。

 どうやら目的は、麻子さんの買い物らしい。浩二さんはその付き添いといったところだろうか。


「そういえば浩二さん、家に帰ったんですか?」


「ん?何でだ?」


「いや、麻子さんと一緒にいるから、もしかしたら帰ったのかな?と思って」


「ああ……いや、家にはまだ帰ってないよ」


「じゃあ……」


「……実はな、必要な荷物を家に取りに帰ったら麻子に見つかってしまってな……成り行きで連れて来られてしまったんだ」

 

 すると浩二さんは突然小声になり、僕にしか聞こえない声で話し始める。


「ああ……なるほど」


 僕もそれに釣られて、思わず小声になってしまう。


「何二人でコソコソ話してるの?怪しいな」


「別になんでもないよ。それよりどこで買い物するんだよ」


「えっとね……あっ、ここがいい!」


 麻子さんが指差したのは、洋服の専門店だった。人気があるのだろうか、人の入りも多い。


「人多いな……悪い、俺は外で待ってるよ」


「ええ……じゃあ喜多川さん行こっ!」


「……僕が?」


「そうだな。刹那君行ってきてくれ」


「はあ……」


「……後から埋め合せするからさ。頼むな」


「了解しました……」


 浩二さんが頭を下げてきたので、僕は渋りながらも了解する。

 女の子との買い物は、余り慣れていないので困るのだが……。


「決まり決まりっ!さあいこー!!」


 麻子さんは僕の手を、半ば強引に引っ張って雑踏の渦巻く店の中へと進んでいく。

 店の中には女性物の洋服が所狭しと並んでおり、客層はほとんどが女性で占められている。なんというか、あまり居心地は良くない。


「これもいいな……あっでもこれも温かそうでいいな……喜多川さんはどれが良いと思う?」


「そうだな……何が良いんだろ」


 尋ねられても、正直あまり答えられない。僕の服に関してのセンスは最悪だ。妹の未来からもお墨付きを貰うほどに。

 そんな僕が女性物の服を選ぶなど、論外である。


「そういえば喜多川さんっていつもスーツ着てるよね?何でなの?」


 麻子さんは僕の姿を見て首を傾げる。

 痛い所を突いてきたな。


「ああ……いや、何というか……仕事の為というか……てか今も仕事中というか……」


 正直なところ、スーツ以外の服を持っていないというのが現状である。いきなりタイムスリップをしてここに来たのだから、仕方ない。

 まさか数日滞在する事になるとは思ってもいなかったが。


「ううん……何だか深い事情がありそうだね。そうだ!後から喜多川さんの服も選びに行こ!それがいいよ!!」


「えっ!?いや……」


「決まりですね!よ~し、そうと決まったら早くわたしの服を選んで行きましょう!」


「う、うん……」


 つれられるがまま、僕は麻子さんに手を引っ張られながら右往左往する。この時僕は、操り人形の気持ちが若干ながら分かったような気がした。

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