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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第三章 魔の森はこうして後退せざるを得なかった

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女の敵は女ってやつ

「えっと。褒めてくれて嬉しいけど。私はブリューに恋心を持つことはないから」


…………は?


俺は一般的な感想として、リーザは美少女だと伝えただけだ。

そして俺に失礼をかましたリーザは、ライトノベルヒロインあるあるで、勝手に勘違いした頭でさらに言葉を続ける。


「ヴァルター様はね、お父さんが殉職した事を伝えに来てくれたんだ」


リーザがヴァルターに惚れた過去話を始めてきたのだ。

聞いたら俺は彼女を応援せねばならないのだろうか。リーザの初恋相手がケヴィンじゃなくてヴァルター狙いだったところは俺的にはポイント高いけど、リーザの恋が叶うかと言えば「望み薄っ」としか俺は思わないというのに。


いや。

長男気質が強いヴァルターさんだったら、妹属性でリーザは意外にもしっくりくるか? 癒しをリーザから貰えるどころか、粗忽者なリーザの尻ぬぐいで過労死する未来でも了とできるなら、お薦めできる?


とりあえず俺は当たり障りない相槌を打つだけにした。

身内の訃報を語った相手には決まり文句を返すものだ。


「父君にはお悔やみを申し上げる」


「うん。皮肉にも、その日は私の十歳の誕生日だった。ヴァルター様は、私と母様に父様の訃報を伝えて、それで、テーブルに乗っていたケーキが母様が私の誕生祝で焼いたものだって、父様も食べられるように長持ちするブランデーケーキだって知って、知ってね、ない、泣いてくれ、たんだ」


「…………涙もろい奴だからな」


ケヴィンの死について、ヴァルターは自分が泣いてしまった事を俺に謝りながら泣いたんだ。俺はそこに俺の父と同じ、人の上に立たなきゃいけない男の矜持を見たが、涙が止まらない彼にどれほど涙を堪えてきたのだろうと思ったものだ。


「よくわかってるね。私だけの宝物だったのに。あんなに冷然としてどんな状況でも顔色を変えないって人が、本当はすっごく優しくて脆いところもあるって知っているのは私だけだって思ってたのに」


「そこ大事なら状況を考えような。俺以外のみんなもあいつの脆さを知ったぞ」


「あ!」


リーザは慌てて後ろを振り返る。

俺の頬に黄色の攻撃棒をかました彼女が園芸カートを挟んだ後ろに見たものは、いかにもなニヤニヤ顔をしているアーニャ達である。


「あ、ああ」


「安心しろ。たぶんお前の中のヴァルターとの大事な思い出は、きっと今までにも散々に、お前自身の口であいつらにぶちまけていたと思うよ」


「そそそそんな」


「それよかさ。お前は俺に女子寮つくるように頼みに来たじゃない? 本当は何を頼めって言われていたんだ?」


「えっと、あれは嘘だと知ってたんだ」


「増長してるから新たな権利要求は考えられるけどさ、女性使用人寮での皆様の自堕落ぶりな汚部屋を見たらね。探られたくない腹を探らせる真似はしないだろうと俺は考えたんだよ」


新寮を建てるにあたって、普通は住人となる者達の生活状況の調べが入るものだ。そんな調べをされたら、女性騎士達が寮のルールを守らず自室の掃除もしないどころか、見習いを虐げている実態が露わになる。そんな事は避けたいはずだと考えれば、そんな願いなどリーザに言わせるはずもないのだ。


となると、結果的に俺にバトルロイヤル開催させる原因となったあれは、自分へのいじめを逆手に取ったリーザの嘘のはずなのだ。ヴァルターに有用な人物と見られたいリーザが、女性騎士の改革を狙っていたと聞けばそう考えるしかない。


ではリーザに与えられたホントの命令は一体何だったのか、ということになる。


「何でもお見通しなんだね」


「この程度で驚くな。本当の淑女による腹芸は、気が付いた時点で詰んでいる」


「たった一日で女性騎士を崩壊させた奴はやっぱすごいよ。あんたみたいな奴が一人でもいれば、カリンナにいいようにされることはなかったのにな!」


「アーニャ。俺みたいな奴がいても事態は変わらないさ」


「あんただけはいいようにされず、カリンナを好き勝手に動かすと」


「そもそも、カリンナはそんなに怖い奴なのか?」


「怖いって言うか、なんか逆らえない状況にされているから。おかしいって思っても、カリンナに悪意があったってことも言えないわ。あの人はいつもそう。自分は善意だけでそんな結果にするつもりはなかったって態度を取るの。私に再婚話が出た時は……その相手先に私がまだ前の夫を忘れられないんだって勝手に伝えて話を立ち消えさせたの」


「だよな。それでお前の再婚話は流れたんだよな。もともとお前を女性騎士達の身の回りの世話ってことで雇ったくせに、いつの間にか見習いだったからって勝手に騎士職授与の名簿に乗せられててさ。そんで出来ないことをくどくど責められるお前を助けるどころか、騎士仕事が出来ないならばって、身の回りの世話だって全部押し付けて。それじゃあ、最初の女中話の時の方が給金も待遇もいいって奴だよ。畜生、それでこんなガリガリになっちまって」


「アーニャがいつも手伝ってくれたから頑張れたよ」


「あたしにできたのはその程度だ。だからリーザはあんたを動かすために頑張ったんだよ。リンダ達の、あんたに告白して連れ込み宿に連れて行けって命令も、できなくて殴られても、泣きごと言わずに頑張ったんだ」


「なんだ。最初からその嘘の告白をして連れ込み宿に連れて行けば良かったのに」


「できるわけないじゃない! 連れこみ宿に行ったら、そこを常宿にしてる奴らにブリューが何をされるか。私は言ったよね。グラナータ団長はあなたの願いは何だって叶えてくれるって聞いているって!!」


連れ込み宿で俺を嬲って下僕化して、そんな俺を通してオズワルドに要求を通そうとしていたのか。ついでにリーザも一緒に汚す予定だったのかな。

全く。

俺はふうんと頷いて、「それで」とアーニャ達に尋ね返す。

俺の声が少し不穏で低かったから、全員してびくっと震えた。


「怒ってるわけじゃない。俺はいい機会だから、女性騎士達の間で何が起きていたか知りたいだけなんだ。砦から放逐された元騎士と騎士職を持ったままだが推薦状がなくて動きが取れなくなった奴らが、まだデュッセンドルフにいるからね」


「カリンナがまだいるってのは聞いたわ」


「あいつがいるから警戒してんのか。確かにあいつは周りを動かすのが上手い。自分の役に立つ奴と立たない奴を仕分けてさ、それで相手によって態度変えるんだよ。凄くイイ人ぶって、あいつを信じてたら、その行動を逐一悪い風にとった話として広められているとかね。そんでプライドが高い。自分の邪魔になりそうなのは、上手に排除していた。自分じゃなく人にさせてさ」


「アーニャはよく見ているけど、上手く立ち回れなかったようだな」


「はん。あいつはあたしをパーティから追放した女とよく似ているんだよ。あたしもキーリスも薬草採取だけで良かったのに、そんなあたし達の間に割り込んで、いつのまにかあたしの悪口で盛り上がって。そんで」


「――もしかして、アーニャがパーティを追放されたのは、十代の頃か?」


「今だって十代だよ、ふざけんな!!」


「おおう」


「あたしがこの砦に来たのは三年前。十六の頃だ! そんときにはカリンナ支配体制はできていたよ。あたしにできるのは」

「私やヘレンと同じく下層民になって大人しくするだけだな」


ジゼットの言葉にアーニャとヘレンが胸を押える。

そっか、二人が仲が良いのは女性騎士のカースト最下層民同士だったからか。


「で、ジゼットにはカリンナ被害はあったのか?」


「誘拐された人として国に帰れそうだったのに、騎士にされた。騎士になったせいで私はオルディアート国の国民だ。もう国に帰れない。私凄い不幸!」


ジゼットは腰に両手を当て胸を張り、ふんすって感じで言い切った。

不幸だって陰鬱になられるよかいいけど、アーニャもヘレンも不幸自慢なんかしてないからね。

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