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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第三章 魔の森はこうして後退せざるを得なかった

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俺似の姉がいなくてごめんね

オズワルドは明日の魔の森行きには俺も連れて行くという。


確かに勝ち残った人は魔の森にご招待の約束をしたけど、明日?

勝利したベリンダだけど、今日出来た怪我の回復も必要だし、今までの不摂生もあるから、万全に持っていくには最低でも二週間は必要だと思う。


女性騎士達は最初からベリンダに及び腰で、反対にベリンダは三対一だろうが相手の剣どころか腕の骨を折る勢いで剣を振るっていた。

そんなベリンダが根を上げる程に、オズワルドが直々に稽古をつけてやったのだ。

稽古どころか罰のように、木剣が折れる勢いでベリンダの体を強く打擲していて、女騎士達を互いに殺し合わせようした俺こそゾゾゾッと来た所業だったが。


だからベリンダが今動けない理由は、半分以上オズワルドのせいだ。

ベリンダの状態をオズワルドこそ一番知っている癖に?


「明日もうベリンダを連れて行くの? まだ無理でしょう」


「連れていくための下見だよ。ちゃんとデニーも連れて行くから心配するな」


「デニーも? 予備兵でもないデニーに騎士団の武器を貸してくれるの?」


俺は再びソファに座り直す。魔の森に再び立てると聞けば、いかにデニーか喜んだか想像できる。だが、左足を失ったからと戦力外通告だったはずだ。そして俺は単なる一般人。冒険者にも立ち入り禁止区域を設けている魔の森に、どうやって俺とデニーを連れていくつもりなんだ?


オズワルドがグラスを差し出す。――わかったよ、あとワンフィンガーね。


「デニーが団から離れるしかなかったのは、重い戦斧は振れないからって」


「デニーに振らせるのは、お前が作った武器だよ。デニーには明日の行程も目的も全部伝えてある。明日はジェニーさんに乗って来いって、家に戻した」


「俺がデニーに作った武器って、あれは仕込み杖じゃない。仕込みは、隠し持っていざという時にだけ使うんだよ」


「そのいざの時に使えるか知りたいんだよ。それにあの刃に俺は興味があるんだ。あれが本気で魔獣のぶ厚い皮を裂けるなら、俺達はもっと深く潜れる」


「ただのノコギリじゃないですか」


「俺が知っているただのノコギリはあんな形をしていない」


俺はデニーがベッド作りをするにあたって、注文がネジばかりとほざく鍛冶屋にノコギリを二本作ってもらったのだ。一本はベッドの足程度を切るには最適な大きさのもの。材木の切り出しは業者でやってもらったから、組み立て時に調整で気軽に削っていける道具が必要かなって。


そしてもう一本は、デニーの仕込み杖の中身のことだ。


そもそも俺が鍛冶屋に打ってもらったのこぎりの刃は、前世では力が無くても何でも切れると評判な万能のこぎりの刃を目指したものだ。また、のこぎりに必要な刃先を左右に広げることはせずに、刃先に焼きを入れて硬質化してもらう事で、薄い刃に強度と、力を入れずに切れる切れ味を手に入れた。


機械技術は無くとも魔法技術でカバーできるこの世界の鍛冶屋だからできた事だ。

鍛冶屋は出来上がった刃を非常に面白がり、俺もこんなに上手くいくとはと大はしゃぎだ。――で、俺と鍛冶屋は悪乗りし、鋸造りの日本刀っぽい仕込み杖を作ってしまったのだ。


本当は海部刀の鋸造りって棟の部分が鋸なんだけどね、デニーのは昔の漫画みたく刃を鋸にしてある。もう本当に俺の趣味。でもいいでしょ。仕込み杖って存在は、刃を隠し持っていた、という事実で敵を脅すはったりが強いと思うんだ。


ならば、杖型の鞘から引き出した刃が、それ(・・)だったら、もの凄く恰好良くないか?

中二病と呼びたけりゃどうぞ。だけど、オズワルドこそ気に入っていたとは。


「でもあれはいざの時にで、バシバシ使うには強度が足りない気が」


「いざという時にお前を守らせるんだ。強度を知りたい」


「で、使えるんなら、仕込みでも何でもない奴をつくれと」


「そうだ。お前とデニーを連れて行く名目は、武器職人としてだ。喜べ。間抜けなお前の代りに俺と鍛冶屋で、お前の考案した刃の特許申請は済ませてある」


「わーいうれしいー(棒読み)。それで切れ味と強度確認で実用性ありだったら、魔獣騎士団の標準装備にでもする気で」


俺が途中で黙り込んだのは、オズワルドの甘い甘い微笑みだ。

彼こそ鋸造りの武器が欲しいみたいだ。

それも自分専用特別仕様の。


「わかりました。けど、俺は門外漢なので、鍛冶屋に注文する時はあなたも一緒でお願いします。あなたの命を預ける刃です。こればっかりはヤワい物を作るわけにはいかないので」


「わかっている。そいつはデニーにしてやったみたいな内緒の贈り物じゃ無くていいよ。だあが、ああ~。俺もデニーみたいに素敵な上着が欲しいなぁ」


「内緒の贈り物は、家のクローゼットに吊るしてありますよ。エポーレットと縁を金色で飾り、二列ボタンと立ち襟が特徴的な、あなたの目の色をしたド派手で不遜な王様みたいな上着が」


オズワルドの青い瞳こそぎらついた。

獰猛なネコ科の大型種が獲物に食らいついた感じ。


「今日は家に帰るか!」


「砦に泊まりましょう。飲み過ぎです」


オズワルドは思いっ切り大きな舌打ちをあげた。

俺は一本取ってやったと笑ってやる。

ただし、オズワルドに申し訳ないと胸も痛んだ。


きっと俺が消えたら、作ってやった上着とこの俺用になった毛皮のコートが、この執務室のクローゼットに並んでぶら下り続けるだろう風景を想像して。


家名がある平民だなんて、過去持ちだって言っているも同じだ。

過去を語ることはなくても、オズワルドは自分の家名を捨てることはないだろう。

恐らくも何も、家名こそオズワルドには彼の家族のよすがの気がするから。


彼はたった一人、魔の森に取り込まれまいと戦い続ける。

いつ死ぬかわからないから、彼は特定の誰かを作らない。

だけどさ。


「オズワルド。あんた結婚しなよ」


「お前が女だったらな」

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