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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第二章 デュッセンドルフ砦の正規軍のゴタゴタ

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突撃してきた女の子

デニーは「早く帰れ」思念を全身から発しながらも、我が家に突撃してきた人物を応接間に案内したようだ。砦から派遣された騎士と名乗るならば、事情を聞かずに俺達は彼女を追い払えない。とりあえずデニーはもう正騎士でないし、俺は孤児で平民という身の上だ。


デニーの憤りの気持がわかると俺も苛立ちを抱えながら食事を平らげ、食事が終えたならばと、手早く茶の用意を始める。

あんまりダニーばかりに負担をかけてはいけないというわけではなく、茶の準備は今回ばかりはダニーに任せたままにはできないというだけだ。

自分が食べた皿を洗い終れば、ヤカンの湯も沸いた。


「ブリュー様、用意まで。菓子は、これって上等な」


「ポットに湯を注いだら五分だ。カート使って、応接間に運んだタイミングで茶葉が開くように時間を守れ。カップへの注ぎ方は細く、冷ますように」


「あんな客にそこまでしなくとも」


「あんな客に粗を指摘されてたまるか。最上の持て成しを与えた上で、相手のプライドを潰して追い出すのが貴族だ」


「かしこまりました」


さてと、と自分の部屋に戻る。

俺は伯爵家令息だったので、目下の迷惑な客への対応方法はわかっている。


クローゼットを開ければ、何故か俺の服が沢山揺れている。家具と一緒に領主夫人が贈ってくれたケヴィンのお古らしいが、どうみても新品そうなものが、二、三着あるのはなぜだろう。

何気なしに新品風の上着を引っ張り出せば、俺の色合いに確実に似合う色だ。


ケヴィンに似合わなくて着ることが無かったから新品風?


考えたくも無いが、誰かさんが新たに買って紛れ込ませたのか?


後者の可能性が背筋をブルンブルン寒くさせるので、何も考えるなと自分に言い聞かせ、その上着を取り上げて鏡の前で自分に合わせた。

鏡に映るのは、母親譲りの飴細工みたいな薄茶色の髪に緑がかった琥珀みたいな瞳をした、平均よりも小柄で十四歳よりも幼く見える少年だ。


色合いはキレイなんだけど顔が地味なんだよな。


でも、父様と母様の遺伝だって一目でわかる顔でもある。兄達と比べて地味で好きでなかった俺の顔だが、この顔こそが俺がバルバドゥス家のゲオルグ・バルバドゥスとアリシアの子供であるという大事なよすがとなったとは。

俺はもう会えない両親への思慕を振り払い、気持を新たに鏡を覗き込む。


うん、肩に当ててる襟に金糸の刺繍があるこの抑えたモスグリーン色の上着は、俺の印象を少々大人びさせてくれてる気がする。よし、これでいいか。


俺は上着を羽織り、襟元にクラヴァットを巻くか考え、面倒なので適当なハンカチを花みたいに折って胸元にピンで留めた。そして髪の毛を適当に後ろに流し、自分を貴族の子弟にしか見えない外見に整える。

俺を愛人なんて俺とオズワルドを侮辱した奴には、二度と顔を上げられないほどの屈辱を返してやらねば気が済まない。


俺に流れる血は誇り高きバルバドゥス家のものなのだ。


女の要求は、この家から出て行け、かな?

男の俺ではオズワルドの子供を産めないんだから身を引け?


…………あれ? 別に真実だけ伝えれば良くない?


あと二か月後くらいに起きるはずのスタンピードが終息したら消えますんで。

…………理解不能だよな。あと俺が消えるってとこでデニーが不穏になる。

デニーは俺に対して救世主ぐらいの崇め方なんだよ。


そうすると、俺が愛人じゃないって誰にも理解してもらえるだろう親戚ってことで……リノさん達に拾われた孤児って俺がこっちに戻った日に自己紹介してた。

あと、オズワルドが俺のことを数か月前の五歳のブリューだって言い張ってるし。

どうするかなあ?


戦闘準備を整えた俺だが、階段を下りるごとに気持ちが萎えて行き、階下に降りきった時にはなんかどうでも良くなっていた。基本俺はそんな気力が続かない。

楽しい事ならその限りではないんだけどね。

だから女騎士を待たせている応接間に入る時は、気持はもう「面倒」だけだった。


けれど、俺が部屋に入っても立ち上がりもしない女を見た時、俺の意識はハッと目覚めた。意識が勢いづき過ぎて、ずっこけそうになったほどだ。


だって彼女が、あからさまにライトノベルの登場人物風なのだもの。

黄色の長い髪をツインテールしていているとこもそうだが、見習いの制服どころか胸が強調された冒険者風私服。ついでに、十代にしか見えない彼女は、猫みたいな緑の大きな瞳をしているという美少女なのである。


ツインテールに猫みたいな目だと、ツンデレ属性かなあ、と韜晦する。

結論で言えば、俺は彼女の属性などどうでも良いのだけど。


俺は彼女の向かいとなるソファに座る。

俺はそこで、デニーの意地悪を知ってふふっと微笑む。

彼は女騎士を扉近くの一人用のソファという下座に案内し、俺を座らせるために扉が見渡せる上座のソファを開けさせておいたのだ。


俺が座るタイミングで、デニーが俺だけの為に入れた茶を持って来た。

そして貴族には必ずいる側使えとして、俺の斜め後ろに控えた。

わかっているなあ。

デニーが頑張っているなら、俺こそしゃんとしなければ。


「あの」


俺は無視だ。

前触れもなく押しかけて居座って、家主の登場にも立って挨拶をしない。

ちゃんと礼儀ができてない人は、俺は相手にしませんよ。

まずは挽回しましょうか?


「お願いします!!」


少女はがばっと俺に向けて大きく頭を下げた。

ツインテール二本が触手のように俺の方へと飛んでくる。

新たな攻撃か、と見つめれば、彼女は勢いよく顔を上げる。

触手攻撃再び!!


「正騎士団見習いのリーザと申します!!グラナータ団長の最愛の貴方であれば、何だって願いが叶うって聞きました。お願いします。私達の為にグラナータ様にお願いしてくださりませんか? 女性騎士専用の宿舎を建ててくださいって」


茶をぶっ吐きそうになった。

俺達のここまでの気合いや余計な仕込み、返せ。

俺はゆらりと立ち上がると、デニーに向けて低い声を出した。


「叩き出せ。今度からお前が要件聞いて、家に招く是非を決めろ」


「申し訳ありませんでした!!」

「話を聞いてください!!こっちは死活問題なんです!!」


「うっせえな!!宿舎欲しけりゃ自分らで建てろよ!!」

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