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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第二章 デュッセンドルフ砦の正規軍のゴタゴタ

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味方と合流するのも考えもの

グダってます。

真面目な好青年は素直で柔軟だからこそ、染まるのです。

俺は俺より頭一つ分背が高く、デニーよりも少々横幅がある世紀末女戦士二名を引き連れて、砦の五つある練兵場の一つへと向かっている。

思ってた以上に遠くて歩くの怠い。

日頃の運動不足の自分を罵るよりも、もう家に帰りたくなった。


なんで余計な事しようと自分は思ったのか。


俺をうんざりさせる距離が女子寮から練兵場まであるのは、女子寮が領主館の女子使用人専用だからである。遠いから女性騎士専用寮が欲しくなったのかな。


でも、寮を建てるには女性騎士は少なすぎる。

それなのに五つしかない練兵場の一つを専用にできるとは。

女性騎士が男性騎士よりも厚遇されすぎって見えちゃうよ。


デュッセンドルフ砦が抱える総兵士数は二千人だ。その内、兵士を束ねる騎士職にある者は百人足らずだ。

女性騎士は兵の総数では二パーセントにも満たないのに、騎士職だけで見れば三十パーセント近く。なんかおかしくないかな。


「ブリュー様。勝手に移動しないでくださいよ!」


ちょうどよくデニーと合流かと声の方へ振り返れば、デニーは余計なお土産を引き連れてきやがった。リノとダフネさんだ。私服ってことは、この人達はどうやらお休みの日っぽいんだけど? でもって二人してなんでそんな楽しそうな顔なんだろうと、俺はうんざりする。


「来たよ!」


見りゃわかるよ、ダフネ。

でもオフだからって、領主夫人よりも俺を優先するなよ?


「相変わらず、するんだ?」


リノさん、俺が何を相変わらず「する」って思っているんです?

あと、俺が誰をエスコートしているのか、その方の侍女という感じで怖いマーガレットさんが後ろに控えている状況、あなたもまるっと無視すんな。


「デボラ様、失礼ばかりでもうし」

「お行儀が悪くてごめんなさいね。でも、私が時々見えなくなる魔法を使うせいなのよ。ブリューは気にしないでね」


あ、そうだ。リノもダフネもデュッセンドルフの騎士で、あなたの管轄下の人達でしたね。この猟犬どもはちゃんと躾けた方が良いですよ。


「デボラ様。女神のようなあなたを見失うなんて、あってはいけない事ですよ」


「うふふ。違うの。私がお忍びかどうかちゃんと判断なさいませ、よ」


敢えてデボラがいない振りをしていたのか。さすが信任の厚い騎士達だ、と見れば、ダフネはどうでもリノまで微妙な笑顔だ。――こいつら、はしゃいじゃったせいで山で迷子になる馬鹿猟犬と同じですよ。いいんですか、飼い主(デボラ)さん!


「ぶ、ブリュー様の護衛が来たんなら、あたしらはいらないよね」

「で、では、あたしらはここで」


「行き先は目の前でしょう。あと数歩じゃないの。それに良く見て。リノ隊長もダフネ隊長も、私服ですよ。業務時間外の方に、それも上役に、あなた方は仕事を投げる気ですか?」


「あんたが連れて来た護衛がいるだろ」

「リンダ。使えなくなって砦落ちした奴だよ」


使えないってどういうことだよ?

俺は戦傷で退役した騎士への敬意も何もない奴らへと一歩踏み出す。

落ち着け、俺。

目の前にはこの女達の拠り所である練兵場だ。

こいつらを潰すために案内させてたんだろ?


「黙って練兵場の扉を開けなさい」


ジャネットもリンダは、どうして自分達が、って顔で見返して来た。

彼女達は最初から俺のことを、オズワルドの愛人をしている孤児でしかない、と見下している。最初っから敵愾心さえも隠さない。


だけど、俺の援護にダフネとリノまで来てくれているって状況を考えようよ。


「ええと、デニー。女性騎士って魔の森にも行かないし、城下の見回りもしない、引きこもり隊って本当?」


デニーはぷっと吹き出し、


「てめえ、何が言いたい?」


ジャネットは俺の前へと踏み出す。

俺よりも大きな体で俺に覆いかぶさるように、俺を見下し睨みつけてきたのだ。


わかりやすい威圧だ。臆病な人間はこれだけで脅えることだろう。

俺? こんな三下に脅えるかよ。


俺は見上げもせず顎も上げず、ただ視線だけをジャネットの両目に向けた。すると、彼女は負けずと俺を睨み返す。

わざわざ視界を狭くするとは。


俺は悠々と後方のデニーへと右手を差し出し、彼から長財布サイズのものを受け取った。そしてジャネットから目線を逸らすことなく、それをジャネットの体に押し付ける。


「ぎゃっ」


「ジャネット! お前、何しやがった!」


ジャネットは地面に転がり、びくびくと痙攣している。

俺は左腕にはデボラに差し出したままで、ジャネットが倒れ込むような動きは何もしていない。俺の右手は財布サイズの何かを持ってはいるが、武器に見えないそんなものが脅威であるはずはない。

それなのにジャネットは雷を受けたみたいにして気絶したのだ。


この少年は無詠唱で攻撃魔法が使える魔法使いに違いない。


自分の足元で倒れているジャネットを介抱するどころか、脅えた表情で呆然と俺を見つめるだけのリンダだ。彼女の現在の思考はそんな感じだろう。


スタンガンでジャネットの体を突いただけなんだけどね。


アンデッドには電撃攻撃が利く。終末世界となったあちらにて、俺は対アンデッド対策と護身用として、クズ魔石を乾電池みたいにして使用できるスタンガンを作っていたのだ。


ならば、こっちでも戦闘力のない俺が護身用にスタンガンを作って持つなんて当たり前だし、ポケットを膨らませられない今日みたいな日は、デニーに持たせるぐらいするだろう。


「お、お前は無詠唱の」


「どうでしょうね。ただ、僕の方があなたが方よりも場数を踏んでいます。そして僕のデニーはもっと。彼への侮辱は許しませんよ」


「はひ。も、申し訳ありませんでした」


俺はリンダに謝罪をさせたが、そこに赦しなど与えなかった。ただ貴族然としながら、物々しい感じでデニーへとスタンガンを差し戻した。が、デニーは俺達が想定しなかった敵に押しのけられた。


ダフネがスタンガンを横取りしてしまったのだ。


…………クリスマスプレゼントを貰った子供みたいな顔してやがる。


貴族ごっこしている俺が、返せ、バカ、とか気軽に言えないってわかってて!!


「デニー。あとで取り返しておいて」


「かしこまり」

「ブリュー様! 俺にも寵愛をください。デニーばっかずるいです!」


「ブリュー様。俺も恭順の意を示すから、同じの俺にも下さい!」


「ブリュー。もちろん私にこそあれを贈ってくれるわよね」


…………せっかく場を作ったのに、スタンガンにはしゃぐ人達のせいでリンダの顔付きから脅えが消えていくじゃねえか。


「え、その黒いのがジャネットをやれた理由だった」


「いいからお前は扉を開けろ!!話が進まないだろ!!」

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