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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第三章 魔の森はこうして後退せざるを得なかった

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ファンタジー世界に拳銃が無いならば

今日はオズワルド達に鋸造りの剣を俺の行きつけの鍛冶屋で作ってもらう、たったそれだけの遠足だったのに。おれは引きがいいのか、鍛冶屋のホラルドさんが、俺が頼んでいた新兵器の試作品を完成していたところだった。


俺は見たい。


でもオズワルド達は邪魔だ。


なんとか追い払おうと頑張ったが、けれど、俺では彼らを追い払えなかった。


わかるだろう?

そのせいで今の俺は、右にエルマー、左にブルーノと貼り付かれ、そこから逃げ出さないようにブルーノの左隣に立つアルバンさんが目を光らせている。動けない。


ダフネ? 見りゃわかんだろ。デニーの足止め要員だ。

ということで、俺はデニーの助けも望めない。詰んでいる。


もういいやと試作品公開をホラルドに伝えたが、そこで俺のセリフにオズワルドが反対したせいで現在膠着状態。

ブルーノさんにアルバンさん、そしてエルマーさんは、魔獣騎士団の「知」の部分を担う方々だ。今日も昨日のメンバーをオズワルドが連れてきたのも、彼等の鋸造りの剣の注文だけでなく、スタンガンの特許出願の書類作りもあるからでしょう。

いいじゃない、面倒な書類作らなきゃなんだし。特許料を皆で頭割りにしたら。


「おい。いくらブリューが良いと言ったとしても、権利はブリューのものだ。お前等は俺が言ったように、断れ」


「団長。あなたこそブリューの試作品を見て無いですよね。まずはそっちを見ましょうよ。ブリューの考案したものが危険すぎたら注意するのも、権利を分配して貰った者としての義務ですよ。ブリューをブリューから守る為です」


「さすが、アルバン」

「アルバン最高」


エルマーとブルーノは、アルバンの口上を褒め称える。彼等もやっぱり不労所得は手放す気がないようだ。


そしてアルバンに簡単に言いくるめられたオズワルドは、ホラルドに向き直り、見せろ、と偉そうに言った。

団長揺るぎ過ぎだな。

ホラルドの目は、いいの? と俺を窺うが、もういいよって感じ。

俺は頷く。


ホラルドはギャングどもから隠していた試作品をカウンターに置いた。

射出口と握りでL字型をした、DIY用品。


前世の誰でも知ってる釘打ち機である。


名称は中二病を発揮して、クルセイダーにしてある。

これは試作品なのでクルセイダー零式とか呼びたい。


「これはどう使うんだ? 威力は?」


何だこれは、じゃなくて、最初から武器認定か。


「ホラルド。試し撃ちして見せて」


ホラルドは釘打ち機(クルセイダー)を持ち上げ、後ろの壁、注文書が貼り付けてある所に向けた。


「行きます」


ガンッ。


小さな鉄の杭が壁にめり込み、壁に小さな穴を開けた。


店内はしんっと静まり返る。


オズワルドを筆頭にエルマー達に声を失わせるほど驚かせられたと嬉しくて、そんなものを作ったホラルドへ俺は賞賛の声を上げていた。


「素晴らしいな」


「はい。あとはブリューさんの希望通りに、弾を束ねて次々に弾倉に送れるように出来れば、ですね」


「一発だけじゃ心もとないもんな」


構造は釘打ち機だが、打ち出すものは釘ではない。大量生産できるように、先のとがった四センチ程度の鉄の杭にしてある。けれど釘打ち機の構造を再現するので精いっぱいだったので、銃のように弾倉とか作れない。釘打ち機のように釘をロールにして束ねた奴を設置するしかないが、釘を束ねてた素材が無い。なのでそこらへんはホラルドに頼むしかないのだが。


「そうですね。でも連発が可能になったら尚更、ブリューさんが持つのはムリですよ。今の時点でも重さと反動がかなりあります。ブリューさんですと空に打ち上げちゃいますね」


「改良は俺こそだったか」


「ハハハ。これもデニーに持たせれ――」

「おい。何だ、これは?」


ようやく声を上げたオズワルドだが、珍しく彼の声は上ずっていた。

だからかホラルドは落ち着き、商品について説明をする店主の顔と声を出せた。


「圧縮した空気の力で鉄の杭を飛ばしてます。飛距離は一メートルほどです。威力は木に対してはご覧の通りです」


「何のための武器だ?」


「俺の護身用です」


「お前、人にあれを撃つ気だったか」


「ヤバすぎる。やっぱ畑で生まれた魔物は違う」


「人に撃ちませんよ。囲まれた時に、まず床や壁に打ち込みます。それから、人体にはどうだろうねって向けます。それでも動こうとする奴は、デニーさんお願いしますで切って貰います」


「ちょっと待て。デニーの剣で切ったら、二度と落とされた腕は繋がらないぞ」


「ブリュー様を襲おうって言うのですから、いいんじゃないですか?」


俺の代りにオズワルドに応えたデニーは、喋り方が明日の天気を答える感じで、物凄く怖い護衛っぽくて二重丸だ。俺はデニーにイイねと親指を立て――オズワルドに頭を叩かれた。


「痛い」


「当り前だ。それで店主。こいつとのさっきの話じゃ、それを連続撃ちできる開発もしているってことか?」


「そうです。ですが、この重さと反動ではブリューさんには撃てませんよ」


「俺にも試し撃ちさせてくれ」


「では、こちらへ」


オズワルドはカウンター内に入り、ホラルドから釘打ち機(クルセイダー)を受け取った。それですぐにクルセイダーを構えたので試し撃ちをすると思ったが、彼は撃たずになぜかまたホラルドに返した。


「確かに重いな。弾の装填の仕方を教えてくれ」


「はい」


ホラルドは込めていた弾をオズワルドに見せるようにして取り出し、再びクルセイダーをオズワルドに戻す。受け取ったオズワルドはホラルドから手渡された鉄の杭をグッと握ってから、クルセイダーに装填し直した。


それからズワルドはクルセイダーを壁に向けて構えた。

誰もの視線がオズワルドを見つめるその時、彼は引き金を引く。


ガツッ。


ホラルドが撃った時よりも杭が穿った穴は深く、穴の周囲には焦げ跡だ。

オズワルドは鉄の杭に魔法を乗せたのだ!


「オズワルド! 火事になったらどうするつもりだ!!」


「魔法を乗せて撃ち出せるかの試しは、お前の考えに乗ってやったんじゃねえか。お前がこいつで撃ち出す弾は、本当はミスリルを考えているだろう? 聖魔法つきの、アンデッドをぶち殺せる、ミスリルの杭を」


オズワルドのセリフに、みんなの視線が俺に集まる。

彼らは三か月前に王都のアンデッド騒ぎに狩りだされた人達だ。

アンデッド化した人間を殺すという、汚い仕事を押しつけられたばかりの人達なのである。だからわかったのだろう、俺の目的が、気持が。


「こんなもん作らずに、俺に頼ればいいじゃないか!」


「こいつがあるってことが俺には大事なんだよ!」

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