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グチャ!ペチャ!クチャ!

「俺は誰なんだ?」

「そもそも、俺が今まで頑張ったことは何だったんだ?」


 いつも通りの生活。いつも通りのスケジュール。いつも通りの生活パターン・・・・・・・

貧乏で頑張っても手が届かない夢もあり、他の人にとっては退屈と思われるかもしれないが、何気ない生活が心を満たしてくれて楽しかった。

だが、あの時が来るまでは・・・・・・

あの時、目にしたのは透明な液体に入った自分自身の姿だった。

一体どういうことなのか・・・・・・?

この物語は「自分探しをやめる物語」である。

-遡ること数日前-


彼の名前は『野茂 剛』。

年齢は23歳。

職業は介護ヘルパー。

野茂はいつも通り、朝食を食べ、誰もいないアパートの一室に向かって『行ってきます』と小声で言う。

「(本当だったら今頃俺は化学商品の研究職に入っていたが、全社落ちちゃったんだよな。現実は食っていくのに精一杯で甘くない。人のために働けるだけよしと考えねば・・・・・・)」

「欲張らない、欲張らない!」

そう野茂はいいながら、介護施設へ歩きながら向かうのであった。


 介護施設へ着くと、いつもお世話になっているヘルパーの同僚が出迎えてくれる。

「野茂さん、おはようございます!」

「おはようございます!」

野茂はハキハキと喋りながら挨拶を返す。

「昨晩はよく寝れましたか?」

「いやぁ・・・・・・あまりよく寝れなかったんですよね」

「やっぱり介護職ってキツイって本当ですね」

野茂はいつも通り、仕事場へ向かう


場面は代わりベッドへおじいさんを他のヘルパーと一緒に持ち上げる。

「いちっ、にのっ・・・・・・さん!」

「いつもありがとうね。野茂さん。若いのに申し訳ないね」

おじいさんは感謝の気持ちを言ったことに対し、野茂は

「いえ、高校の時に運動部だったのでそれに比べたら楽な方ですよ」

「野茂さ〜ん!早く来てください!」

野茂は大きな声で返す。

「はい!今行きます!」

野茂はおばあさんがいる隣のベッドの部屋に行く。

「どうしましたか?」

「田中さんがご飯を喉につっかえてしてしまったようで・・・・・・」

野茂は背中を思い切り叩く。

「大丈夫ですか?田中さん」

すると、田中さんがご飯を吐き出す

「田中さん、息できますか?」

「え、ええ」

「よかったです・・・・・・!」

野茂はその様子に安堵する。


-数時間後-


「お疲れ様です!野茂さん!」

同僚のヘルパーからコーヒーを渡される

「ありがとうございます」

「この職について、約半年といったところですがどうですか?」

野茂は深く考える。

「そうですね・・・・・・本当は研究職に入りたかったけど、この仕事も悪くないなと思えるようになってきました」

同僚は少し驚いた表情をする。

「そうなんですね。他の人だったら『ヘルパー何て疲れるし、下の世話もするのも、嫌だ』って言うんですけどね」

「この仕事続けて行けそうですか?」

「まあ、なんとかやれそうってところですね」


-仕事が終わった後-


仕事が終わり家に帰る途中、ホッと一息ついた瞬間、黒い覆面の姿をした何者かに口をタオルのようなもので塞がれる。

野茂は『何をするんだ』という間もなく、体中の力が入らなくなり、気絶してしまう。


 目を覚ますと、そこは警察の尋問室のような場所だった。

両腕両足には手錠が椅子に付けられており、身動きができない状態だった。

「どこだ。ここは?」

すると誰か知らない男の声がアナウンスで聞こえた。

「誰が勝手に喋っていいと言った?」

「誰だ!?」

「とりあえず、耳かっぽじってよく聞け」

「単刀直入に言う。お前は複製だ!」

野茂は理由が全く理解できなかった。

「は?何を言っているんだ」

「まあ複製が理解できないのも無理はない」

「これを見れば一目瞭然だ。おい、あれをあいつに見せろ」

するとスクリーンに突然カプセルの中に透明な液体に入った顔も形も同じ自分が入っていた姿が映し出された。

「なんだこれは?」

野茂は驚かずにはいられなかった。

「まだわからないようだな。お前は記憶をそのまま移行した状態で人工的に体を模した、いわば、『コピー人間(模造品)なのだよ」

男が言った通り、野茂はオリジナルからコピーされたコピー人間だったのだ。

「正確に言えば、人工細胞を前のオリジナルに似せる状態で型を作り、そのまま記憶を量子コンピュータによって移行コピーしたということだ」

野茂はその現実を受け入れられなかった。

「そんなバカな!人間はコピーできるほど単純じゃないだろう!?」

だが、自信を持ってこう返す。

「でも、今いるお前が証拠だろう?」

野茂はそれを言われ、混乱する。

「俺が今まで頑張ってきたこと、思ったこと、感じてきたこと全て幻だったのか?」

男は突然このように提案する

「まあ、混乱するのは勝手だが、お前は完璧な複製として臓器として売られることになる」

「そのためには、お前はもう用済みだ。死んでもらう」

すると突然扉から複数の覆面の男が入ってきて、取り囲まれる。

「何をするんだ!やめろ!死にたくない!」

すると突然カプセルのガラスがヒビが入り一気に割れる

「何!?」

覆面の男達は驚愕する。

もう一人の自分が喋り始めた。

「ここは・・・・・・どこだ?」

彼は何かを思い出したかのように、突然起き、走り出す。

「おい!奴を逃すな!」

そうアナウンスの男は叫んだ。

もう一人の自分が取り押さえられそうになった次の瞬間、蹴りや投げを繰り出し、あろうことか全員を無力化させてしまう。

すると、野茂がいる部屋へ到着する。

「お前は!?」

「そんなことはどうでもいい!さっさと逃げるぞ!」

今の状況が全く理解できないまま野茂はもう一人の自分に手を引っ張られる。

「一体何が起きているんだ?」

出口が見えたと思った瞬間、何者かに野茂のふくらはぎを銃で撃たれてしまう。

「ぐっ・・・・・・!」

野茂はあまりの痛みにもがき苦しむ。

「残念だったな・・・・・・」

「せっかく、第一号の実験台が生まれたと言うのに、やり直しじゃないか」

何と足を撃ったのはアナウンスをしていた男だった。

撃たれた傷口に銃口を押し付ける。

「ぐあああああああ・・・・・・!」

もう一人の自分は野茂に手を差し伸べる

「お前!」

すると突然、野茂の体に白い光が広がっていく。

「何だこの眩しい光は!?」

彼の姿は獣のような姿に変身し、強靭な力を手に入れた。

すると知らぬ間に彼は何処かに姿を消し、突然上から爪で体を切り裂いた。

「ぐはぁ!」

「クソがあああああ!」

男は銃を四方八方に撃ちまくるが、弾丸よりも素早いスピードで壁を走り抜けながら避ける。

「これで終わりだ!」

男に爪で深い傷を負わせて、男は絶命する。

野茂はいつもの姿に戻るが、倒れてしまう。

「お前!お前!起きろ!」

「ああ、俺は死ぬのか。結局俺は作られただけの意味のない人間だったんだな」

するとオリジナルの野茂がこう返す。

「何言ってるんだよ!お前がいなけりゃ俺は死んでた!」

「それに他の人に与えたものは本物じゃないか!」

すると、突然野茂の脳裏に過去の自分の姿が映し出される。


–数年前


小学生の頃、将来の夢を発表する会で野茂はこう言った。

『人のために役立てる研究職につきたい』

そのために理系の分野をとことん進んできた。

だが、現実はこうだ。

周りの人間を見ると、『大企業にただ入って安定した職をしたい』『ただ医者になって権力を得たい』そういった奴らに有象無象に貶されて罵声を浴びせられる毎日。

しかし、野茂は諦めなかった。

なぜなら、人の役に立つには強くなれねばならないからだ。

どんなことがあろうが、人の役に立ちたい。

だから、辛い職業である介護職にも就いたのだ。


–そして、今に戻る


突然、彼の体から青白い光を放つ。

「何が起きた!?」

彼はダイヤモンドのような姿に変わっていく。

『グチャ!ペチャ!クチャ!』

とても綺麗な響きではないが頭に残る音を鳴らした。

「剛。いや、もう一人の俺」

「お前は俺の意思を継いでくれ」

「俺の声はお前にしか聞こえない。だから、言っておく」

「俺の宝石の中を覗いてくれ」

野茂は宝石の中を覗く。

「その中宝石越しに覗くと未来が少しだけ見れるようになる」

「それを使って少しでも役に立ってくれ」

「俺ができるのはここまで・・・・・・だ」

宝石になった彼はもう喋らなくなってしまった。


–数年後


もう一人の野茂は彼の意思を継いで株やビジネスに成功し、数千万という新築の一軒家を立て、億万長者となった。

そして、残ったお金で貧困に困っている人たちや難病で苦しんでいる人に寄付をした。

またそのことによって、世界中で最も人を救った者として賞をもらうことになった。


自分の部屋の棚に置いてある輝いた宝石を見て、こう呟く。

「もう一人の俺。お前のおかげでここまで成長できて夢も叶えることができた。ありがとう」


-完-

いかがだったでしょうか?

初めて短編小説といったものに挑戦してみたのですが、さまざまな人の意見が聞きたいです。

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