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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第二章 デュッセンドルフ砦の正規軍のゴタゴタ

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突撃、女性騎士達のお部屋に

俺と辺境伯夫人(デボラさん)のハートフルな邂逅は、俺の空気読まない従者によって本来の姿に立ち戻された。俺はデニーを叱ったが、確かにデボラに流され一番大事な用事の押し付けする事を忘れていたとハッとはした。


俺の今日の目的は、日々迷惑している女性騎士を何とかして欲しいと、デボラに陳情することであった。デボラの胸に甘えることじゃない。


三日連続だ。

三日も我が家の呼び鈴を鳴らされて迷惑している……三日連続かあ。


「デボラ様。勝手にマーガレットの憂いを晴らすのは余計なお世話ですかね」


「いいえ。彼女は喜ぶと思うわ」


「では、俺が友人に会いに女子寮を訪ねてもお叱りを受けませんか?」


「そのお友達の所属は、一班と二班のどちらかわかって?」


女性騎士の数は少なく、大雑把に二つの班に分かれているそうだ。一班の班長はカリンナで二班班長はベリンダ。どちらも二十代後半で同期とも聞くが、外見は全く正反対だそうだ。


どう正反対なのかデボラに聞いても笑うだけなのでデニーに振れば、カリンナは黒髪でほっそりした体型の冷たそうな長身美人で、ベリンダは明るい茶髪に筋肉質というか顔も体つきも肝っ玉母ちゃん的な方なんだそうだ。


肝っ玉母ちゃんって言い方、この世界にもあったんだ。


「あ~わからないですね。まずは寮に直接行きまして、自力で友人の部屋を探してみたいともいます。互いに気安く気兼ねなくドアを叩き合う仲だと思いますし、部屋を間違っても彼女の同僚も快く許してくれるはずです。良いですよね」


「ええ。私が何だって許します」


「何だっては許さなくても」


「許します。やるんでしょ。冒険者ギルドでの大暴れみたいなことを!!」


デボラは期待いっぱいの顔で、瞳をらんらんと輝かせている。

息子達のお行儀が悪いと嘆くが、デボラこそお転婆な人のようである。


「今すぐ動く?」


「いいえ。デボラ様にご用意いただいたせっかくのお菓子を平らげていませんし、まだまだデボラ様に甘えたいです」


なんか動かない方が良いような気になって来たよ。


「あらあら、お菓子は全部包んであげるから心配しないで。それに女子寮に行くのなら、私と一緒の方がよろしくてよ」


「そ、そうですね」


「そうよ。ブリューは良くても、デニーは女子寮には入れませんし」


「いえ。俺はブリュー様の護衛として」


「女子寮は男子禁制よ」


「ですが、ブリューさまは」


俺は自分もれっきとした男ですとデボラに主張するよりも、俺を五歳児扱いして男子禁制女子寮に入れてくれるデボラに追従することにした。

デニーに俺の尊厳を守って貰ったせいで女子寮に入れなくなる方が面倒だ。


「デニーには仕事を頼む。砦の兵士の勤務表とかの確認と、俺がオズワルドに会えるように調整して。見習いのくせに三日連続うちのドアを叩ける余暇時間がどこから、とか知りたい」


「――かしこまりました」


少々間があったが、デニーには通じたはずだ。

俺は立ち上がると、デボラへの椅子を引く。

それから彼女にエスコートの手を差し出す。


「美しいあなたをまだまだ独占できるなんて光栄です」


「うふふ。お子様なくせに、そんな台詞をどこで覚えてきたの」


「兄達からです。一番上手に口説けた者が母をエスコートできますから」


「まあ!!あなたのお母様は羨ましいわね。それで、誰が一番お口が上手いの?」


「母ですね。俺達一人一人を褒め称えたくせに、夫は裏切れませんと、いつだって父の手を取ってました」


「素敵なご家族ね」


「ええ。自慢の家族です」


とんとんと、デボラが俺の腕を優しく叩く。


「大丈夫よ。あなたがいるならば砦は落ちない」


「それを望むばかりです」


俺はデボラ夫人に微笑む。


砦が落ちなければ、アンデッド化した母を領地の屋敷の奥に閉じ込めることもなく、領地から離れられなくなった父の代りに、兄達が王都の貴族達に媚を売る必要もない世界となるだろう。


幸せになった世界に、不幸な記憶を抱えた俺の居場所は無くなるかもしれないし――今度こそ消えてしまうかな、だけどね。



        ――――――――



「ブリュー。ヴァルターが結婚を考えないのは、女性に対しての期待が無くなったせいなのね」

  ※ケヴィンの兄。イケメンの25歳。浮いた噂もなくまだまだ独身だそうよ!


俺は吹き出しそうな自分を必死で抑えた。

だって、笑ったら大変だ。

俺とデボラの脇に控えている女子寮の管理者、女中頭のマーガレット様が殺気を込めて奥歯を噛みしめた音が聞こえたからだ。


「男性騎士は六人で一部屋と聞いてますが、確かに、女性騎士が一人でこんなに汚すなら、男性騎士と同じようにはできませんね」


「楽しそうですわね。ブリュー様」


やべ。はすっぱな声になっていたようだ。

軽薄な声は真面目な人の神経を逆なでするってのに。

だけどさ、ここまでとは俺も思っていなかったから驚きだ。


俺達は「俺が友人に会いに来た」を名目に、現在三十五人の女性騎士達の部屋を全て開けて中を確認して回っているのである。

俺が本当に見たいのは、名目通りにリーザの部屋だ。

だが、ついでに他三十四人の女性騎士の部屋も見てやろうとドアを開け、十七室がゴミ屋敷になっているとは俺も考えてもいなかった。


汚れ物の衣服は山と積まれて異臭を放つ部屋が十二室。

室内で食べて飲んで、そしてゴミをそのままにしたゴキブリ飼育部屋が十室。

盗んだのか買い物依存症なだけなのか、とにかく無意味にものが溢れている部屋が三室。


数が合わないって?

掃除しているけど洗濯ものが溜まっている部屋もあれば、一度も掃除もした様子が無く、放置された生ごみから害虫が生息し、ついでに汚れた衣服だらけという、全てを兼ね備えた部屋が複数あるんだよ。


だったら、汚部屋十七室と言ってお終いで良いって?

物事は分別してこそなんだな。


「どうして、どうして、こんな部屋で生活ができるの」


「男性女性問わず、兵士は同じ宿舎にぶち込んでしまえばいいのです」


俺の腕、どころか、俺にしがみ付く感じに汚部屋に脅えてしまっているデボラさんに、怒りにプルプル震えているマーガレットさん。マーガレットさんからは物凄い殺気ばかりを感じるから、俺こそデボラさんにしがみ付きたい。

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