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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第三章 魔の森はこうして後退せざるを得なかった

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人に助けを求めないから鬱になると言うが一人の方が楽なんだよ

東京ドーム半個分の敷地内をそれも木々という障害物がある森の中を歩き回り、マンドラゴラを採取していくのは一人ではきつすぎる。前世時代は、東京ドーム十一個分の広さのあるアミューズメントパークを、ひょいひょいと歩き回っていたこともあるけどね。それは若さと勢いがあった学生時代の話だし。


転生後の今は十四歳だけどスプーンよりも重いものは持たない貴族だし、中の人は前世の鬱状態を引き摺る精神状態なわけだし、アグレッシブに動けませんて。


それで俺は手助けが必要だと判断し、オズワルドに相談したのだ。

最初の予定採取地が安全地帯の手前で、森の入り口方角に広がる場所という、オズワルド達の働きでかなり魔素が薄れた安全地帯になりつつある場所だとしても。

まだトレント系の木々は残っているし魔獣はいる。


オズワルドは俺の相談を聞き、そうだな、と。


「エルマー。ブリューに回せる人員はいるか?」


俺の相談投げた。


おい、お前こそまず自分に相談しろって俺に言い聞かせたよな?

それでどうしてそいつに投げた?

新しい仕事を投げんなと、あからさまに嫌そうに舌打をした人に。


それで、口調は穏やかでも辛らつ、笑顔でも目が笑っていることはマレな男が、俺の願いを聞くことになったとそういうわけだ。


「エルマーさん。無理にだったらいいです」


「そう? なら戦えないチームで組んじゃうね。余分な人員いないし」


エルマーの言う「戦えない」は砦に残った女性騎士達のことである。正規兵の中で浮いていた女性騎士達に実戦経験など無く、俺が開催したバトルロイヤルで実力も無いことが露呈している。それなのに大人の事情で砦から追いだせない上に運用しなければいけないという難問の答えに、「ブリューのせいだから」ってことで魔獣騎士団が彼女達を押し付けられたのだ。辺境伯に。実はヴァルターかな?


ちなみに、戦えない人にベリンダさんは入っていない。

彼女は魔獣と戦いたいガチな人だからそれなりに戦えるそうだ。

で、エルマーは押し付けられた戦えない人(お荷物)を、その原因の俺に押し付けるつもりなのか。


「戦えない人じゃ、魔獣さん出てきたらどうするの?」


「園芸屋さんで買った園芸カートでマンドラさん入り植木鉢を運ぶんでしょ。行きにも一個だけマンドラさん入りの鉢を持って行こうか。そしたらマンドラさんを連れて歩くと魔獣には襲われないのホントかな? の実験も兼ねられるし、丁度良くない?」


「マンドラさん達にはそんな効力なくて、俺が魔獣に襲われたらどうするの?」


「見習い一人と騎士三人もいるんだから大丈夫」


「あいつら戦えないってエルマーこそ言ったじゃ」

「大丈夫。四人もいれば五人目には逃げる時間がある」


エルマーは本当にひどい男だと思う。

冗談めかした口調に笑顔だけど、目は全然笑ってないの。


使えない奴は俺が生きるために消費しろって言っているの、本心だ!!


ビビった俺が周囲を見回した時、オズワルドはもちろん、エルマーと俺の会話が聞こえた面々の表情は全く変わっていなかった。

だから俺は馬鹿にされたく無くて「足が遅いから四人じゃ足りない」と返しただけなのに、「冗談なのにブリューはマジだ」と一斉にざわつきやがった、とは。


あいつらはなんてろくでなしなんだ。


あと思い出したが、俺を参加させた会議もろくでも無かった。

議題を「魔の森開拓戦線」なんて正式名称でなく「ブリューに畑を増やしてあげよう作戦」と掲げて会議を進行しやがったよな。


ホントなにアレ。

議長のアルバンが、大きなボードに貼った魔の森の地図を前に、焼き払い想定地域に対して恰好良く四つの四角を書き入れた後のアレ。


「安全地帯を中心にして畑四枚分ほど周囲に広げる予定です。それで事前に開拓していた地点にまでつなげます。焼き畑をしていく順番として、時計回りに、シャンブリューアン、シャンブリュードゥ、」


てな感じで、B1、B2、B3、B4と地図に書き込みながら説明してんの。

黒い軍服姿のアルバンが活舌良くカッコ良い発音で唱えると、なんか洋ものの戦争映画の動画見ている錯覚するけど、普通に奴は「ブリュー(シャン)」て言ってるだけだからね。一号(アン)二号(ドゥ)三号(トロワ)四号(キャットゥ)って。


こっちの言葉ってフランス語ぽかったねって、改めて認識したよ。

だけどなんで作戦目的が、(ブリュー)に畑を作ってあげようになってるの?


「あ、ああ。私は今まで何を!!」


寝てた奴が起きて、俺のもの思いを覚ましてくれた。

私は何をって、気絶してたよ。

そんで俺がお前のノルマを採取し終わっていたよ。


俺はリーザを睨むだけにして、マンドラ入りの鉢を持って立ち上がる。それからカートに鉢を置き代りに土だけ入っている鉢を抱え、今度は未だ動かずマンドラゴラと睨み合うばかりのアーニャの横に座る。

するとアーニャは見るからに脅え、勢いよく立ち上がってその場から退いた。

ムカつくと思いながら、マンドラゴラに向かう。


…………。


マンドラゴラは威嚇なのか、葉をウネウネと動かしている。

こんな動き、初めて!

てか、アーニャは何してくれてたんだ?


俺は悪意はないよ~という風にふかふかな土が見えるように鉢を傾け、スコップをさくりと土に差し込む。マンドラゴラに語りかけるのも忘れずに。


「ここにいたいんだったらそれでいいよ。ここはもう終わる。炎に巻かれる君を助けたかったんだけど、仕方がないよ……ね」


マンドラゴラ? 既に俺が抱える鉢に入っていらっしゃるよ。

俺は鉢を持って立ち上がる。

すると、俺を見守っていた女性騎士達が、マンドラゴラみたいに騒ぎ出したのだ。


「ごめん。怒んないで。何もしなくても叫ぶんだもん。しょうがないよね」

「あした、明日までに恐怖は克服するから!!おゆ、お許しください!!」

「だって、だって、マンドラゴラだよ!!」


俺は溜息を吐く。

リーザにヘレンもアーニャも、びくっと体を震わす。

俺は彼女達に一瞥だけ与え、さあ次の採取場所と園芸カートの引き手を掴もうと。


なんか弾かれて…………、どうして俺は地面に転がっているの?

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