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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第四章 ブリュー・グラナータになったもんでブルーな気持ちでいられない

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魔獣騎士団の人って人間性とかどうなの

俺が想像したのと違い、デニーの口から出たのは俺への拒絶による辞職とかじゃ無かった。外出までにあと一時間の猶予が欲しい、その程度の台詞だった。


ホッとした俺はこくこくと勢いよく頷く。デニーが辞めるなんて言い出す前に。俺と一緒にまた行動してくれる、その気持が変わる前に、と。

するとデニーは俺の腕から手を離し、離れ際にそっと俺に謝罪を吐いた。


「あなたに好きだと俺も言って貰いたかったです」


「はふ?」


「団長は分かるけど、エルマーに言って俺には無いのは、その」


目が真ん丸になり、棒立ちになった俺に追撃だ。

デニーは恥ずかしそうにはにかみながら、なんてことを言い出すんだ。


「そ、そんなの、た、態度でわかれよ」


「ですが、やっぱりエルマーより下ってのは悲しいです」


「し、下じゃねえよ」


「下じゃないなら俺にも言葉で欲しいです」


え? なにこれ。えっと、デニーは俺に好きだって言って欲しい?

それなんて羞恥ゲー?

っていうか、BとかLとかって事案発生じゃないよね?


「現役の騎士じゃないと、好きって言って貰えないんですか!!」


え~。


BとかLな意味でデニーが言っているんじゃないと思いたい。が、無理難題。だって、前世は日本人で陰キャな俺にそれってハードル高い。簡単に好きと言えるか案件。友情だ愛だと主人公が叫ぶ少年漫画に感動しても、リアルで好きだと叫べるわけ無いじゃない。友達のいない俺は、好きだってスタンプさえも誰にも送ったことは無いんだよ。


なのに、好きだって言わなきゃな状況に!!

言葉にしなきゃ気持ちが通じない世界かよ。


「いいです。俺に信頼はあるのはわかっていますから」


追い詰めるなよ。

あの日は「好き」を大判振舞いしたけれど、今のこの状況ではテンション足りねえ。けど、うあああ。デニーは見るからに瞳から色を失っている。言ってあげなきゃ。頑張れ俺。


「もう!!好きだよ。デニーのことはエルマーよりも大好きだよ。俺の後ろに必ずお前がいるはずだって、俺はいっつもお前を信じているからな。君は光で俺は影って感じで、俺はお前とヅカ風にデュエットしてもいいくらいだよ!!」


「いいですね。デュエット!!したいです。ヅカが何かわかりませんけど、ブリュー様の希望であればなんでもします。こん、こんど、絶対に歌いましょう。そこは約束ですよ!!」


「あ、そここそは比喩なんだけ」

「今度こそ俺の願いを聞いてください」


「……わかった」


「約束ですよ。それで、どうしてチョイスがエルマーなんですか? アルバンやブルーノの方が人間味がありますよ?」


「拘るな。俺のいた世界ではオズワルドは死んでいて、ブルーノが魔獣騎士団の団長。エルマーが副団だった。それで、俺をこっちに送るために俺の目の前で腹に剣をぶっ刺したんだよ、エルマーは。俺はあれを二度と目にしたくないんだ。だから、お前が好きだからそれは二度としてくれるなとエルマーに頼んだだけだ」


「エルマーが副団。……本当に地獄だったんですね」


「あいつそんなに評価低いの?」


「エルマーは正確な情報を誰よりも早くいつも掴んでます。けど、その情報は操作して小出しです。自分一人だけでも生き残る為だって、みんな思ってます。だから、エルマーの動向を見とけば生き延びられるって誰もが思っている。そこで彼の周りにはいつも人がいる」


「うぅわっ。魔獣騎士団の世知辛い人間関係を教えてくれてありがとう」


「いいえ。それで、あなたが消えなかったのは、まだ脅威が残っているということでしょうか? 団長が俺に教えてくれたのは」


俺はちょっと黙れ、という風に右手をあげていた。

情報は正確じゃないといけないからな。


「ブリュー様?」


「ちょっと待って。俺が天使とか言ったの、エルマーじゃなくオズワルド?」


「妖精とも言ってましたよ。気まぐれな妖精は温かなお家と甘いお菓子があればいつまでも居着く。だから菓子を抜いて凍えさせてやれば、妖精なあいつはすぐに部屋から出てくる、と。ですからここ三日は」


「家の中なのに凍えるみたいに寒いな。お菓子も焼いてくれないし。あの野郎。さすがエルマーの師だよ。ちゃんと情報の使い方をわかっているじゃないか」


「どうやら、あなたを部屋から出すには逆の方が良かったようですね。完全に火を落としての昨夜から今朝の極寒であなたが観念したのかと思ってたら」


「そうだな。次に俺が引きこもったら、家中を温かくして、甘いお菓子も用意して、それで俺を呼んでくれ。俺は喜んで部屋から出てくるだろう」


「キレイな樹氷をブリュー様に見せたいってのは、俺達をこの家に閉じ込めてたことを誤魔化すためでしたか」


「樹氷は、せっかくだからだと……うんん?」


「どうしましたか?」


「本当に暖炉の煙突の煙で樹氷が汚れたりするの?」


「暖炉をたきっぱの家の周りには出来ませんよ。それにあれは、せっかくだからと、団長が水を撒いて作った作品でもありますし」


俺は、うーんと、と頭を抱えた。

なぜならば、今回のオズワルドの行動の理由が二つほど仮定できたからだ。


一つは、王都からやって来た調査団の奴らと俺をエンカウントさせたくなかった、というもの。それでなんとかしろって俺に放り投げたのだから、三日かけて監視か何かしてた結果、どうでもいい、になったのだろうか。違うな、狩れる下準備が終わったからだ。

だとしたら、あれだ、猫的行動だ。あいつは子に狩りを教える親猫だ。やばい。


そしてもう一つは、こちらは全く違った理由で平和な分、俺はこっち希望だ。


俺がデニーとの仲違いに落ち込んでいたから、自分こそ俺に影響があると俺と周囲に思い知らせるためのこの行動、というものだ。


三日も引きこもっていた俺を部屋から出したのは、オズワルド。

部屋から出た俺は、デニーと仲直りが出来た。

流石のオズワルド様だ、という三段論法。


「どっちにしろ、あいつはやっぱ猫だ」


「? それでどうします?」


「狩りに行くよ。一緒に来てくれるな?」


「あと一時間後に。ここ三日、火は生活魔法だけだったので、滞っている家事がそれなりにあるんですよ」


俺は、そうか、と言いかけて、オズワルドの行動の理由のその三を思いついてしまった。なんてこったと、愚鈍な自分の頭を殴りつけたい。


真冬なのに煙突から煙が出ていない家、イコール空き家か留守宅だ。

そんな家の玄関が開き、俺とオズワルドはコート姿で玄関に立ち、また家の中に入った。そしてオズワルドは砦に戻って行った。その答えは?


不在だった俺の自宅への帰宅だ。


「デニー、杖は手放すなよ。オズワルドはこの家が留守宅だって調査団に三日間思わせていたんだ。その理由は」


ドサン。

グガアアアアアア。

「うわっ」

「どうしてっ」


屋根の積雪が落ちたような音に、ジェニーさんの唸り声、それから、闖入者達の思いがけずのものを発見してしまった驚き声。

それらが同時に起きた。


「デニー。お客さんだ。俺達が持て成す必要はないみたいだな」


俺はウンザリとした声を出していた。

理由その三確定か。

俺が囮で罠だった。

やりたい放題だな、あいつは。

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