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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第二章 デュッセンドルフ砦の正規軍のゴタゴタ

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この国の女性騎士について

2026/1/12 誤字脱字報告ありがとうございます。

この世界は「魔法」というものが存在する以上、男性女性問わず魔力が十分にあり魔法が使える者ならば騎士になることができる。

攻撃魔法が使えなくとも身体強化魔法があれば、腕力に女も男も無くなるのだ。


それで狩りが男の仕事にならなかった進化により、男女で力の差も無い世界となったようだ。魔法が使えなくとも、体を鍛えれば女性も男性も無く同じぐらい肉体は強くなる。遺伝による骨格や筋肉量などの個人差は勿論存在するけど、とにかく、強さに関しては男女差が無い世界だ。


肉体が弱く生活魔法も使えない俺にはハードな世界だけども。

母様だっていざという時は八歳のデューイを抱き上げ、俺をも持ち上げようと手を伸ばしたのだから、実は意外にも戦えたのかな。――俺ばっかりだな無力は。

情けねえ、ううう。


よってわが国のどこでも騎士募集に関しては、入団試験にさえ通れば男女問わずで採用している。しかし男女問わずという意味は、どちらの性も優遇しないという意味でもあるのだ。

同じ宿舎で寝泊まりし、トイレもシャワールームも共有のものを使う。

これは、男も女も無く平等という、究極の性差別などない環境とも言えるのでは無いだろうか。


だが俺は、恋愛も欲望も、子を成したいと願う本能的な部分や自分に無いものを相手に求めるというところから抱くものだと思うのだ。

であれば、互いに違うと認識できる異性に対して好意的な気持ちを抱けば、恋とか欲望な気持ちが湧いて出たりするんじゃない?

ならば、男女で同じ宿舎では問題も出るというものだ。


以上のようなことから、女性騎士宿舎をオズワルドに建てて欲しいと、俺に嘆願してきたリーザの言い分は正しいだろう。


だがしかし、リーザの言い分について俺は小首を傾げるしかない。


なぜならば、女性蔑視がなさそうなデュッセンドルフ砦に女性騎士宿舎が無い理由は、今までもこれからも必要無いからである。


辺境地なデュッセンドルフ領は、魔獣に山賊の襲来に隣国からの侵略など、とても世紀末な環境だ。王都近郊の奴らが平和ボケできるぐらいに気がついていないだけで、デュッセンドルフ砦が全ての脅威の盾になっているだけなんだけどね。


だからデュッセンドルフ砦の騎士達は屈強だが、短命だ。

力差がある魔獣に出会えば一瞬で死だ。

そして魔獣が一匹あるいは一頭だけでこんにちはするわけではない。


デニーはヘルヴィルトシュバイン(大きさが通常のキングボアーの三倍ある奴。冒険者ギルド討伐推奨A)の牙を戦斧で受け止め踏ん張っていたところに、小型でも狂暴で牙の鋭いパララミス(ネズミとアナグマを足して二で割って凶悪そうな顔付きにした魔獣。冒険者ギルド討伐推奨ランクC)に左足に噛みつかれて持っていかれたとか。


デニーはネズミにやられたって笑うけど、実際はそんな感じだったとオズワルドが教えてくれた。

ちな、シルバーランクの冒険者が討伐可能ランク魔獣はC、上手く行けばB、程度だそうだ。

そんな格下にいいようにされたなんて、本気でデニーは一線を退かざるを得ないことで自分自身を失っていたようだ。


オズワルド達現役組が、お馬鹿で明日を考えていない振る舞いをするのは、いつ何時って思っているからなんだろうな。

オズワルドは自宅に戻ってダラダラしてても、毎日の鍛錬は欠かしていない。

騎士服脱いだら筋肉バキバキで凄いのだ。きっと淑女教育受けている深窓の令嬢だって、ガタイがいい、と思わず古き良きヤンキー用語を呟いてしまうだろう。


つまり、デュッセンドルフ領が過酷な故に、デュッセンドルフ砦で騎士職を目指す女性はほとんどいないのだ。家族の、まず娘の子供を抱きたい夢を持つ母親が、私の屍を踏んでいけ、と大反対する。なのでデュッセンドルフで騎士志望の女性の殆どが、王都の女性近衛騎士団か神殿騎士団に入団しに行くのである。


なのにデュッセンドルフ砦にも女性騎士が見習い含めているのは、母を倒しても魔の森にて魔獣と戦いたいガチ勢がいるからだろう。


さて、ようやくここで最初の「なぜデュッセンドルフ砦に女性騎士宿舎が無いのか」の答えになるが、わかるだろう? 女性騎士の数が少なすぎるのだ。領主館の女性使用人用の宿舎で間に合うから、女性騎士専用宿舎などいらない、なのだ。


けれど、今年度はケヴィンの嫁を目指したか女性志願者が多かったそうだから、宿舎がぎゅうぎゅうになっちゃったのかな。それで肩身が狭くなった?


「今まで問題は無いって聞いていたけど、改めて女性宿舎を建てて欲しいのは、どうして? 部屋が足りなくなって困ってる?」


「今年度は女性騎士見習いは十人です。正騎士合わせても三十五名。部屋が足りなくなる人数では無いです。男性騎士は見習いどころか新人でも一部屋に六人押し込められているってのに、女性騎士見習いは基本一人一部屋ですよ」


「あ、そう。じゃあ、女性騎士が女子寮の警護も担当しているのが時間外労働って感覚で荷が重い?」


「女子寮の周囲警護は男性騎士の当番制の日常業務です。女性騎士が担当する部分は、非常時に女性騎士が全面的に女子寮を守る、です。その名目もありますので、いざという場合の数を減らす可能性のある砦内見回り当番を女性騎士は免除されてます」


俺の斜め後ろの情報通が、俺がリーザに質問するたびに彼こそ俺にコソコソっと回答を囁いてくる。なかなか、彼こそ女性騎士への優遇っぷりが鼻についていたらしい。確執怖す。

でも男性騎士達が女子寮の警護も担当しているという事で、俺は前世でよくあることを想像してしまった。


「変な性癖を持った男性による、覗きや下着泥、あるいは夜這いをかけようとする奴がいて対処に困っている?」


「そんな恥知らずがいるのか?」


俺のぼんやりとした呟きにより、俺の斜め後ろを殺気立たせてしまった。

考え無しに呟いた俺こそ背筋がぞわっときたよ。

デニーが魔獣騎士団を退いたのは二年前だ。今も彼は騎士であったことを誇りに思っているので、性的嫌がらせをする奴が騎士団にいるなんて考えることも許せないはずだ。しくった。


「ちがう、違うと思うよ。寮で気が休まらない事案を適当に考えただけ。ほら、そんな不埒な奴がいたら、それこそ女子寮を離れて女性騎士だけの寮が欲しいなんて言うはずないだろ。デニー。俺の隣に座って君がお話聞いて」


「かしこまり」

「いないって。いません。性的な嫌がらせなんかされてません!!」


「それじゃ、宿舎では何の問題ないよね」


「ありますよ。私達が女子寮から出たい理由は女子寮にこそあるんです」


問題は女子寮にある、てことで俺はピーンと来た。

これは男の俺達が聞いてはいけない案件だ。


「女子寮の問題ならば、領主夫人に相談するべきではないかな? 上過ぎるなら、クリスタ様とか、とか? あるいはメイド長のマーガレット様?」


「相談できません!!私達を追いやっているのは、領主館のメイド頭のマーガレット様ですもの!!」


俺は俺は大きく斜め後ろに振り返り、リーザの大声で俺の横に座り損ねたデニーに手を閃かせた。とにかく俺の横に座って、俺と一緒に話を聞いてくれってわかるように。

だって時間がかかりそうだし面倒そうだし。


「人払いですね。かしこまりました」


「え、ちがっ」


俺は首の骨が折れる勢いでデニーへと顔を向けた。

デニーは「全部わかってますよ」という顔で俺に微笑んだ後、左足が義足だなんて一切感じさせない素早さで部屋を出て行きやがった。


この場合のデニーの「わかってます」は、「俺がデニーにいて欲しい気持ちはわかっています」ということだ。奴はリーザによる女性騎士達の懇願が、長く面倒になりそうだからと逃げたのである。

俺のことを救世主の如き崇めて来るのが嫌で、自堕落我儘三昧をデニーにしていたが、こうして実を結んだというわけか。


アグレッシブな行動は、いっつも俺を追い詰めるなあ。

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