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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第二章 デュッセンドルフ砦の正規軍のゴタゴタ

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領主夫人から茶会に誘われたけど

素っ頓狂な客に悩まされた三日目、俺は領主夫人(デボラさん)へお手紙書いた。

リーザからの女性騎士寮が欲しいという願いについて、俺こそ頭痛い案件だったのでデボラさんに放り投げようと思ったのである。


リーザの言い分は、聞かされた俺こそサイドテーブル蹴っ飛ばしたくなったもの。

てか、絶対に女性騎士専用宿舎など建てるべきじゃないって思ったね。

女中頭のマーガレットさんが女性騎士に課したルールが嫌がらせだってリーザは言うが、内容を聞いたら「マーガレットさん、お疲れ様です」としか俺は思わなかったのだ。


マーガレットさんが女性騎士に課したルール。

その一、共同トイレ、およびシャワールームを使用したら毎回掃除すること。

その二、食事に関しては砦内の騎士団専用食堂を利用すること。

その三、自分の衣服の洗濯は自分で行うこと。

その四、夜間騒ぎたければ町の酒場に行け。

以上だ。


こんなルール課せられた奴らに自分達だけの宿舎なんか与えたら、三日経たずに宿舎がドロドロな腐海化するわ。

だから聞くだけ聞いた俺は、「ムリ」つってリーザを家から叩き出(さようなら)した。そのはずなのに、毎日あの子は我が家の呼び鈴を鳴らすのである。

もう呼び鈴には俺もデニーも応えないのに、呼び鈴が煩くて迷惑だ。

これは俺からの苦情案件でもあるのだ。


それに一度はデボラさんに挨拶をしなければと、個人的に思っていた所だ。

ケヴィンのお古を俺に回してくれたお礼を、俺はまだちゃんとしていないしね。


驚いた事に、俺が手紙を出したその日の夕方にはデボラさんから返信が届いた。

もちろん、私に陳情したけりゃ明日お茶を飲みにおいで、というお誘い付きだ。

ありがたいと早速俺は茶会用のスーツを選んだが、そこで自分の立場が不確定だってことに改めて気がついた。気がついて、ガクッと跪いちゃったぐらいだ。


五歳の時の俺は幼児という事で、俺が一週間後の未来から来た事実が信じられなくとも、貴族の子息として扱われて守って貰えた。

では、今の俺は?

労働可能年齢の十四歳の平民の孤児で、身分的にオズワルドの家の家政夫(業務全くしてない居候状態)をしている使用人でしかない。


「でも茶会に誘って貰ったなら、労働者階級の人間じゃないと見られているってことだよな。いや、普通にお茶をどうぞってだけの平民への呼び出しもありえる。だったらこのブルースーツじゃなく、焦げ茶色のスーツにするべきか?」


「四つん這いになって、どうしました? ああ。せっかく団長が買ってくれたスーツじゃなくて、どうしてお古のスーツの方を選んだんです?」


「やっぱ、あいつが買い足してたのか。ぞわッと来るな」


「平民が選んだ服は趣味に会いませんか?」


「違うって。茶会はデボラ夫人に俺から感謝を捧げる機会なんだ。この場合は彼女からのお古を着た姿を見せる事が御礼だ」


「そうですか。では何に悩んでいるんです?」


「貴族の茶会は、相手が格下の者と同じ階級の者とで茶会の内容が変わるんだ。だから招かれた者は、自分の立場に見合った身繕いをしなけりゃならない」


「別に考えなくとも、ブリュー様は団長のブリュー様ですよ」


「やめて。この世界がビーとかエルなジャンルだったみたいな言い方」


「ビーとか、エル? 何の呪文です」


「忘れて。とにかく、俺の振る舞いが不敬だと取られたらどうする?」


「くだらない」


デニーが俺の不安を鼻で嗤いやがった。

この人は俺への畏怖とか、日々削がれてるなあ。

そうなるように振舞ってもいたけれど、なんかむかつく。

ケヴィンはあのギードをどうやって自分の強火担に育て上げたのだろうか。


「何も考えずにおしゃれして、デボラ様に会いに行けば良いと思いますよ。それであの小煩い小娘の陳情は、団長に投げてください。ほんとうに、どうして団長に頼らないのか理解できません。団長からくだらない話を持ってくるなと女性騎士達に一括して貰えばそれで終わりじゃないですか」


「それじゃオズワルドが女性騎士から反感を買うだろ。数が少なかろうが、女性は特有の情報網で火種をそこかしこに仕掛けるぞ。砦内が浮足立つ。そのせいでオズワルドの影響力が下がったら大変だ」


あと二か月後にスタンピードが起きるのに、砦内にくだらない諍いごとなど起こしたくないんだよ。


「団長の言動で団長の評価は落ちませんよ。火種? 捲いて回るのは常に団長です。もうみんな団長についてはよく分かってます。砦内が浮足立つ? 団長がいて浮き足立つようなシャバ僧を逆に見せてもらいたいですね」


「オズワルドがとにかく畏怖されてんのはわかった。だけどね」


「それよりも!!」


「おおう?」


「とにかく、団長に会ってください」


「砦に行って会えたら会うけどね、あいつは仕事でしょ」


「団長はいつにもまして魔の森に潜っているそうです。無意味に奥へ奥へと進軍し、手当たり次第に魔獣を狩っているそうです」


デニーが俺に向ける目はいつにもまして真剣だった。

くくっと笑いがこみ上げ喉がふるえる。


「あなたは――」


「悪い。嬉しくてね」


「嬉しいとは?」


「さすが英雄だなって。彼は本物の俺の英雄だよ」


「では、団長に今回のことを相談してください。そうすれば、団長はひとまず砦に戻ってきます。あなたが英雄だって思っていることを伝えれば、あんな無茶はしないと思います」


魔の森に潜るオズワルドの行動は、二か月後のスタンピードについての調査を兼ねた魔獣の間引きであろう。だがスタンピードについては今のところ俺とオズワルドだけの内緒だ。そして、デュッセンドルフの騎士は自分が討伐した魔獣について半分の権利を持つ。


デニーが俺にオズワルドに会って欲しいと望むのは、この後半の部分だろう。

彼はオズワルドの行動が、魔獣の素材から得る金銭目的と考えているに違いない。

俺という養い子の為に財産を必死に増やそうとしている、と。


だから彼は、俺に金でない部分でオズワルドに頼って欲しいと望むのだ。

いや、頼みごとがあるから森から戻れと、オズワルドを呼び戻して欲しいのかな。


「デニー。この案件は、デボラさんじゃ無きゃねってこと。そうでしょう? 男だ女だと言いたくないけど、これはオズワルドどころか領主様の仕事じゃない。そもそも、どうして一般騎士が魔獣騎士団の団長に寮について頼み事してくるの? そもそもお門違いでしょ」


「メイド頭のマーガレットさんとやり合えるのがうちの団長だからでは?」


「――確かに誑し込めそうだな」


「ですから」


「わかったけど。今回のこれでオズワルドの手を煩わせたくない。頼み事関係なしに、オズワルドに会いに行くし呼び出してみる。それでいいな?」


「何よりです!!」


デニーは嬉しそうに瞳をキラッキラさせた。

俺は魔の森の現状についてオズワルドから聞きたいだけなんだけど。

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