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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第三章 魔の森はこうして後退せざるを得なかった

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ブリューとマンドラゴラさんと魔獣騎士団

「ちょっと離れてよ!」


右手にスコップを握りマンドラゴラの前にしゃがんでいる俺は、俺の真後ろで俺を見守っている奴らに大声をあげた。デニーは勿論だが、オズワルドにエルマー、ガチっとした顔立ちと体つきの金色熊みたいなバルトリューさん、そんなバルトリューとは対照的な金髪七三分け貴公子さん風クレメンスさんに、いつものダフネという六人が、俺のすぐ後ろを扇状に並んでいるのである。威圧強す。


昨日の魔獣討伐のさなかに、俺が採取しやすそうな一本で生えている小さなマンドラゴラをいくつか探しておいてくれた事には、純粋に感謝だ。

だから彼らの俺を見守りたい気持もわかるし、これはありがたいこと。


けど、全員から凝視されるのは、安心感どころか羞恥刑です。手元狂って死にそうです。ありがとうございます。今すぐにおやめください。

あと、俺に慣れていないバルトリューさんとクレメンスさんの緊張した顔と、俺に慣れ過ぎて脅えた顔を隠さないダフネが本気で鬱陶しい。


「俺達が死ぬと思うなら、お前も死ぬという事だ。ならやめとけ」


「止めさせるためのその視線か! どうりで威圧を感じるって思ったよ」


「違うね。お前にもあるはずの良識がお前に訴えているのさ。バカ止めろってね」


「俺の良識は俺にそんな暴言吐きません」


止めるわけにはいかない。

俺はマンドラゴラに向き直る。


大丈夫だ。この子は安全地帯のマンドラさん達よりも小さいし萎れかかっているから、栄養たっぷりな植木鉢へのお引越しを喜んでくれるはず。


「俺はそいつの声が聞こえるよ。魔の森の腐った土に埋まっていたいのってね」


「そんなことないよね~。マンドーラちゃん。鉢には美味しい肥料入りの土がらっぷりだよ。さあ、心配せずに僕に身を任せてね」


俺はマンドラゴラから少し離れたところにスコップを刺す。

そして、息を止めながら大匙一杯程度の土をえぐり取る。

ざわっと葉っぱが揺れた。


「ひゃっ」


俺は尻餅をつき、スコップが掬った土はどこぞへと飛んだ。


だが、俺も誰もまだ死んでいない。

葉っぱがざわざわ揺れるだけである。


「い、嫌かなあ?」


ぽすぽす、と一枚の葉っぱが何かを指すように動く。

何だとその方角へと視線を動かせば、尻をついたままの俺の横にある鉢を指している。園芸屋で6号の深鉢を幾つか購入したのだが、なぜか俺へのサービスだと言って縁に小花柄のリボンみたいな絵付けがしてあるファンシーな鉢に一鉢取り替えて手渡されたのである。俺は茶色の素焼きの方だけで良かったのに。


でも第一号鉢の目印になるかなと思ったけれど、マンドラさんはお気に召さない?


「この鉢が嫌なのかな?」


鉢を指していたマンドラゴラの葉は、違うって感じでざっと横に動いた。

草に言葉が通じるって? 理解したくもない俺に分かるように、再び動いて俺のスコップが開けた穴を葉っぱで指し示す。


どういうことだ?


意味が解らん俺に対して、再びマンドラゴラは同じ動きを繰り返す。


空けた穴を埋め直せということか?


俺は鉢の土をスコップで少量掬い取り、俺が開けた穴を埋め直す。


「ひゃっ」


マンドラゴラの葉っぱが全部キュピーンと真っ直ぐになり、ずずりっと五センチくらい土からせり出したのだ。セクシーなオマタが見えるくらい。

それから、え、うそ。


土の中からマンドラゴラの足が一本出てきた。

それでもってその足を俺が盛った土の中に突き刺したではないか。


「お、お加減はいかがですか?」


俺は湯屋の湯女が客に湯を掛けるようにして、鉢を傾けてマンドラゴラに声を掛ければ、再びの、え、うっそ、だ。


目にも止まらぬ速さでマンドラゴラが鉢に移動なさっていた。


「やっぱ野菜は土か~」


ちゃんと植木鉢を買う時に、園芸屋さんから野菜用の土も鉢に入れて貰ってある。

けれどマンドラゴラを土ごと移植するつもりだったので、小さな鉢サイズに土に穴を開けてあった。その穴にスポンとマンドラゴラさんが足からつっこんだのだが、根を落ち着けるには周囲が空っぽスカスカだ。


スカスカなせいでグラグラして、マンドラゴラさんが鉢からすっぽ抜けたら?

即死魔法発生? ひいい!


「デニー。土、土を持ってきて! マンドラゴラさんに土追加!」


「なんて、非常識なんだ、お前は」

「常識を壊してきますね。ブリュー様は」


「非常識は俺じゃないし。感想は良いから、土!!」



俺達はマンドラゴラの採取方法を手に入れた。

その後、予備で持ってきた鉢三つ分、俺達はその検証だという風にしてマンドラゴラを採取した。勿論、オズワルド達は見守るだけだったけどね。


だがしかし、行うが易きだったからこそ落とし穴があったのだ。

俺は三つ目の鉢で、失態を犯したのである。


二本は最初の一本のように自分から鉢に移動したが、最後の一本は葉の調子も悪く動きが悪かったので、鉢に自主的に移動してくれなかった。


活力や魔力が足りないのか?


そこでこれも検証だと、当初の計画通りにマンドラゴラの周囲の土を掘っての土ごとの鉢への移植を試みたのである。この三本目まで行くと、俺にはマンドラゴラへの恐怖心は完全に消えていた。もう動く変な草、程度の認識だ。

ついでにオズワルド達もそんな感じだったので、俺は気軽に検証などしようなんてしてしまったのだろう。


実際、周囲の土を掘り、根っこを切らないように土を切り出しての鉢への移植は、普通の植物と同じ感覚で簡単にできた。

問題はその後だ。


最後のマンドラゴラの鉢を安全地帯に運び、既に置いてある三鉢の隣に置いたその時、最後の鉢のマンドラゴラが暴れ出したのだ。


自分以外の鉢を葉っぱでぴしぴし叩き、鉢の中でグルグルグルんと大回転だ。


呆気にとられた俺達に分かったのは、鉢の土が空っぽになっちゃったね、それだ。

俺達はその日、マンドラゴラについて世界中の誰よりも詳しくなったと思う。


①野菜用の園芸用土大好き

②実は自分で移動できるんだ

③自分だけ違う環境って許せない

                以上!


「で、どうする? ブリュー」


「採取できた証拠として最初の一鉢だけ砦に持って帰る。後の子達は安全地帯に置いたままだと周辺の子達との影響が出るかどうか。大丈夫なら、ここをマンドラゴラ鉢の置き場にできるでしょ」


「そして俺達が魔獣を片付け森を焼き、ここに確保したマンドラゴラ達を植え直して安全地帯を広げる、か」


「団長、だったらすぐに戻って、計画を立てましょう」


「魔獣騎士団、魔の森開拓計画か。笑える」


「団長。今は笑えますが、今後の予定計画地の決定と測量、マンドラゴラの効果的な植栽間隔の予測計算、それから焼き畑予定地に生えているマンドラゴラの保護的採取計画立て。漠然と魔獣討伐するよりも面倒ですよ」


「クレメンス。諦めろ。畑の子を森に連れてきちゃった俺達の失敗だ」


「そりゃお前の失敗だろうが。俺もクレメンスも今回はブリューと一緒に森に来たのは初めてだ。お前達がブリューとマンドラゴラをお見合いなんてさせるから」


「ぶふっ。畑の子やらお見合いとか。やっぱブリュー、俺がお人形さん買ってやっとけばよかったな」


もう!!

鉢:1号が直系3センチ 6号だと直系18センチ

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