昭和の自衛官の話
「私は反戦です!何故自衛隊に入ったかと言うと家が貧しいからです」
昭和に反戦を主張した自衛官がいたのだ。
1970年代に治安出動訓練を拒否した自衛官がいて懲戒免職になった。自衛隊法での煽動罪で起訴されたが、大勢の左翼系の弁護団が100人以上ついて無罪になった事件があった。
その元自衛官に感銘を受けた現役の自衛官のグループが昭和の後期から平成の初めまでいて講演を行っていた。手厚い左翼系の援護を受けていたな。
でなければ会場を借りてビラを配れないだろう。
決まって、反戦なのに何故自衛隊に入ったかというと、家が貧しいからだと理論付けがあったそうだ。
まあ、いろいろ矛盾はあった。
ビラに書かれていた反戦自衛官の経歴は32歳で陸士長だった。
職はあるだろうに。この歳まで自衛隊にいる。
皆、地元を離れて自衛隊に入隊した者がほとんどだ。
地元を離れれば職はあったが・・・
何よりも。
「「「俺たちも反戦なのに」」」
という思いがあった。
あくまでも仕事で国防を担う気持の者がほとんどだった。
戦争をしたい者もいたが、そういった者はフランス外人部隊に行ったな。
あくまでも政治とは別問題だ。
それでな。ワシは興味をもったのだ。左翼の考え方を。
当時、陸士長だったワシは赤旗新聞を取ることにした。
それはな。入隊前の説明会に、新聞は取れるのですか?との問いに。
『赤旗新聞も取れるよ』
とあったからだ。
当時の自衛隊の新聞購読事情を言うと。自衛隊内には営内班があった。5人から10人くらいで一部屋だ。営内班ごとにお金を出し合って新聞をとっていた。
もちろん個人でもとれる。
ワシの営内班は読売だったな。巨人ファンが多かったからだ。
新聞は食堂の出口に新聞屋さんがいて、そこで新聞の受け取り。販売も行っていた。
まあ、日曜版赤旗新聞を取った。月500円だ。
「うわ。何だよ。それ」
「赤旗って何だ?」
「おい、山之下。やめとけ、どうしても読みたかったら実家で取れよ」
営内の者はその程度の反応だった。
だがな。しばらくして、連隊長からお呼びがかかった。
「おい、山之下、連隊長がお呼びだぞ!」
「え、何で・・・」
連隊長とは800人くらいの長で、陸士長を呼び出すのは異例だった。
連隊長室に行ったよ。1佐だったかな。
赤旗新聞のことかと思ったが、その通りだった。
「山之下陸士長入ります」
「入れ」
「まあ、座りなさい」
「はい、失礼します」
「山之下陸士長は赤旗新聞を取っているのだって?」
「はい、そうです。考えを知りたいと思いまして、共産党には入りません」
するとな。
「君、私は入るなとは言っていない」
意外な言葉が出てきた。
「自衛官にだって思想の自由はある。君がどんな団体に入っていても私が止める事はない。課業に影響を及ばさなければな」
「はい」
「だがな。私個人の所感であるが、反戦自衛官は可哀想・・・みっともない存在でもあるな・・」
「はい・・・・」
「うむ。例えばだ。ある幹部が自衛隊に敵対する政治団体に入ったとする」
「はい」
「その組織ではチヤホヤされるだろう。しかしな。自衛隊では幹部でもその組織では序列は一番下だ。反戦自衛官で成功した者は聞かない。使い捨てにされるぞ」
「はい、共産党には入りません」
「君、私は入るなとは言っていない。入っても良いが課業に影響を及ぼすな。そこは肝に銘じてくれ」
「分かりました」
話はそれですんだ。
営内に戻るとニヤニヤして話しかけてくる先輩がいた。
「なあ、言ったろ?俺は新聞は実家で取って休日にまとめて読んでいるぜ。しかしな。赤旗滅茶苦茶だろ?お前の分の聖教新聞を取ってやろうか?世界が変わるぜ」
「先輩・・・いいです」
創価学会員だったな。自衛隊で箔をつけて本部の警備員になりたがっていた方だった。
赤旗新聞の内容・・・・独特だったな。矛盾がワシでも分かった。
DBは暴力的でイカン。
だが、戦争の描写のあるアニメは絶賛する。ほら、何だっけ?アナーキーな空を飛ぶ豚のアニメだ。
自民党の秘書はやりましたは通らないと批判するが。
赤旗の場合は〇〇一派が勝手にやったと主張する。
何の不祥事かは書いてなかった。多分ソ連関連だったかな。
だが、良い所もあった。
自衛隊批判だが・・・
〇〇駐屯地の周りでは自衛隊のトラックが我が物顔で通行しています。住民は日々怯えています。
創立以来30年間で二件の交通事故を起しました!
30年間で二件は・・・まあ、事故は良くないことだがリスクとしたら少ないのではないか?
事実を元に無理矢理こじつけている感はあったが、ねつ造はしていないと感じた。
その後な。今上陛下、昭和天皇が容態を崩されたときにヒドい蔑称で呼んでいた。〇〇天皇とな。
ああ、ここでは言えないな。読者の声の体裁を取っていたが。
それで新聞購読はやめた。
「今月でやめます」
「ええ、何で、我が党の主張が一番筋通っているのに・・・」
新聞を届けてくれた青年は気のよさそうな方だった。わざわざ一人の読者のために運んでくれていたが・・・
「お金の問題ですか?仕送りでお金が足りなくなったのですか?相談しましょう」
いや、いくら何でも500円くらいだせるわ。と思ったが・・・自衛官の実家が貧乏と反戦自衛官の話ですり込まれているのだな。
「また、縁がありましたら・・・」
とだけ言った。
その後、陸曹になって転属をして、平成の中ぐらい。連隊長の言った意味が分かった事件が起きた。
「君、今日は天気が良いね」
「は、はい・・・」
「ところで、少し話をしないか?実は日本は侵略されているのだよ」
1尉の方が昼休みに誰か構わずに話しかけていた。
後ろに若い女性がいる。保険の外交員だ。
ああ、その幹部は顕正会に入って先輩の信者から指導を受けて勧誘をしていたな。
1尉が民間の女性にペコペコしている様は何ともみっともなかった。
そしてな。ワシは班員に連隊長と同じ事を言ったのだ。
「君、顕正会の新聞とパンフレットもらったのだって?」
「はい、不気味で興味を持ちました・・・・絶対に入りません」
「君、私は入るなとは言っていないよ。本を盲信するのは本を読まないのと一緒だ」
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「でだ。昭和の自衛隊の話、どうだったかな?」
「はい、とても興味深かったです。会社にも通じますね」
俺は山田、定年退官された山之下さんからひょんな事から話を聞いた。
自衛官が貧乏の家出身か。
いろいろだろうな。
左翼にとっては好都合な物語かもしれない。貧乏な兵達が国政に不満を持ち革命を起す。
いや、2.26事件も貧乏な兵の話を直に聞いた青年将校たちが義憤にかられたのも原因の一つだったな。
現代の日本では起こりえないだろうな・・・
さて、ニュースでも見るか。
『ニュースです。〇〇議員が自衛隊は貧乏な家庭の子が入ると発言し。防衛大臣が抗議しました』
こんなニュースが流れてきた。
「令和でもかよ!」
思わずつぶやいた俺がいた。




