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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第三章 魔の森はこうして後退せざるを得なかった

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希望の芽はどこにでも生えている

「ブリュー様。安全地帯を抜けては危険です。俺が壁になりますから安心して戻ってウンチしてください」


俺はウンチを名目にオズワルド達から離れている。

危険に足を踏み入れるつもりは無いが、酸素爆発だけで魔の森に安全地帯が出来ている不思議が理解できる何か、それを知りたいだけだ。


魔の森の知識のない俺には解らないだろうけど、科学知識はオズワルド達よりもある。もしかして爆発は普通に魔法が重なってのだけのもので、実は酸素じゃなく別の気体が発生してたとか、実験終わり~と適当に溶液を捨てまくった結果だったりとか、とにかく自分が納得できる何かを探したいのだ。


「このあたり下草も高いし、ウンチには良さそうですよ」


「ウンチ違うし! ちょっと確認したいだけだから! 警戒をよろ」


「はい。何を確認したいのですか?」


「安全地帯を作っている周囲の異常性。俺は魔の森については門外漢なんだから、デニーはいつもと森が違う点に気が付いたらバンバン教えてくれ」


「俺が落ち込んだと思って頼って下さる。あなたは本当に優しい」


「いや。剣が折れる心配で躊躇して剣を奪われたことは反省して? 俺はデニーが剣を折ってもなんとも思わないが、別の奴にデニーの剣折られたら許せんよ」


「はい!!次は折るつもりで頑張ります!!」


「がんばれ。お前のそれは試作だ。鋸造りの完璧を目指すぞ」


「はい!!」


デニーの頭にやっぱり犬の耳が見える。

そうなんだよな。デニーはエルマーたちと比べると普通なんだけど、思いっ切りイヌ科なせいで落ち込んだ様子を見ると本気でいたたまれなくなるんだよな。


さて、周囲の観察、かんさ「うわっ」


俺はデニーにひょいっと持ち上げられた。

もう体は五歳児じゃないのに、俺が五歳児ぐらいな感じでひょいって俺を持ち上げちゃったデニー凄すぎ。


「なに、何ですか? デニーさん」


「マンドラゴラの葉に足を引っかけるところでした」


「マンドラゴラ?」


「マンドラゴラです。ヘタに抜いたら即死魔法を受けてましたよ」


デニーは俺をゆっくりと降ろし、俺は俺が躓きそうになってた植物を見下ろした。

菜っ葉みたいな普通の葉っぱが魔の森では逆に目立って、俺だってその気になればすぐに見つけられる魔草である。


安全地帯直前で俺が見つけたものと違い、このマンドラゴラには花が咲いていた。星型の桔梗みたいな可憐な小さな花で、即死攻撃できる魔草に似つかわしくないと俺はしゃがみこんでしみじみと眺めてしまった。


「弄っちゃだめですよ。マンドラゴラの即死魔法は避けられませんからね。A級魔獣でさえも、マンドラゴラがあれば避けていきます」


俺は振り返り、安全地帯の広さを見つめる。

テニスコート三面分。

コート一面は、横が約十メートル、縦が約二十四メートルほど。つまり、自軍の縦幅は十メートルぐらいなのだ。


マンドラゴラの半径十メートルは魔獣も魔樹も近寄らない。


俺は目の前にある木々を見上げ、クリスマスしたいなと思った。

めっちゃもみの木。

トレント系はこの木なんの木モンキーポッド。つまり外見が落葉樹ばかり。

針葉樹には擬態しない(できない?)奴らなのだ。


「そっかああ。本気でオズワルドは、いや、魔獣騎士団は悪運が強いよ」


「どういうことですか?」


「うん、戻ろう。今すぐにみんなを集めて説明する方が早い」



        ――――――――



俺は生まれ変わったら学校の先生になるんだ。

そんな風に思うほど、今は気持がいい。


胸を張って自論をぶちまけた先には、オズワルドとその部下の面々だ。彼等は素直に俺に顔を向けて俺の話を聞いているのだ。納得できないと不貞腐れた顔だし不敬にも胡坐をかいているけどね。だが俺は彼らを、それはもう優越感を持って見下ろしているのだ。


なんて気持が良い事か!


「なんだ? お前の毒のお陰じゃなく、都合よく俺達がマンドラゴラに周囲を固められた場所でお焚き上げしたのでこの広場ができました?」


オズワルドは止めを刺し損ねて魔獣に逃げられた顔だ。

俺は口惜しそうなオズワルドに向い、大声を張り上げる。


「そのとおり!」


俺はさらにぐぐっと胸を張る。

後ろに倒れそう? 大丈夫、俺の背中を笑いながら支えるデニーがいる。


「結局は俺達の死闘に感激した女神の祝福か」

「アルバン。なんでも詩的に言おうとしなくて良いよ」

「ブリューの毒は別にどうでもってことだね、ってアルバンは気を利かせたんだよ。ブルーノ」


「アルバンにブルーノはどうでも、エルマーのどうでも発言は聞き捨てならんぞ」


「アハハ。ブリューがぷんぷんだ」

「こら、俺とアルバンはどうでもってどういうことだ?」

「そうですよ。俺はどうでもいいって何ですか、ブリュー。俺は五歳の君が竜渓谷に連れていかれる時だって心配してあげたのに」


俺はやっぱり教師になるのは無理だなって思った。

たった数人でもうワイワイガヤガヤ収集付かない。


「ハハハ。みんなもうわけわかんね。ブリューとりあえず爆破して」

「エルマーが言う通り、俺もブリューの毒が爆発するの見たい。俺は竜渓谷もここの爆発も仲間外れだったし」


「俺も見たいです。ブリュー様」


デニーがそっと耳元で囁いて強請る。

俺はオズワルドへと視線を向ければ、彼は頷いた。


「では、準備して。いつも通り、消毒薬をバケツに注ぎ、そこに、先程狩って来たエイプの新鮮なお肉を」

「あ~そう言えば、それで狩りに行ったんだっけな」


「オズワルド。あんたは試し切りに夢中で本来の目的忘れたか!」


「ハハハ、悪ぃ。だけどよ、エイプの体をサクッといけるの楽しくてな。明日は鍛冶屋に行くぞ」


「ハイハイハイ。俺も行きます! 絶対行きます! 連れてかないならブリューのお尻をぺんぺんします」


「俺も行きますよ。もちろん」

「俺だって」

「ダメダメダメです。アルバンとブルーノはウチの希少な文字書ける人でしょ」

「そうそうそう。エルマーこそ文字書ける人でしょ。書けない俺が行くから」

「ダフネは昨日公休だったでしょう。その上ブリュー開催のキャットファイトに参加もしてたんでしょう」

「だよな、アルバン。ダフネ、お前こそ残れ。ハルバードが休みたいつってたぞ」


魔獣騎士団て仲いいようで悪いんだな。煩いし。

俺は明日鍛冶屋にこの人達全員連れていくこと考えて、一瞬でムリってなった。

でもどうしても引率しなきゃならんのならば、俺の用事にも付き合って貰おう。

俺は発言したいと、すっと右手を上げた。


「じゃあ、明後日マンドラゴラ採取に付き合ってくれる人は明日おいで」


シン、と静まり返った。

黙り込んだ方達は俺のセリフに恐怖で、じゃなく、お前バカ?って顔に書いてる。

オズワルドこそ俺を呆れた目で真っ直ぐに見ている。


「ブリュー。お人形欲しいなら、俺にそう言え」


「セクシー野菜が欲しいんじゃないって。マンドラゴラを好きな場所に移植出来るんなら、オズワルドが後退させた魔の森の境界線に植えれば、ここの安全地帯みたいに保てるんじゃないかって検証がしたいの!」


「お前の言う通りかもしれないが、俺は犬は好きなんだよ」

マンドラゴラ:魔草:根っこが人型なセクシー野菜系。万能薬の材料。花は青紫の星形で可愛い。抜かれた時の即死魔法はA級魔獣でも防げない。生きとし生けるものに半径十メートルの距離を取られている。

トレント系:魔樹:温帯に分布する落葉樹の姿をしている。蔦系の奴もいる。擬態している木が多すぎるので、トレント系、トレント系魔樹と一緒くた扱い。魔素が少なくなると枯れてしまう。


魔獣騎士団用語→文字書ける人=ちゃんとした書類作れる人

「提出用書類書いて!」→「俺字書けない(嘘)」「俺も(嘘)」「俺も(嘘)」→「仕方ない俺が書くか」で書類作成者が固定されている。

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