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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第三章 魔の森はこうして後退せざるを得なかった

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なぜかモテない次期領主二十五歳(現在)

2026/1/28間違えて違う話を投稿してしまいました。

お読みいただいた方申し訳ございません。

正しい投稿はこの話になります。

デュッセンドルフ辺境伯家の息子と言えば、王都ではケヴィンの名ばかりである。

長男で次期辺境伯のはずのヴァルターは、まずご婦人方の口の端に上らない。


それは仕方が無い事だ。

王都から遠い辺境など、王都に集まる貴族には興味こそないのだから。

自分達の平穏を守ってくれている要なのにね。


また、父親である辺境伯の右腕をしている彼は、領地経営と守備の為に領地を巡るが王都へは滅多に行かない。王都での顔なじみが少なく、交友関係が薄いのだ。


そしてケヴィンは次男の為身軽だ。

魔獣騎士団員として王都のアンデッド討伐に加われた、というよりも、辺境伯代理の指揮官として魔獣騎士団を率いたが正しい。王都からの要請に応える形での派兵だが、魔獣ベヘモットを国内横断させるにはデュッセンドルフ辺境伯が責任をもって率いているって体裁が必要だったという大人の事情。


でもケヴィンは参戦できることに喜んだ。喜びすぎて目立っちゃった。

ついでに討伐後の祝勝会に辺境伯の代理として参加させられたことで、デュッセンドルフと言えばケヴィンになっているとそういうわけだ。


ケヴィンはデュッセンドルフの青い目を持つし、顔形も普通に優れているからね。王都の貴婦人方の好みがドンだったはず。


以上が王都でケヴィンの方が有名な理由だ。

では本拠地デュッセンドルフ領では、ケヴィンよりもヴァルターかと言えば、残念ながらやっぱりヴァルターはケヴィンよりも認知度低い。


なぜだろう。


顔立ちはケヴィンが成長したなあ、という感じで普通に整っている。

俺が推したいのは、彼の顎の形だ。

とんがり過ぎず、がっしりし過ぎず、ちょうど良いカーブのある綺麗なラインだ。

無精ひげがあるどころか滑らかな肌で、恋人だったらヴァルターの顎を撫でたくなるんじゃないだろうか。


さらに彼は恰好が良い細マッチョだ。スーツが似合うすんなりしたしなやかそうな体躯をしている。

だから世紀末ヒャッハーな土地では彼は侮られるのだろうか。

彼は滅んだ世界では崩壊した砦を再編し、迫りくる隣国の脅威や魔の森の浸食に抗い続ける人だったというのに。


ただし、その時も独身。

出来る男で見た目も中身も格好いいのに、ほんと、モテないのが謎。


「ヴァルターは女受けするはずなんだけどなあ」


「悪いね、全然もてない男で」


あ、と俺はお喋りな自分の口を押える。

俺は思案するばかりに、無意識に呟いていたようだ。それも失礼なことを。


ごめんという気持ちで、えへ、と笑って誤魔化してみたが、そう言えばこのヴァルターはまだ俺と親しい人では無かった。どうしよう。


俺を自分の執務室に呼び出していた彼は、俺の一連の呟きや素振りに、それはもう物凄く嫌そうに顔を歪めているじゃないか。


好感度マイナスしてる!


「俺は、君が、マンドラゴラを採取したいので魔の森行きたい、という要望について質問がしたくて呼び出したんだけど?」


「良かったです。呼び出して貰えて。俺はヴァルター様と相談がしたかったのですが、どうやってヴァルター様にお声がけてよいかわからなかったもので。ヴァルター様からお声がけして貰えて、本当に良かった」


「俺を呼び出す理由だったんじゃあ。このマンドラゴラ採取目的による魔の森入林許可申請書は破り捨てていいかな?」


「あ、それは別。許可のサインをお願いします。それは絶対。オズワルドが辺境伯に許可貰わなきゃ魔の森に連れて行かないって凄むので、許可願います」


本当は今日はマンドラゴラ採取に魔の森に俺は行くつもりだったのだ。

ちゃんと今日は早起きして、植木鉢とかスコップとか準備していつでも出られるようにしてたのに、オズワルドは辺境伯から許可貰ってからだと俺を家に置いてきぼりにしてくれたのだ。


だから俺は、一人で砦に来たのである。

連絡馬車でなく巡回兵の馬に乗せてもらって。


オズワルドの味方をしたデニーを、裏切り者って家に置いて来たのではない。

デニーだって俺がしない家政夫の仕事をしなきゃいけないのだ。

ここしばらく連れ回していたから、家事仕事が溜まっちゃってるんだよね。


けれど俺が、今すぐに、今日必ず砦に行くんだ、と騒ぐので、デニーは俺の身柄を巡回兵に頼んだと、そういうわけだ。

五歳児扱いだが、いいんだ!


そして砦に着いた俺は一直線にデボラさんの元に行き、「入林願い」への許可サインを頂戴と頼んだのだ。けれど彼女はさすがな辺境伯夫人。俺を長男に丸投げしたのである。こうして俺はヴァルターの執務室にいるというわけだ。説明長!


俺としてもヴァルターに会いたかったというのもあるので、辺境伯補佐の彼に呼び出されて嬉しかった。カリンナの願いを叶えたいじゃなく、前の世界では何度も一緒に泣いた仲だったからさ。

でも今はまだ俺とは疎遠なヴァルターは、俺の書いた申請書をひらんと翳す。


「入林目的がマンドラゴラ採取だよ?」

「マンドラゴラ採取ですね」

「死ぬよ?」

「死なないですよ。抜きませんから」


「でも採取って」


「土ごと植木鉢に移植するのはどうかな~と」

「たぶん死ぬよ?」


「じゃあ、紐つけて犬にひかせて抜くしかないか」

「デニーをそう簡単に殺しちゃ駄目でしょ」

「犬って言えば犬ですよ」

「デニーに対して言い方が酷すぎないか?」


「あなたのデニーへの認識が酷いなってことは分かりました。じゃあ、死刑確定の犯罪奴隷にします。そいつに抜かせて、抜けたものを栽培繁殖ってことにするので、入林許可願います」


「反人道的な奴に許可が出せると?」


「許可出さないとカリンナさんとの見合いの席を設けますよ?」


「できもしないことは脅しにならないんだよ?」


「たぶんできますね。カリンナとの婚約が嫌ならば、あなたは別の女性を連れて来なきゃいけなくなる。一対一は嫌だというならば、集団見合いはどうだろう?」


「俺の母をそうやって唆すってことか。君のお陰でケヴィンが物凄くできた弟だってよくわかったよ」


ヴァルターは乱暴に俺の申請書にサインを入れると、嫌そうな顔で俺にそれを突き出した。

俺が受け取ろうと手を伸ばすと、俺の手を掴んで自分へと引っ張るじゃないか。

ヴァルターは真っ直ぐに俺を見つめている。怒っているどころか、辛そうな瞳で。


「俺が不甲斐無いばかりに君を不幸にしてすまない」


「あなたが不甲斐無い? あなたは滅びゆく世界の砦でしたよ」


「ハハハ。すごいな、俺は。では、君は危険なことせずに俺に任せてくれるか?」


「俺の世界ではあなたはずっと独身なんで、ちょっと世界を変えましょう」

ヴァルターとブリューの会話にスペースがないのは、互いに間髪入れずぱしぱし言い返すから。

ブリューは前の世界でヴァルターとは親しかったので遠慮が無いです。

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